解説記事・声明等

2023年(令和5年)の難民認定者数を受けてのコメント

(Updated: 2024.4.1)

本日、入管庁より「令和5年における難民認定者数等について」が発表されました。難民認定者数は303人と過去最多です。アフガニスタン出身者の認定が237人と多くを占め、トルコ、ガンビア、ナイジェリア、バングラデシュなど、近年ほとんど認定されてこなかった国籍が認定されたことは、注目すべき点です。一方で、その他の国籍については、認定数の大幅な改善はみられません。引き続き、難民として認定するべき人を認定するための制度の改善が必要です。

グラフ:日本での難民認定数の推移(国籍別) 2023年:アフガニスタン78%、ミャンマー9%、エチオピア2%、他

出典:入管庁データより。いずれかの年の難民認定数において上位3か国に入っている国を凡例として提示。その他の国籍の合算を「その他」として提示。

難民申請者数は13,823人と、一昨年から大幅に増加しました。難民申請者数の増加は世界的な潮流です。新型コロナウイルスによる入国制限が解除されて以降、当会にも新規入国者からの相談が多く寄せられてきました。難民申請者の国籍が87か国と多様化している点も重要です。難民申請者がこれまで少なかった国籍や、従来は見られなかった迫害事由による申請に適切に対応できるよう、出身国情報の収集体制が強化される必要があります。

審査期間は、平均約3年(一次審査と審査請求の合計)と長期傾向が続いています。アフガニスタン出身者への難民認定(2022~2023年)や、ウクライナ出身者への補完的保護の認定(2023年12月以降)は迅速に行われているといえますが、一方、当会が把握している限りでも、一次審査のみで5年以上待たされるケースは珍しくありません。その間、難民申請者の多くが、見通し立たない不安定な生活を強いられています。審査請求の平均期間の短縮については、口頭意見陳述の不実施によるとも考えられ、適正手続きの観点から懸念が残ります。適正手続きを保障した上で、あらゆる国籍や地域の出身者について、迅速な保護を行う体制が整えられるべきです。

各国における難民認定機関

一次審査不服申し立て難民認定数
(一次審査/2023年)
組織名所管省庁からの
独立性に関する記述
組織名一次審査と異なる組織
日本法務省・
出入国在留管理庁
×法務省・
出入国在留管理庁
×289人
英国英国ビザ・移民局×第一層審判所
移民・庇護部
57,324人
米国アメリカ合衆国
市民権・移民局
×移民不服申立局
または移民審査局
×36,615人*
カナダ移民難民委員会
難民保護部

(独立行政裁判所、独立した判断)
移民難民委員会
難民異議申立部
×37,222人
スウェーデン移民庁
(政府及び議会からの独立性)
移民裁判所2,552人
ドイツ連邦移民・難民局×行政裁判所113,675人
フランスフランス難民及び
無国籍者保護局

(組織の独立性を法律に明記)
国家庇護権裁判所41,652人
ベルギー難民・無国籍者弁務官
(組織の独立性を法律に明記)
外国人法訴訟協議会11,436人

*2022年度(2021/10/1~2022/9/30)の統計
出典: ・ベルギー、フランス、ドイツ、スウェーデン:EUAA “Latest Asylum Trends 2023” https://euaa.europa.eu/sites/default/files/publications/2024-02/EUAA_Latest_Asylum_Trends.pdf
・カナダ: IRB “Claims by Country of Alleged Persecution – 2023” https://www.irb-cisr.gc.ca/en/statistics/protection/Pages/RPDStat2023.aspx
・イギリス:Home Office “How many people do we grant protection to?” https://www.gov.uk/government/statistics/immigration-system-statistics-year-ending-december-2023/how-many-people-do-we-grant-protection-to
・アメリカ:Office of Homeland Security Statistics “2022 Yearbook of Immigration Statistics” https://www.dhs.gov/sites/default/files/2024-02/2023_0818_plcy_yearbook_immigration_statistics_fy2022.pdf

2023年の入管法改正案の審議は、これまでの難民認定制度の様々な課題を明らかにする機会となりました。成立した改正法には、難民調査官の専門性や、難民申請者に対する面接における適切な配慮、出身国情報の収集に関する規定が設けられています。さらに、参議院で採択された附帯決議において、より具体的な改善点が提示されており、今後の実施が期待されます。

そのような中で、送還停止効の例外規定(3回目以降の難民申請者の送還を可能とするなど)を含む改正入管法の施行が6月上旬に予定されている点を、強く懸念します。今年の1月には、ロヒンギャの男性の3回目の難民不認定処分を取り消し、難民認定を命じる判決が出ています。申請回数に基づいて難民申請者の送還を可能とすることの危険性は明らかです。

改正法や附帯決議を踏まえた改善のための施策がまさにこれから講じられようとする中で、過去の不認定処分に基づいて送還を可能とすることは問題がある対応です。最優先で行うべきは、難民の送還ではなく保護です。改正法や附帯決議を踏まえた対応に加えて、難民保護を目的とした法律や、難民保護に関する専門性や入管庁からの独立性を担保した組織の創設など、より抜本的な改善を求めます。

※当会の意見の詳細は、近日公開予定の意見書をご覧ください。

※2024/4/1追記 意見書を公開しました。