
1億2,320万人。6月20日の「世界難民の日」に先立ち、先週、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)から、紛争や迫害などで移動を強いられた人たちの数(2024年)が発表されました。日本の人口とほぼ同じ数の人々が故郷を追われ、安心して住める場所を求めています。大半は国外に逃れられず少しでも安全な地を探したり、隣国の難民キャンプなどで過酷な生活を余儀なくされたりしています。日本を含む先進国にたどり着ける人は実は一握りにすぎません。
世界の難民受け入れの不均衡

世界の難民受け入れに関する報道では、欧米諸国など先進国の「負担」が強調されがちです。しかし、実際には世界の難民受け入れの約73%は、低中所得国が担っています。これらの国々は、経済的な余裕の有無にもかかわらず、多くの難民を受け入れ、その保護を行っているのです。
一方で、高所得国である日本を含むG7諸国の受け入れ数は相対的に少なく、世界全体の難民受け入れにおける不均衡が顕著です。難民保護は一国では解決が難しく、国際的な責任の分担が不可欠です。

他のG7各国との比較でも、日本の難民受け入れは極めて限定的であると言わざるを得ません。難民の受け入れをめぐっては、アメリカやヨーロッパでも排他的な傾向が強まり、各国はさまざまな課題を抱えています。しかしそれでも、日本の難民受け入れは他の先進国と比べて著しく低い水準にとどまっています。
日本の国際的責任と現状
日本は難民条約の締約国として、難民を保護する国際的な義務を負っています。難民を受け入れることは、かれらの命や権利を守り、新たな人生を築く機会を提供することに他なりません。しかし、現状ではその責任を十分に果たしているとは言えません。データから明らかな通り、各国で認められている国籍でも、日本ではほとんど認められない状況です。


難民支援協会が目指すこと
日本は先進国として、また難民条約の締約国として、難民保護における国際的な責任を果たすことができる可能性が十分にあります。難民支援協会は、そのために、難民保護ではなく管理の視点が強い現行の法制度の改善を目指しています。
難民保護を目的とした法律や、難民保護に関する専門性、独立性が担保された組織の創設が必要です。そうした法整備等を通じて、適正な難民認定が行われる仕組みをつくること、難民認定申請者の最低限の生活を保障すること、難民認定を受けた後の日本社会への定住を支援することを目指して取り組みを続けます。
「人間らしく生きることを日本で知った」

ミャンマーから逃れ、日本で難民認定を受けたある女性はこう語ります。
「日本は自由で安心して暮らせる。(日本にいる今)それがないところに戻るのは辛いですよね。苦しい。苦しい。閉じ込められた世界にいる感じ。日本でいろんな人たちと出会って、人間らしく生きるってことを知りました」
彼女は母国ミャンマーでボランティア活動に励む普通の高校生でした。しかし、1988年に民主化運動を目の当たりにし、「自由」を求めて声を上げた結果、投獄され、母国で暮らすことができなくなりました。縁あってたどり着いた日本で難民として認められ、政治的に不安定な状況が続くミャンマーの民主化を願い、活動をしながら、今は日本で暮らしています。
日本社会が難民を受け入れることには大きな価値があります。難民保護とは、大切な家族や友人、故郷を失った難民の権利と尊厳を回復し、第二の人生をはじめる場を提供することにほかなりません。
難民の尊厳と希望の回復のために
難民が生まれないよう、紛争や人権侵害のない世界の実現に向けた取り組みはもちろん重要です。しかし、それは一朝一夕に実現するものではありません。今も世界では多くの紛争が続き、圧政に苦しむ人々がいます。その中で、難民となった人たちは日々生きていかなくてはなりません。そのような人たちに尊厳や希望を回復する機会を提供することも、平和の実現と同様に大切なことです。
一人ひとりの関心の広がりが社会を変える力になると、私たちは考えています。 国際社会で起きている現実を他人事にせず、日本が難民保護という価値ある役目をよりよく担えるよう、難民支援協会は今後も取り組んでいきます。
○上記で紹介したミャンマー女性の話はこちらからご覧いただけます。
自由な国ってどんなだろう。ミャンマーから日本へ、テンテンさんが選んだ道|ニッポン複雑紀行