解説記事・声明等

2022年の難民認定者数等に対する意見

(Updated: 2024.1.26)

2023年3月31日
認定NPO法人 難民支援協会
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2023年3月24日、出入国在留管理庁より、2022年の難民認定者数等が発表されました。難民認定数は過去最多の202人となる一方で、難民不認定とされた人の数は1万人を超えます(一次審査・審査請求の合計)。難民として保護されるべき人が保護されていない現状を踏まえ、⽇本に逃れた難⺠を国際基準に則って保護するための、包括的で公平な庇護制度の確⽴が必要です。以下、難民保護の視点から注目すべき点や、改善点を述べます。

※出入国在留管理庁発表資料「令和4年における難民認定者数等について」

1.2022年の難民認定状況のうち注目すべき点

(1)難民認定数の増加:認定制度の改善はみられず

難民認定数の増加は、アフガニスタン出身者への例外的な対応によるものといえます。2022年においても、認定制度の大きな改善は見られず、ミャンマーやアフリカ諸国など、様々な国や地域から逃れ、難民としての保護を求める人への保護が実現しているとはいえません。アフガニスタン出身者への対応についても、日本での安定的な暮らしが保障されていなかったことや、保護されるべき人が保護されていないといった課題がみられます。

2022年認定された人の国籍別内訳グラフ

① アフガニスタン出身者への対応

難民として認定された人の7割以上(147人)が、アフガニスタン出身者でした。2021年8月のカブール陥落後の日本への退避者は、主に大使館の現地職員とその家族、JICA関係者とその家族、そして民間呼び寄せの3つに分けられます。2022年に認定された人のうち、100人以上が大使館関係者やその家族でした。入国当初は日本での安定的な生活が保障されておらず、難民申請の選択肢が提示されるまでに長期間を要したこと、さらに、日本からの出国につながる対応が行われたことを強く懸念します。一方で、今回の集団的認定によって、難民申請から3週間という短期間での認定が可能であることが明らかになりました。今回の経験を踏まえて、様々な国や地域から逃れた難民に対して、迅速な認定判断が行われることを望みます。

在アフガニスタン日本大使館の現地職員やその家族が入国を開始した2021年秋の時点では、中長期的な滞在を前提とした支援や法的地位の保障は行われていませんでした。さらに、比較的安定した在留資格(特定活動(1年))への変更にあたって身元保証人がいることが条件とされるなど、制約がある中での滞在が続きます。そして、2022年半ば以降、退避者の身元保証人であった日本政府との契約が切れるにあたって、最後の手段として難民申請の選択肢が提示されたという経緯がありました。

入国からしばらくの間、子どもたちが教育を受けることができず、日本語を含む定住支援が行われていない期間があったなど、当事者たちは、日本での暮らしに不安を覚える状況におかれました。先の見通しが立たない日本での生活を諦めて、出国を選ばざるを得なかった人がいます。また、入国からしばらく経たないうちから、当事者に対する帰国勧奨も行われていました*1

各国では、カブール陥落後、アフガニスタン出身者に対して永住権の付与を含む中長期的な滞在の保障や、定住に向けた支援が実施されていました*2。また、日本においても、ウクライナ出身者については身元保証人無しの受け入れが行われており、定住に向けた支援も積極的に行われています。

大使館関係者以外のアフガニスタン出身者への対応にも課題があります。カブール陥落以前から日本に滞在していた人も含めて、難民として認定されるべき人がすべて認定されている状況にあるとはいえません。また、大使館関係者に対する迅速な認定が、それ以外のアフガニスタン出身者に適用されることはほとんどありませんでした。さらに、2021年夏以降の退避者約800人のうち半分以上は民間が身元保証人を務めており、国による支援は行われていません。

② その他、国籍別の難民認定状況に見る課題

ミャンマー出身者については、26人が難民認定される一方で、延べ2,000人近くが不認定とされています(一次審査・審査請求の合計)。難民としての迅速な保護が実現されていないことを、強く懸念します。人道配慮による在留許可の数は1,682人とされていますが、この中には、就労時間が制限されるなど、従来の「人道配慮による在留許可」とは異なる対応を受けた人が含まれており、庇護状況を適切に反映した統計とはいえません。

当会の支援対象者の半数以上を占めるアフリカ諸国の出身者について、認定された人は、15人に留まります。不認定者の主な国籍として挙げられているウガンダについては、2023年3月の難民勝訴判決*3が示す通り、性的マイノリティ等への人権侵害が行われている実態にあります。また、コンゴ民主共和国のように世界的に難民申請者数が多い国籍であっても、十分に認定されているとはいえません。

(2)複数回申請者による難民申請:難民として保護すべき人が保護されていないことの現れ

複数回申請者による難民申請の数は、昨年に引き続き1,200人を超えています。複数回申請者に対するあらゆる権利の制約が行われる中で、それでも出身国に帰ることができず、日本での保護を求めている人たちです。複数回申請者を保護対象と捉えた上での、制度の検討や運用の見直しが必要です。

複数回申請者のうち、「正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している」とされたC案件の数は1,131人でした。難民認定制度の課題が故に、1回目の申請で認定を得ることができなかった人が、申請を繰り返さざるを得ない状況に置かれていることが分かります。しかし、2018年の「難民認定制度の更なる運用の見直し」以降、このような複数回申請者は、就労が認められず、在留資格の更新も認められていません。難民申請者に対する公的支援である保護費も原則受給することができず、周囲の支援に頼らざるを得ない、非常に困難な状況に置かれているのです。

例えば、トルコ出身の難民申請者のうち、半数以上の285人が複数回申請者でした。そのうち多くを占めるクルド人については、2022年の札幌高裁での難民勝訴を受けての認定を除いて、これまで1人も難民として認められた人はいません。今回の札幌高裁判決は、PKKとの関連を疑われたクルド人への人権侵害の存在を認めるなど、他のクルド人の審査のあり方にも影響を与えるべき内容でした*4。2000年代には、難民不認定取消訴訟での難民勝訴を経てもなお、難民として認定されなかった事例もありました*5。複数回申請者であっても、過去の申請に対する十分な審査が尽くされていない可能性を常に念頭において、審査を行う必要があります。

実際に、2010年から2021年にかけて難民と認定された377人のうち、25人は複数回申請者でした。複数回申請者であっても、過去の難民申請で主張をすることができなかった事情や、新たに発生した事情、また、事態が急変する状況下での証拠収集の困難さという一般的な事実を踏まえた審査を行う必要があります。そして、当然のことながら、その間の在留が認められ、人として生きる権利の保障とそのための仕組みが整えられなければなりません。

複数回申請者、退去強制令書発付者の庇護状況

難民認定人道配慮難民申請者数
合計(2010〜21年)377人1,906人79,207人
うち、複数回申請25人7%544人29%10,433人13%
うち、退去強制令書発付あり48人13%676人35%8,504人*11%
* 難民申請時の非正規滞在者数

※ 2023年5月16日 人道配慮に関する統計を修正

2.難民認定制度の課題:改善の機会はいかされず

(1)難民申請者数が減少する中での審査期間の長期化

難民申請を行ってから審査請求の結果が出るまでの平均期間は約3年11か月でした。そのうち、一次審査の平均期間は約2年9か月と、統計が明らかにされている2007年以降で最長であり、難民申請者が、法的地位が安定しないままに、長期にわたって困難な生活を強いられる状況が続いています。難民保護を目的とした審査体制の強化や審査のあり方の見直しにより、審査期間の短縮が行われるべきです。

新型コロナウイルス感染症による入国制限の影響を受け、難民申請者数は3,772人と、減少傾向が続いています。しかし、この間、標準処理期間である6か月*6が達成されることはありませんでした。上述の3週間での認定判断の実績も踏まえ、迅速な難民保護のために必要な体制や仕組みが整えられる必要があります*7

現行制度において、難民申請者は最長6か月の在留資格(特定活動)が認められるのみで、就労が認められない期間や場合もあります。また、非正規滞在の難民申請者(2022年は703人)については、仮滞在が認められない限りは、収容や仮放免といった状況におかれ、送還の恐怖と隣り合わせの日々を送っています。難民認定の結果を得ることができたとしても、「何もできない」空白期間がその後の人生に重大な影響を与えます。

さらに、申請者本人に今後の審査の見通しが伝えられることはなく、審査のどの段階にどれくらいの時間がかかっているかも明らかにされません。難民申請を行ってからインタビューすらも行われないままに、3年以上が経つこともあります。UNHCRは、難民認定の手続きにおいて申請者の一般的信憑性について納得したときは「疑わしきは申請者の利益に」の原則を適用するべきとしています*8。難民申請者が置かれた状況に寄り添った審査を行い、迅速な保護を実現することが重要です。

コロナ禍以前に難民申請を行った人が、未だに審査結果を待っている状況です。そのような中で、2022年秋の入国制限の解除以降、新たに日本に逃れた難民の方からの当会への相談が急増しています。これ以上の審査の長期化を招くことがないよう、難民保護を目的とした体制や審査のあり方の見直しが必要です。

※ 2023年8月28日 一次審査の平均期間を修正

(2)国際基準を満たさない「難民該当性判断の手引」

3月24日に入管庁より公表された「難民該当性判断の手引」は、政府の有識者会議による8年前の提言*9を受けて作成されたものであり、難民保護状況の改善に向けた施策に、政府が遅々として取り組まなかったことが見て取れます。内容についても、これまでの難民該当性判断のポイントを整理するとの位置付けに留められており、国際基準に則った基準作成の機会がいかされなかったことを強く懸念します。また、難民該当性の判断を左右する重要な点が含まれておらず、さらなる改善が必要です。

UNHCRは、「難民条約の解釈に向け、より一貫したアプローチを促進する*10」という観点から、難民の定義や手続き要件の解釈に関する国際基準を示してきました。それらは、「難民認定基準ハンドブック」等の文章にまとめられています。しかし、日本ではそのような基準を踏まえない審査が行われており、難民認定数の少なさの一因となっています。例えば、「迫害」の定義について、日本では「主に、通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧をいうと考えられる」(手引 p.2)と、国際基準に含まれている「その他の人権の重大な侵害」(ハンドブック パラグラフ51)と、その他の迫害の意義を劣後させる記述をしています。また、「通常人」の観点で判断を行うことは、「個人の心理構造や各事案の状況の違いに応じ、何が迫害に当たるかという解釈も多様なものに変わらざるを得ない」(ハンドブック パラグラフ52)とのUNHCRの基準と矛盾します。

今回の「手引」において、難民認定の手続きに関する基準が示されていないことも問題です。難民認定手続きでは、申請者の供述を支える証拠の提出が困難であることは稀ではありません。また、出身国での経験によってトラウマを抱えている場合や、文化的背景の違いなどにより、十分な供述ができないことがあります。こういった状況を踏まえて、各国では、難民認定に特有の信憑性判断のあり方や、「疑わしきは申請者の利益に」の原則(灰色の利益)の適用が行われています*11。しかし、「手引」にはこれらの基準は含まれておらず、不十分な内容といえます。上述の専門部会による報告書でも、国際基準に則った基準作成の必要性が記載されています*12。難民定義の解釈の拡大や、申請者の状況に寄り添った審査を行うための「手引」の見直しが必要です。

(3)難民保護の目的に反する入管法改正案の提出

ここまで見てきた通り、2022年の難民認定状況は、難民として保護されるべき人が保護されていない状況が依然として続いていることを示しています。そのような中で、複数回申請者等の送還を可能とする法案(出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案)が今国会に提出されています。難民の命や安心を脅かすことにつながる法案であり、強く懸念します。

2021年の通常国会に提出され、その後廃案となったほぼ同内容の法案に対して、UNHCRは「非常に重大な懸念」を示し、送還停止効の例外規定について「挿入は望ましくない」としています*13。また、昨年秋に行われた国連の自由権規約委員会による審査*14では、日本の難民認定率の低さに対する懸念や、「国際基準に沿った包括的な庇護法」の早急な採択が勧告されました。加えて、送還停止効の例外規定が設けられていない現行制度においても、ノン・ルフールマン原則(難民などの国際保護を必要とする人の送還を禁止する国際的な原則)の実務における尊重に関する課題提起がされています。再提出された法案は、これらの国際社会からの懸念を踏まえたものとはいえません。難民保護に特化した法律の策定や組織の設立など、抜本的な見直しが行われるべきです。

3.結び:難民認定制度の抜本的な改善の必要性

2022年は、日本で難民認定制度が開始されてから40年の節目の年でした。難民認定数は近年増加傾向にあり、40年間の認定数の合計は1,000人を超えています。昨年以降のウクライナ難民の受け入れ数は2,300人を超えます。難民支援を身近に感じる人が増え、難民保護への理解が社会に広がりつつある現状にある中で、難民申請者の送還を可能とする法案が提出されたことを、強く懸念します。難民保護状況の改善に向けた抜本的な制度の見直しが最優先で行われるべきです。

以上

  1. 朝日新聞「「日本での暮らしは地獄」外務省担当者は告げた 難民認定の裏側で」(2023年2月23日)など。[]
  2. 難民研究フォーラム「アフガニスタン難民に関する各国施策」(2023年1月)https://refugeestudies.jp/2023/01/afghan-refugees-2212/ []
  3. 毎日新聞「同性愛で迫害のウガンダ人、大阪地裁が難民と認定 国外退去取り消し」(2023年3月15日)[]
  4. 全国難民弁護団連絡会議「トルコ国籍クルド人の初めての難民認定に際しての声明」(2022年8月10日)http://www.jlnr.jp/jlnr/?p=7561 []
  5. 大橋毅「クルド難民を拒絶する法務省」『Mネット2020年6月号』https://migrants.jp/news/blog/20210212_1.html []
  6. 出入国在留管理庁「難民認定審査の処理期間に係る目標の設定と公表について」(2010年7月)https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri03_00006.html []
  7. 例えば、カナダにおいては、難民該当性が高いと思われる案件などに対して、書面審査や短縮されたインタビューのみで迅速な保護を実施する仕組みが導入されています。詳しくは Immigration and Refugee Board of Canada “Instructions governing the streaming of less complex claims at the Refugee Protection Division”  (2022/11/7) https://irb-cisr.gc.ca/en/legal-policy/policies/Pages/instructions-less-complex-claims.aspx 参照。[]
  8. UNHCR「難民認定基準ハンドブック ― 難民の地位の認定の基準及び手続に関する手引き ―(改訂版)」https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/protect/HB_web.pdf、パラグラフ203~204。[]
  9. 第6次出入国管理政策懇談会・難民認定制度に関する専門部会「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」(2014年12月)https://www.moj.go.jp/isa/content/930003065.pdf []
  10. 前掲注8「日本語版への序」より。[]
  11. 前掲注8 第二部や、難民法裁判官国際協会「難民申請及び補完的保護申請の信憑性評価 -裁判上の判断基準及び適用基準-」(2012年12月)[]
  12. 専門部会による報告書では、「UNHCRの諸文書の内容において国際的基準とされるものを日本における難民認定の基準として採用するべきとの意見」や、「難民認定に関し…ある程度国際的に合意されている基準を,日本の難民認定実務に取り入れていくべきではないかとの意見」があったことが紹介されている(前掲注9)[]
  13. UNHCR「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(第204回国会提出)に関するUNHCRの見解」https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/2021/04/20210409-UNHCR-Comments-on-ICRRA-Bill-Japanese.pdf []
  14. 自由権規約委員会「第7回日本定期報告書審査にかかる総括所見」http://www.jlnr.jp/jlnr/?p=7801 []