解説記事・声明等

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民と認めたマンデート難民の身柄拘束

    アムネスティインターナショナル日本
    特定非営利活動法人難民支援協会
    共同声明文

    2005年2月7日
    関連文書:「UNHCRが難民と認めたマンデート難民の身柄拘束の放免を歓迎し残されているマンデート難民の保護を期待する

    本日2月7日(月)、法務省入国管理局はUNHCRがマンデート難民としているトルコ出身のクルド難民S氏の身柄を拘束し、収容した。
    S氏はマンデート難民と認められてからも法的地位(在留資格)は与えられておらず、仮放免として毎月1度入国管理局へ出頭し、更新を続けていた。これまでS氏は16ヶ月間にわたる長期の日本での収容(拘禁)の経験から、二度と収容はされたくないと主張していた。
    先日のマンデート難民の強制送還※1 以降、UNHCRは法務省との協議において、マンデート難民S氏の収容は回避されるべき旨を申し入れていたと把握している。

    難民の拘禁(身柄拘束)への懸念

    難民の身柄拘束は、難民条約※2 第31条において、難民の移動に対し必要以上の制限を課してはならないと定めている。また、難民条約の解釈に関するUNHCR執行委員会※3 結論第44「難民申請者の拘禁」及び1997年7月付け「庇護希望者の拘禁に関してのUNHCRのガイドライン」においても原則として拘禁をおこなうべきでないとしている。

    トルコ出身のクルド難民申請者への深刻な動揺

    本年1月のマンデート難民のクルド人(トルコ国籍)を本国へ強制送還した事件、また先週末、2月4日(金)、難民の強制送還が直前でとまった事件※4 と、あいつぐトルコ出身のクルド人に対する法務省入国管理局の強行な対応は、日本で最大の難民申請者数であるトルコ国籍の難民申請者に深刻な不安と不信を拡大させている。

    その他の日本にいるマンデート難民および難民申請者への収容の懸念

    近日中に、他のマンデート難民の仮放免の出頭が予定されている。収容は、精神的・肉体的苦痛を難民に与える行為であり、過去に収容経験をもつ難民の出頭に与える動揺も広がっている。
    以上により、日本政府に対し、以下の事項を求める。

    • マンデート難民S氏および現在拘束されているマンデート難民の身柄を直ちに放免すること
    • トルコ出身のクルド人への対応を含めたUNHCRとの協力的な関係を構築すること

    【補足:用語説明】

    ※1 マンデート難民の強制送還について

    2005年1月19日、トルコ出身のクルド人であり、UNHCRが難民として認めていたK氏親子が出身地のトルコへ直行便にて強制送還された。マンデート難民の強制的な送還としては初めてのことであった。(関連声明文)

    ※2 難民条約

    正式名は難民の地位に関する条約。日本は1981年に加入している難民条約の締約国。

    ※3 UNHCR執行委員会

    国連難民高等弁務官の職務遂行に関して助言を行う委員会。難民問題に対する関心を表明した57カ国の政府代表によって構成されている。日本政府も執行委員会のメンバーであり、難民保護の結論の採択に関わっている。

    ※4 難民の強制送還が直前でとまった事件

    トルコ出身のクルド人Y氏は、昨年6〜7月、法務省入国管理局によってトルコ当局(警察、憲兵隊)と一緒に自宅を訪問されたことで、迫害の危険が増していた。Y氏は牛久にある入国管理局収容施設にて収容中であったが、2月4日、トルコへの直行便にて強制的に送還されるところを、弁護士や関係者の介入により、直前で止められた。