収容問題について国際的に取り組む「国際拘禁連盟(International Detention Coalition/IDC)」は、「収容代替措置」を、「庇護希望者、難民および移民が在留資格認定手続の間、または退去強制等までの間、移動の自由を持ってコミュニティ内に居住することを認めるあらゆる法令、政策または実行」(※1) と定義しています。世界各国では様々なタイプの収容代替プログラムが実施されていますが、例えば、オーストラリアや香港などは、不正規滞在の状態にある庇護希望者などを対象に、政府とNGOが連携し、コミュニティ内で手続・生活両面を含む包括的な支援を行うことで、逃亡の可能性などリスクを軽減しつつ、収容をせずに人道的に個別ケースの解決を図る「ケースマネジメント」型のプログラムを導入しています。
日本にも「仮滞在」と「仮放免」という二つの制度が存在しますが、その適用は限定的であり、様々な課題が存在します。とりわけ、空港で保護を求める難民認定申請者など、日本において十分な社会的・経済的基盤を持たない人への適用は非常に限られています 。また、収容代替制度が法的支援、生活支援、帰国支援といった支援の側面と連動していないために、放免後、困窮状態に陥るケースも少なくない他、在留手続における解決が得られずに収容が長期間に及んだり、一度放免されても再度収容されたりという事例が後を絶ちません。
一方で、日本の入管収容については、2010年以降、いくつかの進展も見られました。2010年4月には、難民および庇護希望者の収容について地域レベルで協議する初めての国際会議である「難民申請者および難民の拘禁の代替案に関する国際会議(Sub-Regional Roundtable on Alternatives to Detention of Asylum-seekers and Refugees)」(以下、「第1回ATD会議」)が韓国で開催され、日本からも政府、弁護士、NGO関係者らが参加し、意見交換を行いました。さらに、同年7月には、入管収容施設等の運営の改善向上等を目的とした入国者収容所等視察委員会が設置され、9月には、入管収容に関する定期協議と被収容者に対する法律相談等の実施に関する合意が法務省と日弁連の間でなされています。
今後も発展が期待されますが、日本における入管収容行政の更なる改善と持続可能な制度の構築のためには、様々な事例の検討と収容/収容代替措置に関する広い議論が必要です。今回の会議は、多様な収容代替プログラムについて学び、日本における入管収容の問題と収容代替措置について考える素晴らしい機会となりました。今後は、シンポジウムなどを通じて、収容代替措置に関する国際的な動向や日本での可能性について広く状況を共有すると同時に、政府やNGOなど様々なアクターと連携して制度のあり方について検討し、より良い制度構築に向けた具体的なプランの作りに取り組みたいと考えています。
※1 R. Sampson, G. Michell and L. Bowring, There Are Alternatives: A Handbook for Preventing Unnecessary Immigration Detention; IDC, 2011
※2 Sampson, op.cit (注2), p.40, International Detention Coalition, Case Management as an Alternative to Immigration Detention: The Australian Experience, 2009, p.8. 2006年3月から2009年1月の支援対象者918名の内、在留手続の最終結果が出た560名の履行率。560名中、370名(66%)が何らかの在留資格を取得、114名(20%)が自主帰国、37名(7%)が逃亡、33名(6%)が当局による退去強制、6名(1%)が死亡。在留資格を得られなかった者の60%が自主帰国。