活動レポート

常態化する「ホームレス難民」

    IMG_0712_edit3.jpg「日本に逃れてきた難民をホームレスにしない」
    難民支援協会(JAR)が長らく掲げていたスローガンです。JARでは、日本に逃れてきたものの頼る先がなく、公的な支援も受けられていない難民申請者向けに一時的な宿泊施設(シェルター)を手配し、緊急支援を行ってきました。しかし、2011年の冬頃より、私たちが支援できる人数を大幅に上回る方が相談に見えるようになり、必要とする人全員に宿をあてがうことが叶わなくなりました。「ホームレスにしない」というスローガンは「凍死させない」に変えざるを得ず、さらに最近では、季節を問わず、30人以上がシェルターの順番待つという状況が続いています。日本に逃れてきた難民の困窮が常態化しています。(写真:JARの待合室でぐったりする難民)

    なぜ困窮するのか

    ホームレスになるほど困窮する難民の多くは、来日して間もない人たちです。成田空港から都内に出てくるまでの電車代、数泊のホテル代を払えば、所持金はすぐに尽きてしまいます。制度的には、難民認定審査の結果を待つ間、自力で生活することが困難な難民申請者に対する公的支援があります。就労資格は、難民申請後半年間なく(*)、公的支援なしでは生きる術がありません。しかし、その支援を得るための審査も通常2~3ヶ月におよびます。そのため、来日直後の難民は、公的な支援が決まるまでの間、セーフティネットの大きな「穴」にはまり、ホームレスに陥ってしまうのです。
    *難民申請時に正規の在留資格がない場合は、難民申請から半年が経過しても就労は認められません。
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    それでも日本に逃れてくるのはなぜ?

    これほど制度的に冷たい日本へ、なぜ逃れてくるのでしょうか。多くの方は偶然に日本だったと答えます。迫害から逃れる先を探すなかで、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、さまざまな大使館にビザを申請した結果、たまたま日本大使館からのビザが最初にでた、といった理由からです。ここ数年は、日本政府が海外からの観光客誘致に力を入れているため、観光ビザであれば比較的早く手に入るという状況も影響していると考えられます。そのため、多くの方は日本に知り合いが一人もいない状況で来日し、困窮しても頼る先がありません。また、日本の厳しい現実を知って他の国に行きたいと考えたとしても、ほとんどの場合、その選択肢はありません。たどり着いた日本で何とか生き延びるしかないのです。
    JARでは困窮を極めた難民への緊急支援として、シェルターの手配に加えて、一人ひとりに寄り添ったカウンセリング、緊急支援金、食料、生き延びるために必要な情報を集めた「サバイバル・ハンドブック」を提供しています。同時に、難民申請中の生活保障を確保すべきであると制度改善に向けたアドボカシーにも力をいれています。母国を逃れ救われた命が、やっと逃れてきた日本で失われることがあってはなりません。

    緊急支援の事例

    皆さまのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
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