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活動レポート

難民認定申請者の就労資格制限、強制収容に関する報道を受けての懸念について

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認定NPO法人難民支援協会(JAR)は、2017年6月30日付読売新聞の報道「難民申請後の就労不可 偽装対策 留学・実習生ら」(※1) で指摘されている運用の変更について懸念を感じ、以下のコメントを発表します。記事によると、一律ではなく、個々の実情に応じ柔軟に対応するが、難民認定申請者のうち「技能実習」や「留学」の在留資格を持つものについては、在留期間が切れた段階で難民申請中であっても、在留資格の切り替えは認めず、不法残留者として全国17ケ所の入管施設に速やかに強制収容する、とあります。

法務省難民認定室に確認したところ、「まだ検討中であり公表できる詳細はない」という回答を得たため、この報道が仮に今後採用される政策として事実であるという仮定に基づきコメントいたします。

1. 特定の在留資格の難民認定申請者の権利を制限することについて

難民申請を目的に国外に逃れる際に、そのためのビザが存在しない以上、難民は観光など別目的のビザを取得した上で他国に入国します。よって、入国時の在留資格と本人が難民であるかどうかは無関係であり、在留資格の種類に関わらず、難民かどうかの判断は個別にされなくてはなりません。事実、これまでには、今回取り締まりの対象となった「技能実習」、「留学」の在留資格で滞在し、難民申請をした人で、難民認定を受けた人たちもそれぞれいます。例えば、圧政を受ける少数民族が留学生として日本へ入国した場合などです。また、日本に入国後、難民となる事情が生じ、難民申請をする場合もあります。従って、特定の在留資格を持つ難民認定申請者を対象に取り締まるのは難民の実情に即しておらず、濫用を防ぎ真に保護が必要な難民を救うという趣旨からも外れていると考えます。
加えて、実質的に難民認定申請者の権利を制限するこの制度の導入には本来抑制的であるべきで、慎重な検討が求められます。しかし、関連する政策の効果などを検証した上でという熟考の跡が外からは見受けられません。例えば、入国管理局は2015年9月15日に出された「難民認定制度の運用の見直しの概要」(※2) に基づいて、真の難民の迅速かつ確実な庇護を推進するためという目的のもと、難⺠認定制度の濫⽤・誤⽤的な申請の迅速処理を導入しています (※3)。その運用の実態についてまずは効果を検証した上で、十分でない場合には新しい政策の運用を検討すべきだと考えます。

2. 在留資格喪失後、速やかに入管収容施設に強制収容することについて

難民認定申請者を収容することは、原則避けられるべきであり、国連機関からも勧告を受けています(※4)。収容とはあくまで強制送還を実現する目的のみに使われるべきとされています。よって、難民申請中で送還の目途が立たない人を長期にわたって収容することは本来の目的から離れています。
さらに日本の収容施設については処遇の面で数々の課題が指摘されています。1年以上にわたって収容され、その後難民認定された人たちは収容が心身にもたらす深刻な影響について訴えています。2017年3月25日には、収容中の40代ベトナム人男性が意識不明となり、適切な医療を受けられなかったために死亡しました。報道では、個別の事情を鑑みると言及されているものの、収容を原則とするような運用の改正であれば国際基準との乖離が懸念されます。難民の収容についての課題は、こちらの特集記事をご覧ください。

3. 難民申請中の生きる手段が限定的であること

現在、難民申請の審査にかかる年月は平均2年4ヶ月(※5)です。その間、就労が認められない難民認定申請者へは、政府による生活保障が必要です。現状では、困窮する難民認定申請者は、外務省が管轄する生活困窮者むけの保護費受給の対象となりますが、その支援体制は十分ではありません。「個別難民が庇護を求めてきた時点から第三国に出国するか又は我が国で難民認定を受けるまでの間、衣食住に欠ける等保護を必要とする者に対し、必要な援護を行うための予算措置を講ずる等援護体制を整備する必要がある」とする行政管理庁からの勧告(※6)があるように、今回の運用によりさらに保護費の対象者が増えるとすれば、予算措置を含めた喫緊の対応改善が必要です。
就労を認めず、最低限の生活も限定的であるが、難民申請は妨げないというのは、実質的に難民申請をする権利を否定することにつながりかねません。JARでは繰り返し指摘していますが、難民申請中に政府からの支援金が限られる以上、長い審査期間を生きていくために就労すること自体は必要不可欠(※7)です。また、支援に頼らず、自力で生きることを望む難民認定申請者は少なくなく、積極的に自立を促すことで国費による出費を節約することにもつながります。もし、報道されたような政府の対応が現実となり、難民認定申請者が収容された場合にかかる費用は莫大(※8)です。

4. 日本国内の雇用の需要と供給のミスマッチについて

高度人材以外の外国人労働者を原則として受け入れない日本において、技能実習と留学は、日本でいわゆる単純労働に従事できる数少ない在留資格です。そのため、技能実習生と留学生は人手不足の産業の担い手となっている実態があります。一部であるにせよ、難民申請という手段が就労のみを目的とする人に使われているのは、他に日本で就労を続ける手段が極めて限られている背景があるからです。これについての対応は、難民認定申請者の権利を大幅に引き下げる懲罰的なものではなく、労働力を必要とする日本社会の現状に見合った外国人労働者の受け入れや移民政策など、より根本的な政策が必要と考えます。

以上に鑑み、JARとしては留学生、技能実習生の難民認定申請者の就労資格を一律に制限すること、また彼らを自動的に収容することに反対し、より包括的な難民政策を導入することを提案します。

以上

※1 その他に、ロイター通信(2017年6月30日)、朝日新聞(同日、ロイター通信の引用)においても同様の報道あり。
※2 「難民認定制度の運用の見直しの概要」(2017年7月10日アクセス)
※3 具体的には難民申請をA案件:保護の必要性が強い案件、B案件:難民条約上の迫害自由に明らかに該当しない事情を主張している案件、C案件:再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件、D案件:上記以外の案件と振り分け、A~Cと認められた案件について迅速な処理をするとされています「難民認定事務取扱要領」(法務省入国管理局)より
※4 拷問等禁止条約第19条第1項に基づく第2回日本政府報告書審査に関する総括所見(CAT/C/SR.1164)
パラグラフ9
(b). 庇護申請者の収容は最後の手段としてのみ使われ,収容が必要な場合でも収容期間を可能な限り短くするようにして,強制退去を控えた収容の期間に上限を導入すること
(c). 出入国管理及び難民認定法に定められた収容以外の選択肢をさらに利用するようにすること
※5 第193回国会・質問第146号 参議院議員石橋通宏議員「難民認定状況に関する質問主意書」(2017年6月15日)
※6 行政管理庁行政監察局、「難民行政監察結果報告書」(1982年7月)
※7 詳しくは、『難民申請の「偽装」「悪用」「濫用」等に関する報道について』をご覧ください。
※8 「総括調査票 (8)入国者収容所大村入国管理センターの維持・運用について」によると、大村入国管理センターでは、平成23年度において、被収容者一人当たりのコストとして毎日14,000円を要すると報告されています。

(2017年7月12日掲載)

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