難民支援協会(JAR)は、2月8日投開票の衆議院選挙を前に、難民や外国人に関するフェイク情報や誤解がSNSや政治の場で広がる状況に、強い危機感を抱いています。たとえば、「飛行機で来る人は難民ではない」「日本には偽装難民ばかりがいる」など、事実と異なる情報が政治家からも発信されています。特定の民族やコミュニティの存在を否定し、社会から排除するようなヘイトスピーチも拡散されています。
こうした差別は、ある日突然芽生えるものではありません。日常の会話に潜む偏見や先入観が積み重なり、やがて制度的に排除が正当化され、最終的には取り返しのつかない人権侵害へとつながっていくーー。歴史を振り返らなければ忘れてしまいがちなこの構造は、米国の人権団体The Anti-Defamation Leagueが「憎悪のピラミッド(Pyramid of Hate)」として図式化しています。
2023年の入管法改正によって難民申請者の強制送還が可能となったことや、いわゆる「不法滞在者ゼロプラン」、永住許可取消しをめぐる議論など、難民や外国人の権利がおびやかされる動きが見られます。これらの“対策”は、制度の不公正さや社会構造に目を向けることなく、難民や外国人の側に問題があるかのように強調されています。対策の背景に「国民の不安がある」ためという説明もされていますが、排除につながる一方ではないかという懸念を支援の現場から抱いています。
現状への不満や将来への不安の原因は複雑で、簡単に解消できるものではありません。社会の複雑さに向き合わず、誰かに責任を負わせるような主張は、一見わかりやすく映るかもしれません。しかし、特定の人々の権利を制限してもよいとする考え方を前提とする社会の行き着く先を想像してみてください。包摂と排除の線引きは、固定化されたものではなく、状況次第で変わります。病気や失業、災害などにより、誰もが弱い立場になる可能性がある中で、人権は特定の人のための特権ではなく、すべての人に共通する土台です。
だからこそ今、「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」という世界人権宣言の原点に立ち返りたいと思います。この宣言は、第二次世界大戦における深刻な人権侵害への反省から、すべての国と人が共有すべき最低限の基準として示されました。あなたが私の権利を守るように、私はあなたの権利を守る。そんな「すべての人の人権が守られる」という大前提こそ、社会のルールであり、秩序を形作るものです。
JARでは、今回の選挙にあたり、各政党の難民保護や外国人との共生に関する「各政党の公約まとめ」と「政党アンケート」を実施しました。『難民にまつわるよくある質問』、『在日クルド人をめぐる「問題」を考える』もあわせて、皆さんが1票を投じる際の判断材料としていただければ幸いです。
難民の方々の中には、自国で言論の自由が制限され民主的な選挙を求めて声を上げたことで命が危険にさらされ、やむなく国を離れた人も少なくありません。そうした人々にとって、民主的な社会の象徴である「選挙」が、誰かを排除する場ではなく、誰もを包摂する方法を模索する場になることを、私たちは願います。
- 各政党の公約まとめ
- 政党アンケート(近日掲載予定)

参考記事:
在日クルド人をめぐる「問題」を考える|難民支援協会|2025/9/18公開
難民にまつわるよくある質問|難民支援協会|2025/7/30更新
Pyramid of Hate|Anti-Defamation League




