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法務省発表「難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについて」 に対するコメント

    認定NPO法人難民支援協会は本日法務省が発表した「難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについて」に対して、難民を支援する立場から強い懸念を持っており、以下コメントを発表します。
    2018年1月12日の法務省発表によれば、2015年9月から実施している「濫用・誤用的な難民認定申請を抑制するため」の難民認定制度の運用見直しを更に行い、引き続き、難民申請者の就労や在留を制限する措置を取ることが明らかになりました。特に、再申請者や、「失踪した技能実習や退学した留学生」など一部の申請者が、就労や在留規制の対象になっています(図1参照)。
    【図1 難民申請者の振り分けと件数、法務省の新方針について】
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    難民支援協会は、一部で難民申請の濫用が生じている現象について、日本社会の課題のひとつである労働人口不足とそれに対応する外国人労働者の受入れが十分にできていないことが背景にあると考えます。この根本原因に向き合わない、濫用対策を目的とした今回の運用変更は、難民申請者の生存を脅かすことにつながるという強い危惧を覚えます。
    運用見直しにおける課題は2点あります。
    1点目は、就労や在留規制の対象となる人のなかに、難民認定や人道配慮による保護を受けるべき人たちが存在することです。
    昨年、難民、または人道配慮による在留が許可された125人(※1)のうち、再申請者は26人(※2)を占めています。当会が把握する限り、過去には、今回就労不可の対象となった留学生や技能実習生からも難民認定に至った人たちがいます。在留資格や申請回数といった形式的な理由から難民申請中の権利を制限するのは適切ではありません。
    2点目は、難民申請者の生活がさらに追い詰められることです。
    難民申請者(2016年は10,901人)は平均2年9カ月を要する審査期間中を生きていかなくてはなりません。保護費(外務省による難民申請者のための支援金)を受給している人は、年間328人、平均受給期間は11ヵ月(※3)と、人数・期間ともに、限られています。就労が制限されると、、働くことも支援金も受け取ることができず、生きていくことが困難になる人が大量に生まれることになります。また現行の保護費は、1回目の申請者が対象であり、多くの再申請者は保護費を受け取ることができません。このような観点からも就労制限は適切ではありません。
    難民支援協会は、今回の見直しにより真に保護を求める難民が排除され、生存が脅かされることがないよう、慎重な運用と定期的な見直しを求めていきます。同時に包括的な難民政策のみならず、外国人労働者の受入れ拡大や、社会統合政策の必要性を改めて訴え、その導入へ向けて関係者と協働していきます。
    ※1 法務省入国管理局「平成28年における難民認定者数等について」(2017年3月24日)
    ※2 答弁書第146号 参議院議員石橋通宏君提出難民認定状況に関する質問に対する答弁書(2017年6月27日)
    ※3 同上。2016年実績

    ※ リンク先におけるURL変更により、一部URL修正(2022年1月)