活動レポート

【報告】難民アシスタント養成講座45期(2025年)を開催しました

「難民アシスタント養成講座」を10/25(土)、10/26(日)に開催しました。

この講座は、すでに難民に門戸を開いている日本が直面している課題を見つめ、難民とともにある社会の可能性を考える講座です。7つの講義や参加者同士の対話を通じて、難民受け入れについての学びと新たな視点や問いを見つける2日間を過ごしました。
(講座のプログラム詳細はこちらからご覧ください。)

全国各地の127名の方からお申込みがありました。学生、社会人、主婦/夫など10代~70代まで幅広い年齢層の方、そして学生、会社員、自営業、医療・福祉従事者、教育従事者、法律関係者、NPO・NGO職員など、幅広いバックグラウンドを持つ方々にご参加いただきました。

講座の様子

マジョリティ性と難民との関係から考える1日目

1日目はオンラインで開催され、4人の講師が登壇。「難民とは」という基礎的な部分から、日本の難民政策や法制度の課題、緊急支援の実態などについて解説しました。講義を通じて、参加者の皆さんの印象に残ったのは、難民問題というのは「難民」の問題ではなく「受け入れる側」の問題であるという点です。「自分の意識においても、難民の方が遠い存在であることにハッとしました。(自分の)マジョリティとしての特権意識を自覚することが、脆弱な立場にいる難民の方に心を寄せ、より公平な関係性の社会を実現していくことに繋がることを学ばせていただきました」といった感想が寄せられました。

講師の写真
オンラインでの画面

包摂と排除をめぐる複雑な歴史と現状、そして当事者の声

2日目は明治学院大学の会場とオンラインとのハイブリッド形式で開催しました。3人の講師が、現在深刻化している日本の排外主義の歴史的背景や外国人を取り巻くヘイトスピーチの問題などについての講義をしました。

講師の写真(2)
会場全体

また、ミャンマー出身の難民の方にも登壇いただき、ご自身の国を逃れるまでの過程、日本に来てから直面した困難などさまざまなご経験について伺いました。参加者の方から多くの感想が寄せられたので、その一部をご紹介します。

「難民の話」に関する参加者からの感想

  • 自分の意見を言ったことで国を追われ、その国へまた戻れるかわからない状況で、明るく力強く、諦めずに歩んでこられた経験に感服しました。
  • たくさんの困難を乗り越えていらっしゃることに尊敬の気持ちでいっぱいです。母国にいつか帰る気持ちで来日し、結局情勢が変わらず帰れない状況が続いている中で生活のためにたくさんの努力をされてきたことが非常に伝わりました。
  • 難民としては認められなかったが、入管が認めようが認めまいが、難民であるのは変わらないという気持ち、と話されていたのが印象的でした。

強まる排外的な声に対して何ができるか?

講義を受けて参加者同士で意見を交し合う「ダイアログ」の時間もありました。テーマの1つは「排外的な声が強まる中で、​難民の包摂に向かうにはどうしたらいいか?​」。難民への理解と共感を広げるにはどのような行動ができるのかについて、参加者の皆さんが積極的に考える様子が見られました。

  • 排外主義が高まる中で、ネットのイメージは本当かどうか疑ってかかっていく必要がある。根拠のある情報を知り、伝えていくことが、誤解や偏見を減らす第一歩になると思います。
  • 難民や移民を“問題”としてではなく、自分と同じように家族や夢を持つ一人の人間として想像してみること。人と人とのつながりを意識することで、見え方が変わるのではないか。その小さな想像力が、共生への出発点だと考えました。
  • 「知ったあとに何ができるか」を考えることが大切。「自分は排外的にはならない」と思っていても、社会の空気や情報の流れの中で、無意識に影響を受けてしまうこともある。だからこそ、関心を持つ仲間と対話を始めることが大事だと感じました。

講座全体への感想ー9割以上が「人にも薦めたい」

参加者からは、「心を動かされた」「行動する勇気をもらった」といった熱い声が多数寄せられました。本講座を通じて、難民や外国人を取り巻く現状と向き合い、私たち自身の意識をどう変えていくかについて、深く考えるきっかけとなっていれば大変嬉しく思います。

  • 私たち一人ひとりの意識の改革や、外国人/難民との接し方が今後非常に重要になることを学びました。様々な意見に耳を傾け、自分が何をするべきか、何ができるかを考えていきたいです。(20代、学生)
  • 各講義の質が高く、心を動かされる内容でした。難民や外国人の方々の尊厳を守り、ヘイトと戦おうと決心しました。色々と知れたことに加え、行動する勇気をもらいました。参加して心から良かったです。(40代、医療福祉関係者)
  • ニュースやネットでは昨今、どうしても難民に対する厳しい意見ばかりが目立つので、自分と同じような考えを持つ方と繋がれたことがありがたかったです。(20代、会社員)

横のつながりが広がった交流会

最後に、参加者の皆さんが直接交流し、横のつながりをより一層広げ深めていただくことを目的として、交流会を開催しました。

講座の感想や、難民支援に関わるキャリア・社会活動の経験などについて、各テーブルで活発な意見共有や情報交換が行われ、大変な盛り上がりを見せました。

今回の講座の様子や参加者の皆さんにご協力いただいたインタビューを、下記の動画からご覧いただけます。是非、講座の雰囲気を感じてください!

参加者の皆さん、この度は本講座にご参加いただき、誠にありがとうございました。この講座を通して学んだことや、出会った同士の人々との繋がりをぜひ大切にしていただけたら幸いです。今後も皆さんとともに、難民支援の輪を広げ、難民の尊厳が守られる社会づくりを目指していきたいと考えています。

最後になりましたが、後援として会場提供をくださった明治学院大学国際平和研究所、配信に協力くださった株式会社 LIFE.14 の皆さまに感謝いたします。

日程が決まり次第ご案内します

講座バナー
日時10月25日(土)・26日(日)
●1日目|9:00~15:40(オンライン) 
●2日目|10:00~16:00(会場 or オンライン) 
※会場では講義終了後に交流会を開催(18:00頃まで・無料)
定員先着順160人
●1日目オンライン(Zoom)+2日目対面|60人
●両日オンライン(Zoom)|100人
参加費●1日目オンライン+2日目対面 一般|15,000円 学生|7,500円
●両日オンライン 一般|12,000円 学生|6,000円
会場明治学院大学 白金キャンパス 東京都港区白金台1-2-37
白金台駅[ 東京メトロ南北線 / 都営地下鉄三田線 ]2番出口・白金高輪駅[ 東京メトロ南北線 / 都営地下鉄三田線 ]1番出口・高輪台駅から[ 都営地下鉄浅草線 ]A2出口 いづれも徒歩約7分
主催認定NPO法人 難民支援協会
後援明治学院大学 国際平和研究所

[わたし×難民]イントロダクション ‐1日目
田中志穂/JAR 広報部
2010年に難民支援協会に入職。2018年まで広報・資金調達に従事。一度退職し、外国ルーツの子ども教育支援、難民の留学生受け入れ事業等に関わる。2023年4月から復職。ウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」などを担当。なんみんフォーラム理事。国際社会学修士。

[緊急支援×難民]難民支援の現場から見えること ‐1日目
加藤美奈/JAR 支援事業部

主に日本の難民への法的支援業務を担当。大学時代にJAR支援事業部でのインターンをきっかけに難民問題に関心を持つ。大学卒業後、民間企業に就職しながらLondon University School of Advanced Studiesで難民保護と強制移住の修士を取得し、2023年4月より現職。東京外国語大学卒。

[法律×難民]難民保護の現状と課題:弁護士の視点から ‐1日目
駒井知会氏/弁護士

東京大学(学士、修士号取得)、オックスフォード大学(修士号取得)、LSE(修士号取得)などで国際難民法・国際人権法等を学び、難民支援をしたくて弁護士になる(東京弁護士会所属、マイルストーン総合法律事務所)。

[政策提言×難民]JARが取り組む政策提言 ‐1日目
生田志織/JAR 渉外チーム

日本の難民を取り巻く法制度の改善に向けた政府・国会への働きかけや、調査研究・ネットワーキングを担当。ベルリン留学、JAR渉外チームでのインターンを経て、2018年7月より現職。大学でのサークル活動(模擬国連)をきっかけに、難民問題に関心を持つ。国際基督教大学卒。

[非正規×難民]非正規移民・難民をめぐる排除の歴史と今 ‐2日目
高谷幸氏/研究者(社会学)

東京大学人文社会系研究科教員。専門は社会学・移民研究。著書に『入管を問う—現代日本における移民の収容と抵抗』(共著、人文書院、2023年)、『移民政策とは何か—日本の現実から考える』(編著、人文書院、2019年)など。非正規移民に関心があった大学院生の頃に現・特定非営利活動法人移住者と連帯する全国ネットワークに関わり、現在は運営委員を務める。

[難民の話] ‐2日目
ミャンマー出身の難民当事者の方から直接お話を伺います。

[情報×難民]外国人を取り巻くヘイトスピーチ ‐2日目
師岡康子氏/弁護士

東京弁護士会外国人の権利に関する委員会委員。国際人権法学会理事。早稲田大学非常勤講師。外国人人権法連絡会事務局長。人種差別撤廃NGOネットワーク共同世話人。著書『ヘイト・スピーチとは何か』(岩波書店、2013年12月)、編著『Q&A ヘイトスピーチ解消法』(現代人文社、2016年10月)など。

講義に加え、参加者同士のディスカッションや発表もあります。オンラインの場合はカメラオンでご参加をお願いします。

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日程が決まり次第、ご案内します。