活動レポート

冬の日本で困難を抱える難民の方々へ、できる限りの支援を

    石川 えり

    難民支援協会 代表理事

    いつも難民支援の活動へご支援、ご関心をお寄せいただき誠にありがとうございます。難民支援協会(JAR)代表理事の石川えりです。

    世界で避難を余儀なくされている方々は、ウクライナ危機によって今年5月に1億人を超えたといわれています。この数は年々増え続け、10年前の倍以上にまでなっています。
    日本においても、ウクライナから逃れた方々が各地で受け入れられるなど今年はこれまでになく日本に暮らす難民への注目が集まりました。

    新たに日本に逃れてくる難民の数は、今年前半までは新型コロナの水際対策により減少していましたが、10月の制限緩和以降増えてきており、新しく入国した方々からのJARへの相談も、コロナ禍前の状況に急速に戻りつつあります。

    この冬のJAR事務所の様子

    日本に到着したばかりで言葉も分からない、頼る先もない、所持金もわずか、という方々が連日私たちの事務所に来られています。先日相談にいらしたNさんは、2週間前に日本に到着して所持金がほぼつき、公園に寝泊まりしていたそうです。JARでの相談の後、宿にご案内し荷物を降ろしたときには「これまで心配と不安ばかりだったけれど、やっとわずかな希望ができた。これから難民申請のために書類を整理する」と涙ながらに話していました。

    以前から長く日本にいる方々の困窮も一層深まっています。長引くコロナ禍により、それまで支えてもらっていた周りの方々も自分たちの生活で精一杯となってしまったため、頼る先がなくなった、とJARに相談にくる方が後を絶ちません。毎日の食料に困っている、病気になってしまったが病院にかかるお金がない、水道電気が止められてしまった、など最低限以下の生活を強いられている方々が多く、それぞれの状況に応じて、できる限り、必要な支援を届けられるよう取り組んでいます。


    ▲「今夜寝る場所がない」という相談が多く、宿を手配しご案内することが増えています(写真はイメージです)

    JARに相談を寄せる方の出身地域はアフリカ、南アジアを中心に多岐にわたっており、難民として逃れてくる理由も紛争だけでなく、人種や宗教、政治的意見による迫害のおそれなど様々です。日本に助けを求めて逃れてきた方々が安心して生活することができるよう、政府によって適切に保護されなくてはなりません。しかし、現状はそれが民間の自主的な取り組みにほぼゆだねられている状況であることを大変残念に思っています。

    2021年に日本で難民として認定された方はわずか74人と、先進国の中で非常に少ない数に留まっており、保護されるべき難民が保護されていない状況があります。さらに、難民申請中に母国への送還を可能にする「入管法改正案」が、来年の国会に再び提出されるという報道もあります。私たちは引き続き、関係者との対話を通じて改善を求めていきます。

    冬のご寄付のお願い

    私たちの活動に日頃よりご関心やお力添えをいただき、心より感謝申し上げます。来年も難民の方々を取り巻く状況は厳しくなることが予想されますが、JARに相談を寄せる難民の方々お一人おひとりに向き合い、支援を続けてまいります。

    また、難民が安心して過ごすことができる社会を目指し、難民を取り巻く問題の根底にある政策面の課題を少しずつでも改善するために、あきらめず取り組んでいきます。

    ここで今年最後のお願いをさせてください。JARの活動資金の約8割はご寄付で成り立っており、皆様からのご支援があって初めて活動を続けることができています。本格的な寒さを迎える中、社会の中で特に困難な状況にある難民の方々を一緒に支えていただき、また関心の輪を広げていただけましたら幸いです

     

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