活動レポート

「頼る先もない、所持金もわずか・・・」。新規に来日した難民の方々からの相談が急増しています

新島 彩子

支援事業部マネージャー

今年10月に新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、入国に際しての制限がほぼコロナ禍前の状態に戻ったことにより、新しく日本に逃れてきた難民の方々からの難民支援協会(JAR)への相談が増えています。その様子を、事例を交えてお伝えさせていただきます(個人の特定を避けるため、複数の事例をもとに再構成しています)。

Mさんはアフリカのある国から逃れてきました。空港で声をかけた人に、同じ国出身の人たちの集住地域があることを聞き、最寄りの駅まで連れていってもらったそうです。
そこで知り合ったアフリカ出身の人の家に泊めてもらっていましたが、週末は外に出ないといけないなどの制約があり、他の人の家も転々とするなかでJARのことを聞いて電話をかけてきたということでした。
彼は短期滞在ビザで来日し、1か月の在留資格を持っていましたが、難民申請をまだしていなかったので、逃れてきた事情などを丁寧に聞き取ったうえで難民申請の方法をお伝えし、資料作成をお手伝いしているところです。また、所持金もほとんどなかったため、まずは宿泊先を手配しご案内しました。食事はJARでランチを提供したり、食料をお渡ししたりしています。

もう一人、アジアのある国から逃れてきたSさんをご紹介します。

Sさんは日本にいる親戚を頼ってきましたが、その親戚も自分たちの生活で精一杯でSさんの面倒は見られないため、しばらく都内の公園で野宿をしていたそうです。洋服は薄い長袖1枚、所持金もほとんどない状態で、道行く人に尋ね、JARのことを教えてもらい、その方に電話も借りてJARに繋がることができました。
すぐに事務所に来てもらいましたが、見るからに具合が悪そうだったので仮眠室で休んでもらいました。身体が温まり少し体調が落ち着いてから、お話しを伺いました。
日本に逃れてくるまでどのようなことがあったのか、また日本到着後はどのように過ごされていたのかなどを詳しくお聞きし、難民申請手続きについてお伝えをしました。宿泊先を手配し、事務所近くの病院に予約を入れ、翌日受診同行をしました。日々の生活と医療面の支援をしつつ、難民申請の準備を一緒に進めていきます。

▲写真:JAR事務所内の仮眠室

日本に到着したばかりで、頼る先がない、日本語も分からない、所持金はわずか、という方々がこの秋以降増えており、毎日、JARを頼っていらっしゃいます。そういった方々が、まずJARのことを「ここなら頼って自分のことを安心して話して良いのだ」と思えることが大切だと考えています。なぜなら、日本に来るのも初めてで、JARという団体を信用して良いのかもわからない、そのような状態で、母国の迫害のことや家族のことなどの個人的な事情を話すことは難しいからです。

ホームレス状態などぎりぎりの状態に置かれている方も多く、また、在留資格が切れる前に難民申請をすることが望ましいため、「いかに早く関係性をつくり、より良い道筋を一緒に探ることができるか」が大切です。相談を担当する個々のスタッフだけでなく、JAR事務所全体として、難民の方々を歓迎している温かい雰囲気をつくり、お一人おひとりに真摯に対応することを心がけています。

冬のご支援のお願い

12月に入り、JAR事務所のある東京も寒さが厳しくなってきました。新規来日の方が増えているのと同時に、何年も前から日本に逃れてきた方の困窮も一層進んでいます。そのような中で、難民の方々に提供する食料、宿泊先などの必要数が急増しています

まずはこの冬を乗り越え、また、その先の安定した生活を描けるように、皆さまからのお力添えをいただけないでしょうか。ご寄付は難民の方々への直接支援や、難民を受け入れる社会を目指した政策提言、広報活動に大切に活用させていただきます。