2017年11月6日
認定NPO法人 難民支援協会
シリア難民留学生受け入れ事業 第二陣トルコでの選考終了
新たに沖縄の日本語学校、国際基督教大学での受け入れへ
難民支援協会(JAR)は、2017年10月13日から18日にかけて民間主導によるトルコ在住シリア難民留学生受け入れ事業の第二陣選考を行いました。合計1,091名の応募を受け、19名と面接を実施しました。今後、最終選考を経て、第二陣来日候補者を決定します。日本語学校での受け入れは、第一陣を受け入れた首都圏の学校と新たに沖縄の学校が加わり2校で6名、さらに新規で大学での受け入れとして、国際基督教大学(ICU)で2名、合計8名の受け入れを予定しています。
トルコにおけるシリア難民の状況
トルコに滞在するシリア難民は今年も増え続けて、UNHCRによると年初の285万人から325万人に達しています(2017年10月現在)。シリア難民の滞在が長期化する中、トルコ社会での教育や就業機会を求める難民間での競争がより激しくなっています。奨学金等の機会は限られており、多くの高等教育対象年齢の若者が、非正規の単純労働に従事せざるを得ない状況が続いています。シリア内戦は収束に向かっているものの、未だ様々な武装勢力が割拠しています。安全な帰還は難しく、むしろ新たに国境を越えてトルコに入る難民の動きも途絶えていません。
第二陣の選考状況
そのような中、JARは昨年に引き続き、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会との共同事業として、トルコ在住のシリア難民留学生受け入れプログラム第二陣選考を2017年10月13日から18日、トルコ国内2カ所で行いました。
日本政府も2017年度より新たに難民留学生受け入れプログラムを開始しましたが、レバノン、ヨルダンが主な募集対象国です。JARは、最多のシリア難民が暮らすトルコから、昨年同様、高卒や大学中退で日本での大学進学を目指す若者に加え、新たに大卒で日本での大学院進学や就労を目指す難民の受け入れに取り組みます。
日本語学校での受け入れは、第一陣を受け入れた首都圏の学校と新たに沖縄の学校が加わり2校で6名となりました。沖縄での受け入れを決めた背景には三つの理由があります。まずは、第二次大戦での地上戦を経験し、今も過重な米軍基地負担により身近に紛争を知る地域だからこそ、戦禍を逃れてくる難民を受け入れていただける素地が強くあること。二つ目に、多くの移民の送り出しとその子孫の受け入れ経験を持ち、異なる文化の人々と共存する寛容さがあること。三つ目は、昨年JARが沖縄平和賞を受賞させていただいたご縁があったこと。これらに加え、沖縄の日本語学校、地域ボランティアの方々の協力があり、受け入れ事業が立ち上がりました。
加えて、新たに大学での受け入れとして、国際基督教大学(ICU)教養学部で 2 名の入学を予定しています。外国の教育制度を経てICUに出願する、他の学生と同じプロセスをもって選考されます。ICUは英語開講科目が充実している一方で、日本語教育にも定評があり、卒業時には学位と共に、大学で学ぶのに十分な日英両語の運用能力の取得が期待されます。
以上の通り、第二陣として、首都圏と沖縄の日本語学校 2 校で 6 名、国際基督教大学で 2 名、合計 8 名 の受け入れを進めています。
本年の応募者は1,091名、その内、トルコ在住で必要書類を提出できた応募者は362名、最終的には書類選考を重ねて19名と面接を行いました。応募者の中には、シリアで日本語を勉強していた方や、日本のアニメに関心を持ち、日本語を独習し、オンラインでつながった日本の友人もいるという方も数名いました。一方で、シリアにおいて日本は「惑星」と呼ばれるほど遠い国ですが、第二次世界大戦の廃墟から立ち上がり高い技術力で先進国となった憧れの国でもあるようです。興味の分野は経営、工学、環境、語学などそれぞれですが、いつの日か故郷に戻り、祖国の復興に役立ちたいという想いは共通でした。また、面接に臨んだほぼ全ての応募者が、シリア内戦の空爆や銃撃を身近に経験し、命の危険に晒され、道中の危険を乗り越えてトルコに逃れてきた過去を語ってくれました。
第一陣の状況
2017年3月に(1名は遅れて7月)に来日した6名の難民留学生は、現在首都圏と関西圏の日本語学校2校で、それぞれ学習を継続しています。各地域での支援団体や支援者の方のサポートもあり、日本の生活にも慣れ、日本語も上達をしてきました。日本語をもっと練習するため、日本人と話せる機会を増やしたいとの希望が多く出ており、地域の方々との交流、出会いの場づくりを、積極的に進めています。第一陣の留学生達が自分達の経験を後続する後輩へ伝えることができるようになることで、第二陣が日本社会で一歩を踏み出す橋渡しになればと考えています。
今後、オンライン面接を進め、最終の候補者を決定後、11月よりビザ申請を行い、さらに来日前の日本語学習を支援します。JARは今後も、日本語学校や大学、地域の方々、支援団体と協力し、首都圏、関西圏、沖縄の各地で、戦禍を逃れて高等教育の機会を求める難民の若者達への支援を継続していきます。また、日本社会で難民受け入れへの関心が高まり、様々な地域での受け入れが実現するよう、関心ある方との関係構築や情報発信を行っていきます。
以上
■本件に関するお問い合わせ
認定NPO法人難民支援協会 広報部 田中・野津
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