活動レポート

感染拡大の影響が広がるなか、頼れる先のない人が取り残されないように


難民支援協会(JAR)では、新型コロナウイルス感染のリスクから難民の方々を守りながら支援を続けられるよう、力を尽くしてきました。迫害から日本へ逃れてきた難民の方々のなかには、日本に頼るあてがなく、私たちの支援がなければ、食料や宿泊場所など最低限の衣食住を欠いてしまう方もいらっしゃるため、何としても活動を続けたいという一心で試行錯誤を重ねています。
緊急事態宣言以降は、事務所を週2日(火・金)開き、最低限の衣食住の維持に関わる支援を続けながら、電話相談を在宅でも受けられるようにするなど体制を整え、その他の支援も可能な限り続けています。

感染拡大による難民の方々の暮らしへの影響

新たに逃れてくる方は入国規制により減っていますが、それ以前に来日した方は、通常よりもさらに不安を感じる状況のなか、日々を過ごしています。

Case 1:日本に逃れて間もなく国内が緊急事態になってしまった

感染拡大が深刻化する直前に日本へ逃れてきた人がいます。難民は、観光ビザを最初に取得できた国など、最短で逃れられる場所を行き先として選ぶことが多く、日本に全く知り合いがおらず、物価の違いから所持金も数日で尽きてしまう人が少なくありません。異国で、泊まれる場所もなく路上で過ごすことは、精神的にも肉体的にも大きな負担がかかりますが、さらに新型コロナウイルスの感染というリスクが加わりました。一方、モスクなどの宗教施設や24時間営業のお店など、これまで夜を過ごしていた場所が感染対策のために利用できなくなり、行き場はさらに少なくなっています。

Case 2:仕事がなくなってしまった

日本に来てしばらく経ち、難民申請の結果を待ちながら、アルバイトや契約社員で生計を立てていた人の多くが自粛の影響を受けています。失業してしまい、新たな仕事がなかなか見つからないと数年ぶりにJARへ相談にきた人もいました。社会全体で求職者が増えるなか、就労許可があっても日本語の能力などを理由に今まで以上に仕事が見つかりづらくなっています。

Case 3:頼れる人からの支援が途絶えてしまった

日本の厳しい難民認定の裏には、難民不認定となっても迫害の待つ母国には帰れず、再申請をして、なんとか滞在を続けている人がいます。その場合、公的支援の対象にはならず、就労許可もありません。周囲の友人たちから数千円ずつお金を借りたり、海外の友人から毎月送金してもらい何とか生活していたという人が少なくありませんが、感染拡大の影響で支えてくれていた人の生活も厳しくなり、一切の収入が途絶えてしまうなどの影響が出ています。
緊急事態宣言が解除されても、元々不安定な立場で暮らしている難民の方々の生活への影響は長く続くことが予想され、仕事がずっと決まらなかったり、家賃を払えず家を失ったりなど、生活に困窮する方が徐々に増えていく可能性があります。

いま・これから必要とされる支援

私たちはコロナ禍においても、難民の方々の衣食住を支える活動を可能な限り続け、また難民の方々が少しでも行政等からの支援につながるよう適切な情報提供を行っていきたいと考えています。

✔︎ 生活・就労相談に個別に対応し、支援する
JARには来日直後の人、就労許可を得て働き始めた人、来日から何年か経過し、在留資格や就労許可を失ってしまった人など、さまざまな局面にある方から相談が寄せられます。一人ひとり置かれている状況が異なり、必要としている支援も利用できる制度も異なるため、専門性を持ったスタッフが一人ひとりに寄り添って個別に支援をすることが重要です。
通常は対面での相談が中心ですが、相談専用のフリーダイヤルやメールでの対応も強化し、感染拡大の影響下でも、生活や就労の個別相談を継続します。

✔ 安全な宿泊場所を提供する
ホームレス状態にある難民の方に宿泊場所を提供します(30部屋のシェルターを確保)。シェルターが満室の際、女性や子どもなど脆弱性が特に高い方には宿泊費を支援します。

✔︎ 食料・日用品を提供する
生活に困窮している方に対して、食料やマスク・石鹸などの日用品をお渡しします。感染リスクや交通費がないことなどから事務所に来られない方もいらっしゃるため、通常は行っていない自宅・滞在先へ送付する支援も行います。

✔︎ 必要な情報を多言語で届ける
自粛要請や給付金についてなど、日本政府の方針や施策は日々刻々と変化していますが、私たちが支援している方の多くは日本語が分からず、これらの情報を入手することが困難です。難民申請者の方々の暮らしにも影響する情報や利用できる制度等について、日本で暮らす難民の方々の主要言語(英語、仏語、アラビア語、ペルシャ語等)に翻訳し、メール・ウェブサイト・チラシで情報を届けていきます。
生活が立ち行かなくなり、途方にくれてしまった人がJARを思い出し、藁をもつかむ気持ちで連絡をくださったとき、たとえできることが限られていても、拠り所になりたい。そんな思いで、緊急事態宣言後も感染リスクと天秤にかけながら、事務所と電話回線をできる限り開き続けることにこだわり、支援を続けてきました。できるだけ速やかに通常の支援体制に戻せるよう、また第二波がきた場合にも最低限の支援を続けられるよう、工夫を重ねていきます。

ご寄付でできること

JARの活動資金の約6割が寄付金によって支えられていますが、感染拡大の影響で、複数のチャリティイベント(約700万円)や難民アシスタント養成講座(約100万円)が中止となり、講演の機会もなくなるなど、収入が大きく減少しています。新型コロナウイルス対応に関わる助成金なども活用させていただき、資金の確保に努めていますが、1,000万円の減少を補う目処は、まだ立っていません。新型コロナウイルスの影響が大きいところに支援をとお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひ、JARへのご寄付をご検討ください。
これから予想される深刻な不況によって、これまで支援の必要がなかった方からの相談も増えていく可能性が考えられますが、一人ひとりにできる限りの支援を続けられるよう、引き続き、皆さまのお力添えをいただければ幸いです
皆さま一人ひとりが大変な状況にあるなか、すでに多くの方からご理解・ご支援をいただいておりますことに改めて感謝申し上げます。

※支援活動の内容は6月上旬時点で予定しているものです。感染拡大の状況に応じて一部変更の可能性があります。

この記事以降の状況については、こちらの記事をご覧ください。
猛暑の中支援を続けています』(2020年9月1日掲載)