解説記事・声明等

法務省「難民認定制度運用の見直し(案件の振分け)状況に関する検証結果(第2回)」が公表されました

    法務省入国管理局では、「難民認定制度の運用の見直しの概要」(2015年9月15日)を踏まえ、運用状況の適正性を検証する有識者会議を開催しています。その2回目となる検証結果報告書が、2018年10月31日に法務省のウェブサイトで公開されました。
    難民申請数の急増やそれに伴う審査期間の長期化などを背景として行われた「運用の見直し」により、結果として在留や就労の制限が強化されるようにもなりました。難民申請者に与える影響が大きい運用を検証し、さらに難民申請手続きそのものへの指摘も含む本報告書は、難民保護の観点から重要であり、紹介します。

    難民認定制度運用の見直し状況検証のための有識者会議とは?

    「運用の見直し」により、難民申請書が提出されると、各案件は2か月以内にA~Dのいずれかに振り分けられることとなりました。そのうち「難民条約上の迫害理由に明らかに該当しない事情を主張する事案」(B案件)及び「正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返す再申請事案」(C案件)の振り分けの適正性について、有識者会議が検証を行っています。今回の報告書には、2016年7月から12月に、BもしくはCに振り分けられた案件(合計367件)のうち、計30件について検証した結果が記載されています。

     

    検証結果について

    第2回目の検証結果では、「提供された資料及び記録から判断する限りにおいては、明らかに不適切・不適当と直ちに断定できる案件は見当たらなかった」としながらも、以下の指摘や意見がありました。

    • 振分けの見直しを検討すべきと考えられる事案や人道配慮に関する検討が必要と考えられる事案などが見られた
    • 振分けの検討過程に係る記録が重要である
    • 非国家主体による迫害を申し立てる案件など振分けの適正性を判断するためには更に情報が必要である
    • B案件に対する取組が進められる中で,A案件,C案件及びD案件への対応の遅れが懸念されることから,案件全体の迅速処理に向けた取組も進めていくことが適当である
    • 真の難民を迅速かつ確実に庇護するため、難民該当性判断の在り方など難民認定手続全般について、更なる取組が進められることを期待する
    • 振分けの適正性を判断するには出身国情報の充実が重要である
    • 難民条約上の迫害理由に該当し得るか否かの検討過程を記録上明らかにしておくことが適当である
    • 申請者が受けた迫害やその背景事情等について問答形式を用いるなどして正確に記録することが適当である

    法務省は、B・C案件をいわゆる「濫用・誤用」のケースとしており(注)、就労または在留制限を行っています。振り分けの適正性の確保は、難民申請者の法的保護や生活面での保障の点で非常に大きな意味を持つものなのです。
    また、委員からは、難民申請手続きそのものに関する指摘もありました。難民の審査は、誤って不認定とされ本国へ送還されれば、命の危険を伴う手続きであり、慎重な対応が求められます。
    外部有識者という第三者的会合によって適正性が確認されるこのような仕組みを評価するとともに、法務省が、この検証結果を真摯に踏まえ、難民申請手続きの改善を実際に行うことを望みます。
    注:第193回通常国会 石橋議員質問主意書 より(2017年6月)
      

    ※ リンク先におけるURL変更により、一部URL修正(2022年1月)