活動レポート

【支援現場レポート】新たに逃れてきた難民の方々が急増する中、一人ひとりへの最善の支援を

昨年秋に外国人の入国制限が解除されたことにより、新たに来日する難民の方が急増し、現在も多くの方が難民支援協会(JAR)に来訪しています。難民一人ひとりへの支援を担当している支援事業部の新島より、現在の支援の様子をお伝えします。

*   *   *

2022年の10月までと比較すると、JARに来訪する現在の相談者数は以前の2倍から3倍に増えています。1日の来訪者数が30人に及ぶ日もあり、相談にみえた方の受付、ランチや食料の提供、シェルターや病院への同行などのあらゆることを部署を越えてスタッフ全員で対応しています。
現在もコロナ禍の体制を継続しているため、JAR事務所での相談時間は11時から16時までとしてはいますが、朝9時過ぎにはすでに来訪される方もあり、遅い時間まで相談を受けたりするという毎日が続いています。
5部屋ある相談室はすぐに埋まってしまい、また、待合スペースで多くの方をお待たせすることになるため、スタッフ用の会議室やボランティアスペースなども活用しながら対応しています。

さまざまな課題がありますが、喫緊の課題は住居です。現在JARが受けている相談でほぼ共通するのは「今日寝る場所がないので助けてほしい」という相談です。
ウクライナの方々には、日本に身寄りのない場合には一時滞在施設が提供されますが、JARが支援している自力で逃れてきた難民の方々は、自分でどうにか滞在できる場所を確保しなければなりません。
JARが運営するシェルターには現在空きがないため、安価な宿泊施設を手配するなどの対応をしています。昨年末からは常時20人から30人くらいの方に宿泊施設を提供しています。他団体でシェルターを運営されている団体にも相談し、何人かの方々を受け入れてもらっています。
公的支援に繋がったり他団体のシェルターに入居できたりと、安定した住居に住むことができた方もいますが、それでも毎日新たな方からの相談を受けるため、常に宿泊施設手配に追われています。

相談者が急増する前から、支援事業部ではホームレス状態の方々への対応について話し合ってきました。「寒い冬に野宿をさせるわけにはいかない。どうにかして屋根のある場所を確保しよう」と決め、受け入れ先を探し提供していますが、宿泊施設での生活が何週間か続くと難民の方々にも疲れが見られています。一人ひとりにとって最善の支援を提供できているのか自問し、私たちが提供しているのは、寝るだけのスペースしかないような、ゆっくりできるような場所ではないであろうことに心苦しさも覚えています。
「home」とは言えないまでも、安心してくつろいだり、食事をしたり、寝たりという当たり前のことができる場所を確保すべく、新たにシェルターとして数部屋を借り上げました。また、難民支援に特化されているわけではありませんが、ホームレス状態の方々を支援されている、LGBT、生活困窮者、外国人などへの支援団体とも連携し、住居支援に努めています。

一方、喜ばしいこともあります。
先日は、来日当初より支援していた方から難民認定の報告を受けました。相談室に入るやいなや、「見せたいものがあるから目をつぶってほしい」と言われ、数十秒後に目を開けたところ、テーブルに難民認定証明書が置かれていました。本国での経験はもちろんのこと、日本に来てからもいくつもの苦難があった方だったので、心から安堵した様子で、これからの新たな人生に目を輝かせていました。

年末に初めてJARを訪れたホームレス状態だった方からは、「日本に来て心の安らぎを取り戻し始めた」という言葉がありました。私たちの支援は充分ではないはずですが、それでも心の安らぎを取り戻し始めたとは、それまでどれほど過酷な状況にいたのかを想像させます。
また別の方は、たまたま数日前が彼の誕生日だったため「お誕生日おめでとう」と伝えたところ、「誕生日を祝う言葉をくれたのはあなただけだ」と涙を流され、一人ひとりが抱える孤独や孤立を感じる場面でもありました。

依然として難民認定は厳しい状況ですが、ひとりでも多くの方からの前向きな報告を増やしていかなければいけないと改めて思っています。しかし、それは私たちJARだけでは成しえません。難民の方々にすべきこと、私たちにできること、「本当はできたらいいな」と思うことが重なる最大値を、皆さまとともに見つけていきたいと思います。

(支援事業部マネージャー 新島彩子)


急増する難民の方々への支援も、皆さまからのご寄付のおかげで続けることができています。この冬も困難な状況にある難民の方々に心をお寄せいただき、多くのご支援をいただきましたことに心より感謝申し上げます。

この冬の支援実績(期間:2022年12月1日~2023年2月28日)

・事務所や収容所等での相談件数 606 件
・リモートでの相談件数 745 件 (オンラインビデオ通話、電話やメールによる相談・支援)
・シェルター・宿泊費提供件数 93 人 (期間前からのシェルター入居を含む)
・物資の宅配数 147 件

いただいたご支援

・ご寄付の総額:26,423,983 円(1,237 件)
※ 冬の寄付の案内開始(2022年11月15日)から2023年2月28日まで
なお、同期間にいただいた一部の大口寄付を除きます。

いただいたご寄付をもとに、難民の方々への直接支援のほか、 政策提言や広報活動など、当会の事業全体に取り組んでいます。