活動レポート

この夏の難民支援にご協力ください – ハンナさんとアリフさんの話

新島 彩子

支援事業部マネージャー

難民支援協会(JAR)で直接支援を担当している、新島彩子と申します。

私たちのもとへ相談を寄せる方々は、「難民」といっても出身国、逃れてきた理由、日本での生活の状況など、それぞれに個別の背景や状況があります。

日本に来た直後から、「難民申請の手続き方法がわからない」「住居や仕事を得る方法がない」といった状況に置かれるので、一人ひとりの相談を慎重に聞き取り、状況に応じて必要な支援を行っています。

今回は、現在支援している方をお二人紹介させてください。

ハンナさん(仮名)の話

ハンナさんは西アフリカ出身。母国の政府により禁止されている宗教を信仰していることにより身の危険を感じたため、3年前に来日しました。

Narit Airport

成田空港に着いたときの所持金はわずか数万円、日本に知り合いもいませんでしたが、空港のパソコンで検索をしてJARにつながりました。

ハンナさんはJARの支援を受けてまず難民申請を行い、その後、難民申請者への公的支援も申請しました。しかし公的支援の結果は3か月待っても出ず、日々の暮らしをどう成り立たせれば良いのか、とスタッフに対して憤りをぶつけることもありました。

しばらくして、ようやく難民事業本部(RHQ)より難民申請者への公的支援である保護費が受給できるようになり、アパートを借りることができました。就労資格も出たため、今は工場で働きながら難民申請の結果を待っているところです。

ハンナさんは慣れない仕事や将来への不安に「心が負けそうになることもある」と言いますが、同時に、自身が信仰する宗教を隠さなくても良い状況にいられることへの安堵の気持ちや感謝も口にされます。

Hanna

アリフさん(仮名)の話

もう一人、来日して長いアリフさんをご紹介します。南アジア出身のアリフさんは、母国でジャーナリストとして民主化活動に携わっていましたが、仲間が政府寄りの武装グループにより次々と拉致され、いよいよ自分の身の危険を感じ、日本に逃れて来ました。

来日直後にJARの支援を受けて難民申請を複数回行いましたが、難民認定されず、長期間入管に収容されていました。今年の春に仮放免となり、仮放免後の生活について相談をするために久しぶりにJARを訪れました。

先の見えない収容中の生活も非常に厳しいものがありますが、仮放免となって入管施設を出られても、公的支援が全くない状態で、住む家もなければ生活をしていくためのお金もなく、さらに就労資格もないため途方にくれてしまう方が多くいます。アリフさんは仮放免直後は同郷の知り合いの住居に間借りさせてもらっていましたが、出て行かなくてはならなくなったため現在はJARのシェルターの一室を提供しています。また、食料品をJARから送ることで何とか生活をつないでもらっています。

Arif

しかし、出口のない生活に精神的な不調をきたしてしまい、ご本人から何度も相談があったため、メンタルクリニックを紹介し定期的に診察を受けるようになりました。今は精神状態は落ち着いてきていますが長期的な治療が必要で、「なぜ自分はこのような状況から抜け出せないのか」という大きな失望を抱えていることに変わりはありません。

難民の方々の困難に寄り添い、支援を続けています

依然として続くコロナ禍により、新規で来日する難民は少数にとどまっています。そのため、JARに相談を寄せるのは、今回ご紹介したお二人のように、何年も前から来日し困窮している方々が中心となっています。

JARに相談を寄せる方々に共通するのは、母国ですでに差別を受けたり、身の危険を感じたり、迫害を受けたりした方々であること、さらに、逃れた先の日本でも難民認定されずに生活が困窮し、先が見えないことへの不安を抱え続けている、ということです。

そういった不安や恐れによって鬱々となる人もいれば、怒りに変わる人もいます。中には、私たちに行き場のない憤りをぶつける方もいますが、怒ることのできる場があることも大切だと思っています。「この人たちだったら、自分の内面のことでも言える」ということはとても大きいと感じます。また、何も表現ができずに「大丈夫です」という人もいるので、そういう心情も汲み取ることを心がけています。

相談内容は様々ですが、生活に困窮している、体調を崩したが病院にかかることができない、難民申請の結果が出て不認定となった、などを訴える方々が多くなっています。お一人おひとりの状況に応じ、食料や物資の提供、医療機関への紹介や受診の同行、法的支援、就労支援など、その時々に必要な支援を出来る限り続けています。

難民不認定となり在留資格を失ってしまった方への支援は、出口がなく難しい場合が多いですが、その方が生活をつないでいけるよう、お一人ひとりの状況を伺いながら、個別に対応できることを見つけていく必要があると考えています。難民認定という法的解決が最も望ましいものの、そこまでの道のりも長く険しい状況にあり、その長い道のりを、その方の置かれている状況などに応じながら支えられるように努めています。

これからも、日本に逃れてきてJARに相談を寄せる難民の方々に、必要な支援を届けたい、彼ら彼女らの心の拠りどころになりたい、という思いで日々活動をしていきます。

このような私たちの活動の多くは皆さまからのご寄付によって成り立っています。

酷暑や大雨など厳しい天候が続きますが、日本に暮らす難民の方々がこの夏を無事に乗り越え、それぞれの生活を続けられるよう、皆さまのお力を貸していただけないでしょうか。託していただいたご寄付は、今ここ日本で助けを必要としている難民の方々への支援に活かします。

※写真はイメージです。個人が特定されないよう、名前など一部の情報を変えて掲載しています。