活動レポート

新しいビジョン・ミッションを策定しました

    この度、難民支援協会(JAR)は、活動の指針となる団体のビジョン・ミッションを新しく策定しました。

    ビジョン

    難民の尊厳と安心が守られ、ともに暮らせる社会へ

    ミッション

    日本に逃れてきた難民が、
    厳しい状況を乗り越え、
    自らの力を活かして
    希望を持って生きられるよう、
    一人ひとりに向き合い支援します

    日本で生きる難民を取り巻く
    制度や仕組みを改善し、
    難民への理解と共感が
    社会に広がるよう活動します

    新しいビジョン・ミッションの策定にあたって

    この度、新しいビジョン・ミッションを策定した経緯と、私たちがこめた想いをお伝えします。

    難民支援協会(JAR)は、20年以上にわたり日本に逃れた難民を支援してきました。たいへん多くの方からの共感・ご支援をいただき、今日まで活動を続けることができました。

    日本では、難民はほとんど認定されることなく、収容され送り返されるという不安を抱えています。また、認定結果が出るまでも非常に長期間待たされますが、日々を暮らすための公的な仕組みもわずかです。あたかも社会に存在せず、権利を認められていないような状況に置かれています。このような状況に対して、私たちは設立以来、難民が尊厳と安心を守られて暮らせることを目指し、難民一人ひとりと社会それぞれに向き合い、活動に取り組んできました。

    その根底には、一人ひとりが直面している状況を傍観できないという想いとともに、難民を取り巻く仕組みや制度を改善することは、社会に暮らす私たちに問われていることという考えがありました。日本に暮らす難民は、まだ自ら声をあげたり、活動することが難しい状況もあります。

    しかし、難民を取り巻く状況は依然として厳しく、多くの難民の方々が、変わらず困難な状況に置かれています。少しでも解決に近づくために、私たちの取り組むべきこと、その根底にある考えを、改めて捉え直したいと考えました。そこでこの度、より多くの方々と共有し、また私たちが常に立ち返ることができるものとして、あらためて団体のビジョンとミッションを明確化することとしました。

    新しいビジョン・ミッションは、以下を意味しています。

    ビジョン

    私たち難民支援協会は、紛争や人権侵害などで故郷を追われ、難民として日本に逃れてきた方々の尊厳と安心が守られ、ともに暮らせる社会の実現を目指します。

    世界には、紛争や人権侵害などで故郷を追われ、難民として逃れる人々がいます。「難民」となる前は、仕事や家があり、大切な人たちとの日常がありました。
    しかし、政治的信条や宗教、民族、ジェンダーなど、自身が大切にしていることを理由に迫害の危険にさらされる、紛争などで人としての当たり前の日常を破壊されるなど、さまざまな理由で逃れています。
    しかし、日本では、ほとんどの人は難民として認定されず、送り返されてしまう不安を抱えており、最低限の生活を営むことも保障されません。
    私たちは、この状況を変え、難民の尊厳と安心が守られ、ともに暮らせる社会を実現をすることを目指し、活動しています。

    ミッション

    日本に逃れてきた難民を待ち受けているのは、頼れる先のない、過酷な状況です。来日し、難民申請をしてもすぐに自力で生活をすることは困難ですが、利用できる生活保障はわずかです。すぐには就労は許可されず、働く資格を得ても仕事を見つけることは困難です。難民認定が適切になされないため、不認定となり日本にいられなくなる日が来ることをおそれて暮らさざるを得ません。

    難民の尊厳と安心が守られ、ともに暮らせる社会を実現するため、私たちは2つのことを、ミッションとしています。

    一つは、一人ひとりの難民に向き合って、支援することです。
    厳しい状況の中で、難民は自ら日々を切り開くことが求められますが、母国で経験してきたことも、日本で直面している困難も、一人ひとり異なります。活かせる力も、それぞれ異なります。難民として認定されることをはじめとして、希望を持って生きられるよう、それぞれ真摯に向き合って、支援を行います。

    そして、この状況は、難民の問題ではなく、難民を受け入れる社会の問題だと考えています。私たちは、制度や仕組み・社会を変えること、そして難民についての理解と共感を広げることを、もう一つの責務と捉えています。
    日本で難民が置かれる状況は、厳しすぎる難民認定、使える制度の少なさ、生活する上で直面する障壁といった、制度や仕組みの課題/不在によって生まれています。一人ひとりへの支援に加えて、制度や仕組み、そして社会に対しても働きかけ、変化を生み出すことを通じて、一人ひとりの難民の状況の本当の意味での改善に近づけると考えています。

    ビジョン・ミッションの再策定にあたっては、難民支援協会の各部門から有志が集まりワーキンググループを構成しました。
    このワーキンググループで、まず全ての活動を振り返り、そこから重要なキーワードを選んでいきました。そして、スタッフ全体での議論を交え、意見を交換しながら文案を作成しました。
    このプロセスは、単に用語を選ぶというだけでなく、私たちは難民についてどのような状態を目指すのか、社会とはどのような関わり方をするのか、活動はどのような在り方を大切にするのか、など、活動において本当に大切にしていることは何か、を捉え直す機会となりました。
    そして、コピーライターのご協力を経て、より想いが伝わるよう文言をブラッシュアップし、スタッフ全体で改めて意見交換をして決定しました。

    このようにして今回作り上げたビジョンとミッションは、まったく新しいことではなく、従来から活動の基礎となっていた考えや想いを、あらためて明確にし言葉にしたものです。難民支援協会を通じて難民を支援くださっている方々や協力している方々ともこの考えを共有し、想いを共にして、力を合わせていきたいと考えています。

    今後ともご支援、ご協力の程、どうぞよろしくお願いいたします。