2018.02.14

コンビニバイトで見かける外国人留学生たちの現状。ベトナム、ネパール、モンゴルの学生に直接話を聞いてみた

こんにちは、編集者の徳谷柿次郎と申します。

「ニッポン複雑紀行」では初めて執筆させていただくんですが、実は私もそこそこの複雑さを感じながら生きてきました。

生まれは大阪。小2で両親が離婚し、その後借金まみれ。真っ当なレールから外れて、26歳まで朝夕刊の新聞配達、そして牛丼チェーン店「松屋」のバイトリーダーを務めてきました。

 

元々大阪は多様なルーツの人々を抱える土地でもあったため、一緒に働く仲間に外国人がいるのは珍しくありません。

例えば、とある中国出身の学生が生活費を稼ぐために働いていて、「ギュウドンイッチョー」とカタコトの日本語でオーダーを通していたり、ワケのわからないおじさんに絡まれて「スミマセン…!」と謝っていたりなど、外国人が不慣れな土地で働く様を間近で見てきました。

「学校で勉強しながら、知らない国でアルバイトするの大変すぎるだろ」

自分自身に置き換えたら、とてつもない勇気が必要です。ニューヨークのハンバーガー屋で働く自信はない。絶対ムリ。

10年前はバイトリーダー視点でしか社会を見つめられなかったんですが、それなりの年齢(35歳)にもなると日本を取り巻く社会構造や世界情勢の”小さな切れ端”に好奇心が動くようになってきました。

2018年。

東京のファストフード店やコンビニエンスストアは多くの外国人労働者によって成り立っているようです。10年前の大阪と違って中国だけでなくベトナムやネパールなど多種多様なルーツを持った人たちも目立っているような…。

 

様々な媒体でも、日本の仕事を支える「外国人留学生」や「外国人技能実習生」についての報道をよく見かけるようになりました。労働時間や労働環境の問題、そして農業や漁業、建築現場といった過酷な仕事の人材をどう確保すべきなのか、こうしたテーマと合わせて論じられています。

“年末年始も含め、365日、24時間営業を続けるコンビニ。日本フランチャイズチェーン協会によると、店舗数は2017年11月現在で5万5374軒、5年前と比べても約8500軒増えた(18%増)。だが、少子化などの影響もあって、思うようにスタッフを確保できていないようだ。”(弁護士ドットコム

“日本語学校や専門学校、大学などが集中する新宿区が23区内で最も外国人の新成人が多く、およそ1790人。新成人の45.7%が外国人だという。新成人の半数近くが外国人と聞くと耳を疑うが、もはやそれが現実なのだ。次いで豊島区が1200人で38.3%、中野区が860人で27.0%だったと報じられた。成人式に振袖姿で参加する外国人の姿も珍しくなくなってきた。”(日経ビジネスOnline

複雑で見えづらい変化が現実の社会でじわじわと進行しているのかもしれません。

 

さて、今回取材をさせていただくことになったのは、日本で学ぶ若い外国人留学生たち。訪れたのは千葉県松戸市の新松戸駅です。外国人が多く住む土地で、特にベトナム人は2000人を超えるとか。

そんな新松戸駅近くで1989年から外国人留学生向けに運営されているのが「KEN日本語学院」。ここ10年間で日本全国に200校も日本語学校が増えたと言われていますが、その中では老舗といってもいい学校です。

 

なぜ世界各地から日本へと若者たちが集まっているのか?3名の外国人留学生に直接取材させていただくことになりました。

  • 彼/彼女たちはなぜ日本に来ることを選んだの?
  • 日本のアルバイトって難しくない?そもそも楽しいの?
  • 外国人労働者問題の根っこには何があるの?

などなど、気になっていることを全部聞いてみようと思います。

 

※本文では流暢な日本語になっていますが、日本語力は一人一人レベルの差もありました。来日してから一番長く時間が経っているゴウさんが一番コミュニケーションを取りやすかった印象です。

 

 

何のバイトをしてるの?

左からゴウさん(ベトナム)、ウダワルさん(モンゴル)、ヴァンダリさん(ネパール)

 

――皆さん、本日はよろしくお願いします。日本に来ることを決めた理由から聞かせていただいてもいいですか?

ウダワル: 私の兄さんは千葉で建設会社の通訳をしています。モンゴルの大学を卒業したことをきっかけに、兄さんを頼って日本に来ました。この学校で日本語を学んで、将来は日本の大学へ進みたいです。日本語の教師になりたいんです。

ーー元々、日本に縁があったんですね。

ウダワル: まだ日本に来て3カ月ですが、九州の大分旅行で見た自然の豊かさに感動しました。電車から見た風景が忘れられません。母国は日本ほど自然があるわけではないので…。日本で得た経験を母国に持ち帰って、子どもたちに日本語を教えるのが将来の夢です。

――3ヶ月とは思えない日本語力ですね。たしかにモンゴルの首都ウランバートルは灰色っぽいイメージがあります。大相撲の影響もありますか?

ウダワル: もちろんです。

 

――ちなみに日馬富士の件についてはどう思いますか?

ウダワル:えっと、残念です…。

――ですよね…。すみません。続いてベトナム出身のゴウさん。なぜ日本を選んだんですか?

ゴウ:私の叔父がベトナムで医療機器をつくる会社を経営していて、日本にも輸出しています。将来この仕事を手伝うために、高校卒業後の進路として日本にやってきました。日本に来る前にハノイにある日本語センターで6ヶ月間勉強しました。

――なるほど。将来の仕事で日本語が必要だから。

 

ゴウ:最近ベトナムと日本は仲がいいです。将来的には日本の子ども向けの薬を輸入して、ベトナムの子どもたちに届けたいです。

――立派だなぁ。最後にネパール出身のヴァンダリさん。アウトローな雰囲気もあるしかっこいいですね。

ヴァンダリ:私は日本でITエンジニアになりたいです。ネパールのカトマンズにある日本語学校で3カ月間日本語を習ってそのあと日本にやってきました。カトマンズで習ったのは平仮名だけです。

――最近は日本にやってくるネパール人も多いですよね。インド料理屋で働いている方を見かけることも多いですが、最初からITエンジニア目的なんですね。日本は好きですか?

 

ヴァンダリ:日本のいいところはいっぱいあります。ネパールではお酒もタバコも何歳になってもダメ。日本は大丈夫(笑)。

――そこなんだ!ちなみにどんなタバコとお酒が好きなんですか?

ヴァンダリ:最初は「わかば」を吸ってました。今は「メビウス 3mmボックス」。お酒は「アサヒビール」が好きです。

――なんだか日本人のサラリーマンと変わらない趣向でいいですね。そして「3mmボックス」の発音がかっこいい。

ヴァンダリ:(フッ…)。

 

 

日本でのアルバイト生活について

――皆さん、日本ではどんなアルバイトをしているんですか?バイト先を選んだ理由や働いている環境についても教えてください。

ウダワル:私は兄さんの友だちが元々働いていた縁もあって、彼と同じファミリーマートで働いています。昼の時間帯中心に週3回ほど。時給は950円です。

――まだ日本に来て3カ月ですよね。働いてみてどうですか?

ウダワル:コンビニで働くのはとても楽しいです!店長も優しいし、同僚も優しく接してくれています。それに家から徒歩1分なのもうれしいです。

――ファミリーマートの人が喜びそうなリアクション!実務的には難しくないですか?日本人目線で見ても覚えるべき仕事が年々増えているような…。

ウダワル:もちろん最初は大変でした。日本語がまだまだわからないので…。お客さんの日本語を聞き取るのが大変です。特におじさんの声が聞き取りづらいことがあってちょっと怖いです。タバコの名前がわからない時とか…。

――あー、はいはい。私もバイト時代の天敵は「クセの強いおじさん」だったのでわかります。番号でタバコの銘柄を指定できるようになっていても、おじさんは「メビウス!」みたいな感じで注文しますもんね。

ウダワル:そうですね。先輩や同僚から習うことも多いですが、日本語を使ってお客さんと話をすることで色々習うことができます。倉庫でのアルバイトをすることもあるのですが、コンビニの方が日本語で接客をするので楽しいです。特にレジが大好きです(笑)。

 

――コンビニで働くことが日本語を学ぶことにつながる、と。言われてみたら納得ですけど、直接話を聞かないとわからないもんですね。ゴウさん、ヴァンダリさんもコンビニですか?

ゴウ:ローソンです。

ヴァンダリ:ローソンです。

――3人ともコンビニ!ゴウさんは日本歴2年ですよね。ずっとローソンで働いているんですか?

ゴウ:そうです。私も楽しく働いていますが、やはり接客が一番難しいですね。

 

外国人留学生は、Facebookグループ上で展開されるアルバイト求人情報を頼りにしている。こちらはベトナム人向けのグループ。

 

――これまでコンビニで働いてみて、印象深いエピソードはありますか?

ゴウ:2つあります。ひとつはクーポン券の対応です。ローソンには「でか焼鳥・もも塩」という商品があるんですが、一時期50円割引のクーポンを配っていました。有効期限の最後の日におじさんのお客さんがクーポンを持ってきたんですが、すでにその日の分の「もも塩」が売り切れてしまっていて「なぜないの」と怒られてしまいました。どんな風に答えていいかわからず「ごめんなさい」と謝りました…。

あと、おにぎり販売コーナーの前でおじさんに「”いくら”ないの?」と聞かれたのですが、値段のことかと思って「値段はここに書いています」と返してしまったりとか、おでんのスープをどれだけ入れるか聞いたときの「いっぱいで」がたくさんという意味ではなく、一杯だったりとか…ホント難しい…。

――おじさんが起点になりがち…。話を聞いてると、日本人のスタッフでも対応に苦慮するケースがありそうですけどね。

ゴウ:基本は慣れるしかないと思っています。それも勉強ですし、クレーム対応から接客業を学べますから。ただ、一度すごく嫌なことがありました…。

――なんでしょうか?

 

ゴウ:ある若い人が僕に向かって「あ、あの人外人だ」と言ってきたことがあります。しかも、その時はまだ私の日本語があまりうまくなかったんですが、その人が自分の喋り方を真似して…。とても嫌でした。

――そんなことが…。

ヴァンダリ:私もこんなことがありました。30歳くらいの男性のお客さんがカップラーメン5個とお弁当を1個買いました。私がレジをしたのですが「お弁当を温めますか」と聞くのを忘れてしまったんです。すると、私の隣のレジにいたネパール人のアルバイトに向かって彼は割り箸を6本全て投げつけました…。

――なんと…。職場にはネパール人の同僚も多いですか?

 

ヴァンダリ:お店にはネパール人が全体で14人いて、日本人の店長の下で働いています。1日4人ぐらいはネパール人が出勤しています。

――え、14人も。でも、同じ国の人を集めた方が、教育がやりやすいのかもしれないですね。

ヴァンダリ:教育…そうですね。僕が日本人の後輩アルバイトに教えることもありますし。働いているローソンが大きいお店なので、ネパール人含めてそれぐらい人数が必要みたいです。

――ヴァンダリさんも昼の時間帯に働いているんですか?

ヴァンダリ:いえ、夜勤です。週に3回、22時から朝までです。

――それは大変ですね…。学校は何時から始まるんですか?

 

ネルソンさん。カメルーン出身。KEN日本語学院の卒業生で現在はKEN日本語学院の職員として働いている。取材に同席してくださった。

 

ネルソン:午前の部は9時から12時50分、午後の部は13時10分から17時までです。週5回です。

―――夜勤明けの学校は大変ですね…。皆さん家はどうしているんでしょうか?

ゴウ:学校の寮に住んでいます。4人で一部屋です。

ヴァンダリ:私もです。ここから歩いて10分くらいです。

ネルソン:KENの300人ほどの学生のうち100人くらいが寮に入っています。ネパール人同士、ベトナム人同士同じ部屋になります。寮に住んでいると学校を急に休んだりした時に訪問しやすいなどの利点があります。

――寮だと家賃も安くなるのでしょうか?

ヴァンダリ:1人2.5万円です。お金の使い道は家賃、学費、携帯、電車、それとたまにタバコとお酒(笑)。学費の半分、年間約20万円分はネパールの家族が払ってくれています。

 

ネパール人向けのアルバイト情報がシェアされるFacebookページ。

 

――10万円前後のバイト代で賄うにはギリギリですね。この学校のほかの学生さんたちもコンビニで働いている人が多いですか?

ゴウ:日本語ができない学生はほとんどが工場で働いています。新聞配達で働いている友達もいます。あとは居酒屋とかレストランとかです。

ネルソン:この学校の生徒で工場など日本語が必要ないアルバイトで働いている学生は100人くらいいると思います。職場は千葉県が中心です。全ての学生が働いているわけではありません。一度働いて諦めてしまう人も結構います。

ゴウ:夜勤の仕事と昼の学校を両立するのが大変だから諦める人もいます。自分は昼の時間だけ働いています。学校の午前の部が終わってからすぐにコンビニに行って21時までです。

――なるほど、接客があるアルバイトかどうかで日本語力の差が関わってくる、そして夜勤バイトの厳しさもありますね…。ネルソンさんがKEN日本語学院で学生だった頃との違いはありますか?

ネルソン:自分もバイトしていました。2011年くらいです。今と違って簡単に見つけられる状態ではありませんでした。特にアフリカ出身だったので周りに友達もいません。日本に来て8ヶ月くらい経ってから工場で自転車をバラす仕事を見つけました。今の方が当時よりたくさん仕事があると思います。

 

 

その後もいくつか質問を投げてみたものの、やはり言葉の壁もあってもう少し踏み込んだ話は聞けませんでした。

ただ、彼らが共通して考えているのは「コンビニでのバイトは楽しい」「接客業を介して日本語を学んでいる」ということ。企業側の働きかけももちろんあるんでしょうが、日本語学校に通いながら、学校の外でも日本語が学べるアルバイトとして認識しているようです。労働力不足や外国人差別など社会的な問題に関わるテーマも言葉の端々に透けて見えました。

ここから先の疑問は、KEN日本語学院の石井先生に尋ねてみようと思います。

 

 

社会的な背景について先生に話を聞いてみた

石井勝さん。KEN日本語学院で事務局長を務めている。

 

――石井先生、よろしくお願いします。話を聞いた3人ともコンビニでアルバイトをしていました。日本にはもはや外国人留学生の労働力がなければ事業を維持できない企業も多いということなのでしょうか?

石井先生:アルバイトに関して言うと、ネルソンさんの頃に比べて今の方が数はだいぶ多くなっています。学校としても学生に対してアルバイトを紹介するのですが、以前はこちらから企業に出向いて「採用してくれませんか」と言っていたのが、現在ではむしろ企業の方から外国人を求めるように変わっています。

ただし、そのアルバイト先というのが日本語を必要としないところが多い。外国人の先輩たちが職場にいることで母国語と日本語との間をつなぐこともあります。関東近郊には、企業がアルバイトを募集しても日本人からの応募が全然来ない運送業やコンビニ弁当の工場、冷凍食品の加工工場などが数多くあります。労働者のほぼ全てを外国人のアルバイトが担っているところも多いのではないかと思います。

 

――そこでの外国人の方達というのはいわゆる「技能実習生」ではなくてあくまで「留学生」ということですよね?

石井先生:はいそうです。留学生のアルバイトだと「週28時間までしか働いてはいけない」という決まりがあるため、企業としてはその分人数を確保しないといけない。だから募集するアルバイトの数も多くなります。ローテーションで現場を回していく必要があるためですね。

日本語を必要としない職場で働いていると、当然ながら日本語も伸びづらい。アルバイト先での日本人とのコミュニケーションが日本語力を高める一番の機会でもあるなかで、日本語ができなくてもアルバイトができてしまうという環境があります。

――3人の生徒さんの話を聞いていて、留学生にとっての本来の目的である「学ぶ時間」と生活費を稼ぐための「働く時間」とのバランスに苦慮している印象も受けました。

石井先生:まずお金の面ですが、生活費はバイトで賄いつつ、学費は母国の両親が払うというパターンもあります。ただその場合でも学費の全てをカバーしてもらえるわけではないことも多いです。

 

また、KEN日本語学院の授業は午前の部と午後の部に分かれていますが、日本語のレベルが上がったり下がったりすると定期的にクラスが変わります。すると、授業の時間帯が変わってアルバイトの時間との調整が難しくなることもある。できるだけ調整をするけれども、どうしても難しければ学業優先でバイトを変えざるを得ません。

私たちも生徒がアルバイトをしている企業に直接出向いていって「学校の遅刻が増えたり、アルバイトの無断欠勤があったりしたらお互い連携しましょう」というようなことをやっています。また、生徒がアルバイトを変える際には、ダブル、トリプルの掛け持ちになって28時間を越えてしまわないように、学校として以前の職場に「やめていますか」と聞くようにしています。

 

KEN日本語学院の主な出身国データ(2016年7月時点) 。ベトナム人が最も多い。(日本語教育振興協会のウェブサイトより引用)

 

――日本語学校が担っている役割として、親御さんというか、保護者的な側面もありそうですよね。

石井先生:そうですね。生活マナーや法律、また日本で生活するためのルールなど、あらゆる面で教えなければいけません。ルールというのは、例えばゴミ出しの仕方であったり、騒音であったり。夜中アルバイトからアパートに帰ってきて昼間のようにドタドタ歩くというのはやっぱりまずいです。自転車の乗り方もそう。警察の方も交えて講習会をやったりもしていますよ。

――最近はどんな心配事がありますか?

石井先生:やはり外国人留学生が犯罪に巻き込まれる事例については常に気を配っています。学校の学生同士というよりは、外部のコミュニティで母国の人間と知り合っていつの間にか巻き込まれているというケースもあります。中身を知らないまま怪しい荷物の引き渡しバイトを受けてしまったり、オレオレ詐欺の「出し子」といわれるATMで現金を下ろす役割をさせてられていたりとか。知らなくても当然共犯になってしまいます。日本語学校の協会での勉強会などで、政府とも連携しながら日々対策を考えています。

 

――うーん。二十歳そこそこの学生たちが、異国の地で色々な壁にぶつかっているわけですね…。ほかにも彼らにとって複雑な課題はあるのでしょうか?

石井先生:留学から就労に関するビザへの切り替えですね。勉強してきたことに直結する仕事に就かないとビザが取れません。ITを勉強していたからIT系の仕事をしていくといった意味です。まず、企業の内定を取って、それから入管にビザを申請します。そのときに全員がビザを取れるわけではありません。過去の経緯が見られます。例えば、学校にきちんと通っていたのか、アルバイトを28時間以上やっていなかったか。せっかく企業から就職の内定をもらっていても、ここではじかれてしまうと就職できません。

28時間以上アルバイトをしてその時だけいい思いをしても、後で自分に跳ね返ってきてしまう、そういう話を生徒たちにはいつもしています。ただ、先輩や周りの人間から別の情報も入ってきて、そっちを本気にしてしまうということもあり得ます。

――どの環境、どのコミュニティにいるかで意識が変わってくるんですね。さっきもFacebookのグループを見せてもらいました。

石井先生:やはりどこから情報を取ってくるのかということが重要ですね。進学もそうです。先輩たちから「この学校に入れた」という情報が入ってくる、それを鵜呑みにして「入れる入れる」と思っていると簡単に落ちてしまったり。そういうこともありますよ。

 

校内に掲示されている進路先の情報

 

――日本語学校としてのビジネス面も考えつつ、しっかりと教育に時間を割きながら、保護者的な役割も果たしつつ、変化する国の施策に合わせた理解と行動も求められる。こんなこと言ってはなんですが、とてつもなく大変な仕事ですね。

石井先生:教育という仕事なので、ものを売るのとは違います。人を育てる仕事です。ただ、教育は教育でもその周りで色々なことも起こります。100円、200円のものを万引きして捕まったというような話も当然過去にありました。経済的な理由、例えばお父さんが亡くなってしまったというような理由で帰国せざるを得なくなったという子たちもいました。生徒自身も私たちにとっても、卒業まで苦労した子というのはなおさら思い出に残っていて。そんな生徒たちから卒業式で「ありがとう」と言われたときにはやっぱり「ああ良かったな」という喜びがありますよ。

 


Credit

徳谷柿次郎|取材・執筆
望月優大|取材・編集

TEXT BY KAKIJIRO TOKUTANI

徳谷柿次郎
編集者 / 株式会社Huuuu代表取締役

大阪府出身。どこでも地元メディア「ジモコロ」、小さな声を届けるWEBマガジン「BAMP」の編集長。全国47都道府県のローカル領域を編集しつつ、温泉&スパイスカレー&コーヒーを日々摂取している。Twitter @kakijiro