活動レポート

支援の限界と現実に向かってー難民支援のいま

今週から、東京でも寒波が強くなりました。引き続き、来訪される難民の方々からの相談は絶えることがありません。最大限できる支援を届けるべく、私たちは日々奔走しています。

支援を提供するには、スタッフによる聞き取りやニーズの把握が必要です。JARでは、まず難民認定申請の意思を確認し、申請手続きの説明から緊急支援が始まります。オーバーステイ(超過滞在)にならないように在留資格の期限を確認し、その期間内に難民手続きを済ませられるようお手伝いします。難民申請書作成のサポートに加えて、難民申請書提出のために出向く品川入管までの交通費や在留資格変更手数料などの費用を負担することもあります。

入国時に15日間の短期滞在の在留資格を付与される方が多く、JAR来訪時には滞在期間が数日しか残っていない方もいます。在留資格を失ってしまうと、難民申請後、就労許可を得ることができない、健康保険に入ることができない、住民登録をすることができないなど、多くの制度的な困難に直面します。支援の優先順位をつけざるを得ないなかで、こういったケースを見逃さないよう、常に一人ひとりの状況をしっかりと把握し、対応しています。

同時に、その日泊るところがない、食事が十分に取れていないなど、日々の生活に関する緊急ニーズにも対応しなくてはいけません。難民申請者向けの公的な生活支援金「保護費」がありますが、難民申請書を提出する入管の窓口で、こういった情報が提供されることはほとんどありません。

JARでは、まず難民申請の手続きが終わった方に、一から「保護費」の説明をし、申請のサポートをします。難民申請者本人が、保護費支給を担当している「難民事業本部(RHQ)」に電話をし、難民申請を済ませたこと、生活が困窮していることを訴えて支援を求めるのですが、この手続きがなかなか進みません。申請から面談を経て実際に保護費が支給されるまで数か月かかります。申請者全員が受給できるわけでもありません。最近では、2か月以上野宿生活を続け回答を待っていたにもかかわらず、電話口で保護費支給は「不許可」と言われたケースが10件ほど続きました。迫害から命を守るために逃れてきた方々が、日本で暮らしていくことの厳しさに直面しています1

難民の方からの衣食住すべての要望に応えることは難しく、住まいについては女性と子どもへなど脆弱性の高い方を優先せざるを得ないのが現実です。現在、母子、家族世帯、妊婦の方を含む約50人にシェルターや宿泊先の確保していますが、それでも支援が追いつかず、一部の方は野宿を余儀なくされている状況です。私たちJARが把握するだけでも、この1か月で15人以上の方が野宿を経験しています。宿泊先を提供できない場合でも、シャワー代や洗濯代を含む生活費、食料を支給することで、少しでも支えとなるよう努めています。来日後の不安定な生活、先が見えない不安で体調を崩す方が後を絶ちません。先日も、高血圧や喘息で悩む方のクリニック受診を手配しました。慢性疾患の治療や精神科の受診を希望される方も多くいます。

医療支援においては、昨年同様、「無料低額診療事業」2を実施する病院で、医療保険も公的支援も得られていない難民の方たちを多数診察していただきました。しかし、慢性疾患や重い感染症、メンタルヘルスケアなどは同事業の対象にはなりにくく、支援なしには治療を継続できない方たちも多い現状にあります。また、保護費の支給を長期待ち続けている間に体調を崩す方が増えています。出国時に持参した持病の薬が尽きてしまった方もおられます。そうした方々に、事務所近くの薬局で市販薬を購入したり、内科クリニックでの診察を手配し、処方薬を手に入れたりすることなど行っています。

申請者数の増加と保護費を得るまでの待機期間が長期化する中、JARの支援活動は限界に近い状態です。以前にもまして、ほかの難民支援団体、生活困窮者支援団体、宗教施設などさまざまな方々と連携しながら難民の方々を支えています。来訪者の人数が増えているだけでなく、抱えるニーズは多様で多岐にわたりますが、一人でも多くの難民を支えるべく、日々取り組んでいます。

難民の方々が安心して年を越せ、日本で暮らせるよう、お力添えをお願いいたします。

  1. 「保護費」をめぐる現状と課題については、解説記事を参照ください。
    『難民申請者はどう生きてゆくのか?―公的支援「保護費」の課題と生存権』2024年10月18日更新 https://www.refugee.or.jp/report/refugee/2023/10/hogohi/[]
  2. 無料低額診療とは、医療や介護が必要であるにもかかわらず、支払いが困難な方に対し、医療機関が医療費等の減額や免除を行う社会福祉法第2条に基づく事業です。参考:厚生労働省「無料低額診療事業について」https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0121-7d.pdf[]