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「第三国定住」について

新たなかたちの難民受け入れが、日本で行われています。

アジアで初めての試み*である第三国定住による難民の受け入れが、2010年より始まりました。現在、多くの外国籍の人たちが暮らす日本社会において、多様な背景を持つ人びとと共に生きるという視点は、ますます重要になってきます。この第三国定住における課題を切り口に、日本における難民受け入れの課題はなにか、従来の難民受け入れとの違いはなにかなど、難民支援協会(JAR)の取り組みとともにお伝えします。

* UNHCRと連携した実施国として。

目次

  1. 「第三国定住」とは?
  2. 従来の難民受け入れ
  3. 新たな展開−2010年、第三国定住受け入れ開始
  4. 定住までのプロセス
  5. 意義と課題
  6. NPOの取り組み−政策立案への参画、有識者会議の開始
  7. (参考)第三国定住に関する政府発表
  8. (参考)JARの取り組み

1. 「第三国定住」とは?

図:第三国定住とは

第三国定住とは、すでに母国を逃れて難民となっているが、一次避難国では保護を受けられない人を他国(第三国)が受け入れる制度です。難民は、避難先の国から第三国に移動することにより、保護を受けることができ、長期的に定住することが可能になります。

※左図ではメラ難民キャンプと記載されていますが、今後の受け入れより候補地として、ヌポ・キャンプおよびウンピアム・キャンプが追加されます(後述)。

2. 従来の難民受け入れ

従来日本が受け入れてきた難民は、大きく二つのグループがあります。1981年に加入した難民条約に基づく難民(条約難民)と、政治的措置により受け入れたインドシナ難民です。

【条約難民】 
難民条約により定義された難民。難民条約では、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという、十分に理由のある恐怖があるために国籍国の外にいる人で、国籍国の保護を受けられない人、または保護を望まない人」と定義。

【インドシナ難民】 
ベトナム戦争により母国を脱出し難民となった人々。加えて、ラオス・カンボジアからの難民も含む。1975年に初めてボートピープルが日本上陸。当時、難民条約未加入であった日本は、政治的措置としてインドシナ難民の一時滞在を認め、その後閣議了解により受け入れを決めた。

3. 新たな展開−2010年、第三国定住受け入れ開始

上記とは異なる新しい制度での受け入れである第三国定住は、日本では2010年より始まりました。

当初3年間はパイロット期間として、母国ミャンマーを脱出し、タイのメラ難民キャンプに避難していた少数民族カレン民族の難民を対象とし、合計90名を目標としました。ただし、2012年3月に、当初3年間のパイロット期間を2年間延長し、対象キャンプをヌポ・キャンプおよびウンピアム・キャンプ(いずれもタイ国内、カレン民族中心)に広げることが決定されました。

日本で受け入れる第三国定住難民は、難民キャンプにて日本語などの出国前研修を受けた上で、来日後の研修を経て、日本社会への定住へとすすみます。難民に取ってだけでなく、これまで難民受け入れ数が少なく、国際的に批判されてきた日本にとっても、非常に重要な取り組みと言えます。

4. 定住までのプロセス

図:定住までのプロセス
初年度のプロセス

第三国定住による難民が日本に定住するまでには、以下のようなプロセスを経ます。

1. 選考〜出国前研修

まずは、避難先であるタイの難民キャンプにて来日希望者をつのり、選考をします。来日が決まった人たちは、簡単な日本語や日本での生活について、出国前の約1ヶ月間、研修を受けます(これまでの研修は、日本政府の委託により、国際移住機関(IOM)が実施しています)。

2. 来日〜施設での定住支援

来日後は、東京都内にある施設で約半年間、約430時間の日本語教育、生活に関する研修、職業紹介に関する支援を受け、定住への準備を進めます(これまでは、外郭団体であるアジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)に委託されています)。

3. 職場適応訓練〜地域社会への定住

そして、施設を出て、半年間の定住先候補地の事業所における職場適応訓練を経て、地域社会への定住という流れになります。

※上記および左図は、2010年に来日した第1陣のスケジュールです。ただし、第2陣以降も概ね同じステップで研修などが実施されています。

しかし、半年の研修だけでは、すぐに日本で暮らしていけるようになるわけではありません。難民の定住においては、地域の人たちが、学校や、職場など、それぞれの生活の場で、難民の生活を支え、また、彼らと交流をし、ともに新たな地域社会を築き上げていく姿勢が大切です。

5. 意義と課題

第三国定住は、保護を必要としている難民への解決策として有効であるという視点から、JARは、今回の受入を歓迎しています。(2008年12月2010年9月の声明)

しかし、日本社会で難民が自立して暮らしていくためには、多くの課題があります。実際、第1陣の受け入れに際しては、当初半年間の研修以降の、日本語教育を含む継続的なサポートが不十分であったことから、一部家族の定着には時間を要しています。

JARとしては、日本の第三国定住受け入れに関して、主に以下の3点を、課題として考えています。
(加えて、すでに日本にいる難民(条約難民)の状況・受け入れ制度の改善が必要とも考えています。)

  1. 政策決定において、理念やゴール設定が不明確であること。将来、難民を受け入れてどのような日本社会となることを目指すのか、最終的にどのような規模で難民を受け入れるのか、など、理念やゴール設定が不明確である。そのため、「パイロット」の評価基準がなく、今後の受け入れ体制の改善に向けた評価をできない。
  2. 政策決定において、各ステークホルダーの関与がないこと。今回の受け入れは、その決定過程が、すべて政府内の議論に終始している。受け入れのゴールを設定するためにも、自治体、難民コミュニティ、NPOなど、各ステークホルダーを関与させること、その知見を生かし、地域住民や難民自身に有効な施策を構築することが重要である。
  3. 受け入れの体制・内容が不十分であること。当初6ヶ月間はある程度の研修が行われるが、地域での就労期間に入った後は、難民の定住のための支援が大幅に縮小してしまい、支援を引き継ぐべき自治体や雇用主への事前のサポートも不十分であった。その結果、難民が地域での定住に多大な苦労を強いられ、地域コミュニティやNPOなどの難民受け入れ側にも負担が発生した。

6. NPOの取り組み−政策立案への参画、有識者会議の開始

上記課題認識は、「なんみんフォーラム」(FRJ。難民支援NPOのアンブレラ組織)としてNPOが共同で、2012年1月に実施された内閣官房との意見交換会において表明しました*。

* 詳細はこちら。また、発表資料(抜粋)はこちら。

FRJからの発表においては今後の取り組みへの提言も行いましたが、最も強調したのは、理念・ゴール設定も含めて官民連携での包括的な協議を行うことの必要性です。具体的には、政府・議員・自治体・難民自身・NPOなどによる「円卓会議」を設定し、政策立案を行うことです。このようなNPO側からの提案もあり、2012年4月より、「第三国定住に関する有識者会議」が始まりました。

この有識者会議においては、約1年をかけ、受け入れ体制など今後の方針を検討するとされています。JARからは、常任理事の石井宏明が会議メンバーとして選定されています。

なお、有識者会議設置と併せて、パイロット期間の2年間の延長、対象キャンプの追加、および受け入れ制度の一部改善(継続的な日本語教育、地域定住支援員の設置など)も表明されました*。

* 下記7.(参考)の2012年3月29日付け閣議了解改正を参照ください。

7. (参考)第三国定住に関する政府発表

8. (参考)JARの取り組み

第三国定住受け入れを背景に、日本の難民受け入れの現状や課題について理解し、議論する場を作ってきました。日ごろからJARが取り組んできた活動も合わせて紹介します。

■オープンな議論/市民への情報発信


■海外の実践を学ぶ
JARでは、海外の成功事例を参考に、難民保護がより前進するよう情報発信や政策提言に努めてきました。


■その他、難民への個別支援を行っています。
第三国定住難民だけでなく、条約難民(申請者を含む)も含め、法的側面や生活面、そして経済的自立に向けた課題が多く残っています。これら、一人一人の難民が直面する課題に対して、政策提言だけでなく、個別支援を実施しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

(2012年6月12日掲載)