活動レポート : 医食住
[冬の寄付:報告]あるビルマ難民家族の話-失業中の夫と、妊娠中の妻からの相談
最近の現場の様子をご報告します。
昨年秋ごろ、ミャンマー(ビルマ)の少数民族出身の夫婦が来訪しました。
妻は妊娠中。夫は失業中。来日して5年ほどだと言います。
「夫が失業し、日々の生活のめどが立たない。でも、これから妻は出産を迎える。どうしたらいいかわからない」と、生活支援スタッフは相談を受けました。
まずは「今」を乗り切る
なかなか厳しい状況です。
今回は、まず、「今」を乗り切るために、日々の生活費を数日分支援することを決めました。もちろん、すぐに「お金」の支援をするわけではなく、だれか頼れる友人がいないか、自力でもう少しなんとかならないかなど、まずは話を聞きます。
今回の夫婦は、すでに同胞の友人たちに助けられ、なんとか今日までやってきました。しかし、友人たちも決して楽ではない中、これ以上は頼めないということで、JARに助けを求めにきたと、事情を話してくれました。
妻の出産はどう乗り越える?
次に、妻の出産をどう迎えるかが問題です。
実は、日本には、経済な理由で出産費用が賄えない妊婦を助ける制度「入院助産制度」があります。この制度は、自治体が指定する助産施設(病院、助産院)で出産し、そのを費用を自治体が援助してくれるというものです。
ただ、制度があっても、知らなければ、利用できません。また、どこかに告知されていても、それが日本語であれば、多くの難民の方は読むことができません。
今回も、制度を紹介するだけにとどまらず、生活支援スタッフは、妻が安心して出産できるよう、受け入れてくれる病院や役所の間に入り、調整をしました。
難民支援の専門家としてのスタッフの役割
このように、生活支援スタッフには、難民が利用できる医療や保健の制度の知識が求められます。あまり多くの利用者がいない制度の場合は、その存在を知らない病院や役所の窓口の方もいます。その際は、逆に、スタッフが正しい知識を持って、それを伝え、難民の受け入れを理解していただくよう、働きかけることも重要な仕事です。
さらに重要なのは、難民としての状況や文化的・宗教的などにも配慮することです。「難民」としての立場が漏えいしないか心配する人や、女性の医師でないと肌に触れられないなどの事情を抱える人もいます。
JARスタッフだけでは、難民を支えることはできませんが、社会にある様々なリソースを使えば、なんとかなることもあります。
私たちが病気になれば医者にかかるように、難民も、難民のことをよく知る専門家に相談したいはず。現場スタッフは、日々の難民とのやりとりの中で、信頼関係を築きながら、そんな難民たちの期待に沿えるよう、日々尽力しています。
相談を受けてから半年弱。その後、妻は無事元気な子を出産しました。夫は、ビルマネットワークをなんとか駆使して、飲食店での仕事を見つけ、今は、家族3人で、自力で生活を送っています。
皆さまのご寄附は、今回のケースのように、難民の自立に向けたプロセスの中で、活かされています。
ご寄附はこちらから。
(写真)ある難民からの手紙
*本文のケースとは別の方です。
(2012年2月1日掲載)
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