解説記事・声明等

11月27日付けアフガニスタン難民申請者の退去強制令書発付に関する難民支援協会の声明

    関連文書:
    アフガニスタン人難民申請者の収容に対する声明の発表について」(2001年10月9日)
    みなさま、ありがとうございました。」(2001年11月9日)
    今回の全員の仮放免を歓迎します。」(2002年4月26日)

    2001年11月27日

    本日11月27日に、東京入国管理局第二庁舎(十条・東京都)に収容されているアフガニスタン難民申請者4名に対して退去強制令書(※1)が発付され、東日本入国管理センター(牛久・茨城県)へ移送されることとなりました。
    難民支援協会では以上の状況を重くとらえ、以下の通り声明を発表致します。

    収容が継続することによる深刻な影響が懸念されます。

    11月14日東京入国管理局第二庁舎に収容中のアフガニスタン難民申請者が自殺未遂を起こした、と報じられています。また11月9日に放免された5名のアフガニスタン難民申請者も精神科医によってATSD(急性心的外傷性ストレス障害=PTSDの前段階であり、精神的な傷が現在も進行中である。)があると診断されています。これ以上の収容が継続することによる被収容者への深刻な影響は図り知れません。

    地位が確定する前の退去強制令書の発付によって難民認定における適正手続が保障されないおそれがあります。

    難民認定がたとえ不認定となっても、その決定に対し異議の申出を行い、再度の審査を受ける権利が日本の難民認定手続では保証されています(※2)。難民認定手続の終了を待たずして退去強制令書を発付することは難民認定が保障している適正手続を侵害しかねません。また、迫害の待ちうける祖国への送還を前提とした退去強制令書の発付は日本も加入している難民条約の根幹である「ノン・ルフールマン(非送還)の原則(※3)」にも抵触しかねません。

    アフガニスタンへの送還に関して安全性の確保はできるのでしょうか?

    連日報じられるアフガニスタンの状況は流動的であり、決して安定しているとは言いきれません。11月26日にもパキスタン国境へ国内の戦闘等の影響等で6万人の難民が押し寄せていると報じられています。また、昨日までパキスタンの難民キャンプに訪れた田中外務大臣は、難民をアフガニスタンへ即刻送り返すのではなく、パキスタンの難民キャンプへの支援を約束しています。
    その中で、アフガニスタンの外で保護されるべき「難民」を認識しておきながら、一方でその国へ送り返すという姿勢にはあまりに大きな隔たりがあります。
    一刻も早く収容されたアフガニスタン難民申請者が放免され、二度とこのような事件が繰り返されないよう、必要な措置がとられることを切に願うものです。
    ※1 退去強制令書の中の送還先として「アフガニスタン」が指定されていたかどうかは11月27日(火)22:00現在正式には確認されておりません。しかし、これまでの実務よりアフガニスタンであるとの可能性が高いため、上記のように想定しております。
    ※2 出入国管理及び難民認定法第61条の2の4:次に掲げる処分に不服がある外国人は、それぞれの通知を受けた日から7日以内に、法務省令で定める手続により、不服の理由を記載した書面を提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる。この場合には、行政不服審査法による不服申立てをすることができない。

    1. 難民の認定をしない処分
    2. 第61条の2の2第1項の規定による難民の認定の取消し

    ※3 難民条約第33条1項:締約国は、難民を、いかなる方法によっても、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない
    (以上)