第5次出入国管理基本計画(案)へのパブリックコメントを提出しました

難民支援協会(JAR)は第5次出入国管理基本計画(案)に関するパブリックコメントの募集に対して、コメントを提出しました。パブリックコメントは、国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図ることを目的としています。下記を含めた民間からの意見が適切に反映された基本計画案になることを切に希望します。

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PDFファイル(第5次出入国管理基本計画(案)に対するパブリックコメント)

「第 5 次出入国管理基本計画(案)」に対するパブリックコメント

特定非営利活動法人難民支援協会は、「難民が、日本で、自立した生活を安心して送れるよう支援する」という使命をもって、日本に逃れてきた難民に対する総合的支援を行っているNPOです。1999年の設立以来、国連難民高等弁務官事務所(以下「UNHCR」)の事業実施パートナーとして、法的支援、生活支援、そして定住支援という包括的な難民支援を行ってきました。これまでの支援を提供した人数は4800人を超えています。支援における経験に基づき、より良い難民保護制度の実現に向けて、意見を以下に述べることとします。

難民条約の採択60周年であると同時に日本が難民条約に加入して30周年という節目となった2011年、衆参両議院において「難民保護の国際法、及び国際的基本理念を尊重し、日本は国際的組織や難民を支援する市民団体との連携を強化しつつ、国内における包括的な庇護制度の確立、第三国定住プログラムのさらなる充実に向けて邁進する」という内容の決議が全会一致で議決されました。このような難民保護に対する国を挙げた取り組みを宣言する決議が国会でなされることは世界的にみても珍しく、国会レベルにおける難民問題への意識の高まり、難民保護に対する日本のリーダーシップや法制度の拡充が期待されるとして、支援機関・支援者は大きな期待を抱きました。この議決後の初めての難民に関する基本方針が、この度の第5次出入国管理基本計画でした。
しかし、残念なことに、日本の難民の置かれる状況は、改善に向かうというより、難民認定数、偽装・濫用等管理の側面ばかりが強調され、難民保護の視点からみると、後退する内容になっていると言わざるをえません。
さらに、2014年12月に出された第6次出入国管理政策懇談会に設置された「難民認定制度に関する専門部会」(以下「専門部会」)の報告書である「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果」において、難民の保護の制度設計に取り組む必要性が言及されたにもかかわらず、それも今回の計画案には補完的保護に関する記述がないなど適正に反映されていません。上記の国会決議に示された崇高な目標に向かうような、国際社会の一員としての日本のよりよい難民受け入れへの姿勢は、今回の計画案では決して十分に示されているとは言えません。
パブリックコメントは、国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図ることを目的としているものです。ぜひとも、下記を含めた支援に携わる現場の意見が適切に反映された基本計画案になることを切に希望します。

①「外国人の入国増加に伴い、不法残留者数が増加した」という前提への疑問

 第5次出入国管理基本計画(案)(以下、基本計画案)の「Ⅰ 第5次出入国管理基本計画策定に当たって」において、「これまで減少を続けてきた不法残留者数は,入国者数の大幅な増加に伴い平成27年には増加に転じたほか,顕在化してきた偽装滞在者の問題や,制度濫用的な難民認定申請に対する施策が必要となるなど、これまでの5年間とは異なる新たな課題が出入国管理行政に課せられることになると考えられる」(3頁)との記載があります。また、基本計画案の中にも、「(前略)入国者数の大幅な増加に伴って、これまで減少を続けていた不法残留者数が、平成27年1月時点で増加に転じたことも踏まえ、これまで推進してきた不法滞在者対策の手を緩めることなく、引き続き強力に実施していく必要がある」(21頁)とされています。

しかし、この「不法残留者数の増加」転換の原因を「外国人の入国増加」だけに求めることは、法務省の統計からも正しくないことがわかります。法務省の統計資料を参照すると、日本への入国者数は、平成21年、平成23年を除き、近年は連続して増加傾向にありますが、不法残留者数は、少なくとも平成21年から25年までは減少し続けていました。さらに、問題として取り上げられている、不法残留者数が平成27年初めに22年ぶりに増加に転じたことについてですが、その詳細をみていくと、増加数は946人(前年度比1.6%増)と微増にとどまっており、また不法残留者数を直前の在留資格別にみると、平成27年初頭も【短期滞在】が最も多くの比重を占めるものの、その数は平成23年以降減少の一途をたどっていて、むしろ昨年から急増したのは【技能実習2号ロ】(研修1年を経た2年目以降の実習生)の数(1132人増加、前年度比66.6%増)であり、これが不法残留者数の増加の主な原因となっています(法務省プレスリリース「本邦における不法残留者数について(平成27年1月1日現在)」平成27年3月20日)。
この統計数値からみると、不法残留者に関する少なくとも直近の課題は、外国人の入国増加ではなく、むしろ技能実習生が不法残留となっていることとみることができます。また、上記で言及されている難民認定制度の濫用問題についても、複数の報道により、その背景に現状の技能実習制度の機能不全があることが示唆されています(例:朝日新聞「外国人実習、労災1000人超 過労死認定の動きも 13年度」 2015年7月19日)。

よって、不法残留者数や難民認定制度の濫用者数を減らすためには、難民認定制度に関する引き締めや厳格化を図るのではなく、まずは技能実習制度の見直しを行うことが先決であるのではないかと考えています。難民制度に関しては、先にも述べた国会決議等で示された理念に基づき、「難民保護」を第一義としてそのための制度改革を進めていただきたいと強く望んでいます。

②審理の簡易・迅速化及び申請権自体の制限についての疑問

 基本計画は、「①難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情等を申し立てる事案については、本格的な調査に入る前の段階で振り分け、簡易・迅速な処理を行っていく」とし、さらに「④濫用的な申請...に関しては、申請権自体を制限すること...について、...法制度・運用両面について更に検討を進めていく」としています(7(2)ア)。
この点、UNHCR執行委員会はその「結論」第30号(XXXIV)-1983-(e)において、「明らかに理由がない」と見なされる申請を迅速に処理するための特別の規定を置くことを容認しています。しかし、同「結論」は、「難民の地位の申請が明らかに理由を欠いているかまたは濫用されているという決定の実質的性格、誤った認定が申請者にもたらす重大な帰結、したがって当該決定に適切な手続的保障が伴うべき必要性」から、以下の条件が整えられるべきであると勧告しています。

1) 完全な個別の事情聴取が、あらゆる難民認定申請の場合と同様に、十分な資格を有する係官かまたは、可能な場合には常に難民認定に権限のある機関の係官によって行われること
2) 申請には明らかに理由がないという決定は、通常の場合の、難民認定に有権的な機関によって行われること
3) 申請を却下された者には、入国拒否または退去強制の処分が執行される前に、その却下の決定について再審査を認めること

したがって、仮に難民申請処理の簡易・迅速化及び申請権自体の制限を行われるにあたっては、上記条件が十分に充足されることが最低限の前提であると考えます。
また、近時、英国の高等裁判所は、同国の抑留されている難民申請者の異議申立について適用されていた簡易化された手続について、申請者に十分な準備期間を与えることなく、不当に低い認容率の原因となっているものであり、スピードと簡便性のために公平性を犠牲にする構造的に不当な手続きであるとして違法と判断しています。審理の迅速化を試みるにあたっては、申請者に十分な準備の機会と期間が確保されるべきです。

③申請中の送還停止効果の例外について

 基本計画は、「④濫用的な申請...に関しては、...申請中の送還停止効果に一定の例外を設けること」についても、更に検討を進めるとしています(7(2)ア)。
しかし、難民条約は、第33条第1項は、「締約国は、難民を、いかなる方法によっても、...その生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」旨を定めています(ノン・ルフールマンの原則)。難民が、迫害の危険に直面する国への送還に対する保護を享受することは、難民の権利保護においてもっとも重要なことであり、難民保護の礎石と言われています。そして、受け入れ国による正式な難民認定を受けていなくても、庇護希望者は難民該当性を有していれば国際法の解釈上その時点で難民となるのであり、難民認定の判断がなされる前に送還・追放されてはならないということは、確立された国際難民法の原則となっています。
そのため、難民条約自身が定める例外である、「難民が滞在国の安全に非常に深刻な将来的危険をもつ場合」(第33条第2項)以外に、申請中の送還停止効果に一定の例外を設けようとする基本計画は、かかる難民条約に違反する疑いがあると考えます。

④難民条約上の難民の認定について

 基本計画の基本方針の1つである「難民問題については、国際社会の一員として、適正かつ、迅速な庇護の推進を図っていくこと」(6頁)という前提と、本文中にある「難民条約の成立から今日まで60年以上が経過し、現在の国際情勢や、国際的な人権・人道概念の発展に伴い、難民条約上の難民には該当しないが、我が国として保護の対象とすべき者を明確にすべきではないかとの要請もある」(27頁)という指摘はもっともですが、その具体的な計画案が示されていません。この点について、以下のことを提案します。

難民条約上の難民が適切に認められるべきである

たとえば、2014年末時点において、シリア出身者から61名の難民認定申請があり、そのうち難民認定を受けたのは1家族3名のみであり、それ以外に38名には人道配慮に基づく在留許可(以下、「人道配慮」という)が出されているに止まります(シリア難民弁護団調べ)。日本政府はシリア難民に関して、紛争からの一時避難者であり条約難民ではないものの、母国の情勢に鑑みて日本での保護を必要とする人々という基本方針をとっているものと思われ、そのため多くのシリア出身申請者が難民ではなく人道配慮の枠組みで保護を認められる状況となっています。しかしこの運用は、難民受け入れ各国におけるシリア難民認定の扱いと比べて大きな隔たりがあり、シリア難民の中には人種や宗教、政治的理由といった難民条約の規定する事由で迫害を受けるおそれがあるということで日本に逃れてきている人も多いという現実に照らして、問題があるといえます。
本来難民として認められるべき人が不認定となり送還の危険にさらされていることは、難民条約の誠実な履行の観点から問題があります。また、人道配慮による在留許可においては送還の危険はないものの、政府による定住支援も受けられないことは大きな課題です。

難民条約の誠実な解釈が必要

専門部会では、「新しい形態の迫害」の申し立てについて、条約法に関するウィーン条約の「条約の解釈」に関する関連条文に基づいて、例えば「ジェンダーに起因する迫害」のおそれなどが難民該当事由として認められることを検討されるべきと報告しています。このように、難民申立理由の多様化に柔軟に対応することが求められていることに鑑み、できるだけ明示的に保護すべき対象者をあげる等、新たな取り組みを示す必要があると考えます。

⑤「人道配慮」を国際的基準に沿った形にするべきである

現在日本では、難民としては認定しないものの「人道配慮」に基づく在留(特別)許可を行う、という枠組みで庇護を行っています。日本政府はこれを難民保護の一環として説明していますが、人道配慮には基準が不明確であること等現状さまざまな課題があります。人道配慮が認められ、「特定活動・1年」という在留資格を得ても、難民認定された人に対して実施されているような定住支援策が現状では何も講じられていません。これは、本人のためにも、あるいは地域社会ひいては日本社会全体から見ても、問題をはらんでいます。少なくとも難民認定を受けた人や第三国定住難民(広義にとらえれば、第三国定住も人道配慮による受け入れの一部)と同様に、日本において長期的な滞在が想定されている人道配慮を認められた人やその家族に対しても、きちんとした日本語教育や就労支援を含む定住支援政策を早急に実施していくべきと考えます。
もっとも、現状の定住支援は十分ではなく、社会統合のために総合的な取り組みが必要と考えていますが、本意見書の範囲を超えると考えるため詳述しません。定住のための支援プログラムは、先進各国ほぼすべてで取り組まれています。その多くは政府だけでなく、自治体や市民社会組織との協働で実施されています。日本がこれ以上、国際的基準からかい離した状況を継続しないように、優先順位を高くして改善に取り組むべき課題であると考えます。

以下にさらに具体的な意見を述べます。

・外務省が困窮する難民認定申請者に対して行っている保護費の支給は、期間、内容ともに十分ではありません。また、申請場所も限られ、支給決定までに2か月以上を要する場合も多いという課題もあります。財団法人アジア福祉教育財団の事業報告書によると同保護費は2015年3月末現在で160人へ対して保護措置がなされていますが、この数字は、難民認定申請者数の規模(昨年は5000人)を考えても、少ないことは明らかです。また、金額も生活保護の基準より低く、十分ではありません。

・基本計画案では「就労を目的とする濫用的な申請のインセンティブとなっている正規在留者に対する就労許可について、希望があれば一律に就労を許可している現行の運用を見直し」とあります。
難民認定制度の濫用に関する問題は、①でも述べたように、技能実習制度や出入国管理制度全体の抜本的解決を図るなどして解決すること課題であって、難民保護を目的とした難民認定制度を厳しくすることで防ぐものではないと考えており、難民(認定申請者)の保護という根幹の制度趣旨がこのことによって阻害されてはならないと思っています。
また、もし難民申請者に対する就労許可を制限するのであれば、上記に述べたような難民認定申請者に対する非常に限定的な保護措置の見直しがまず必要です。さもなければ通常数年間に及ぶ難民認定申請期間のあいだ、申請者は「公的支援もなく、就労による自活もできない」という生存が脅かされる状況に追いやられてしまいます。こうした方々が多く日本社会に存在してしまう状況を助長することは、難民の適切な保護に反するだけでなく、日本社会の不安定化をもたらす危険があると考えられます。申請者に対して最低限の生活保障を行うか、あるいは希望がある人に対しては就労を許可して自活を促すことを継続することが必要ですが、後者を認めるほうが、社会的、経済的な観点からも健全かつ有益と考えます。

⑥難民の適正、かつ迅速な庇護の促進

・難民認定制度の基準の明確化と透明性
難民認定に関する審査、及び手続についての基準が不明確

難民認定手続において誤った不認定の処分がされたときは、申請者は、生命・身体の自由等の極めて重大な基本的人権に対する侵害が起こりうる本国へ送還されることになり、そのような事態になったときにはその損害を回復することは不可能であるため、難民認定手続においても適正手続の要請が及ぶべきことは当然です。
しかし、難民認定手続きは、行政手続法の適用除外とされています(同法第3条第1項第10号)。これは、難民認定手続きが、基本的に国家の主権に関わる事項であり、一般国民に対する通常の処分等を対象とする法律を適用することは、法律の意図するところではないからと言われています。このことが、難民認定の審査及び手続についての基準を不明確なものとしています。
私たちは、難民申請者の手続き的権利を保障し、難民認定手続きに行政手続法の適用を認めること、また、仮にその適用が認められなくても、少なくとも下記の点について、行政手続法で定める基準その他の下記の手続が確保されることを求めます。

1) 審査基準の設置及び公開(行政手続法第5条)
法務大臣の恣意的・独断的な判断を防止し、申請者に予測可能性を与えるため、判断に必要な審査基準が定められ、事前に公にされるべきです。
2) 標準処理期間の設置及び公開(同法第6条)
難民申請手続の審理期間が長期化している現状に鑑み、異議申立て手続についても、申請が到達してから処分がなされるまでに通常要すべき標準的な期間を設定するように努め、公にされるべきです。
3) 弁明の機会の付与(同法第29条)
現状では、難民調査官が独自に取得した資料は申請者に開示されず、そのためそれらの資料に対する釈明の機会も認められていません。判断の前提となる全ての資料が申請者に開示され,これに対して申請者が意見を述べ、釈明をする機会が与えられるべきです。
4) 処分について詳細な理由を付記すること
現状では、認定及び不認定の結論に際し、理由が付記されているものの、どの点に疑義が生じたのか,また、どの点について立証の不足があったのか等について十分に明らかにされていません。手続きの公平さの担保のために、理由において判断の過程,証拠の評価などが明らかにされるべきです。
5) 適切な通訳人を用いること
インタビューに際して,申請者は,母国語で,利害対立のない通訳人による通訳を受ける権利が保障され,申請者の通訳人選定に関して意見を述べる権利が保障されるべきです。また、通訳人の適正を担保するために、調書を母国語で記載することやインタビューを録音・録画するなどの措置をとるべきです。
6) 弁護士を選任する権利を保障すること
一次審査及び異議手続を通じ,申請者が弁護士を代理人として選任すること、また、代理人の、インタビューへの立会いや証拠の提出ついての権限を保障すべきです。

関係機関と協力体制の構築

前述の国会決議および専門部会の報告にもあるように、法務省は、UNHCR等の関連機関との協力に関して、研修にとどまらず、難民認定における情報収集、特に最新の出身国情報の取得などについてもさらに協力関係を強化し、難民条約第35条にある「条約の適用を監督する責務の遂行に際し、これらの機関に便宜を与える」という部分が実質的に確保されるべきと考えます。

類型化の危険性

2014年10月に法務省入国管理局が発表した「難民認定制度の運用に関する検討について」と題した資料における「③ 難民認定申請の申立てにおける迫害の理由」等で「○○国出身者、あるいは○○出身者で○○の迫害事由を基に難民認定を行う者は、一律的に『難民認定事由に該当しない可能性が高い』、『難民認定制度の濫用である可能性が高い』」と類型化して、集団的にその難民性を否定しようとすることは、難民保護にとって非常に憂慮すべきことです。例えば、昨年度もっとも国籍国別の申請件数が多かったネパール出身者をはじめとした難民認定申請者の中に、就労を目的とした難民制度の「濫用」事例があるという報道が昨年末から複数取り上げられるようになって以降、ネパール出身者が集団的に偽装難民であると類型化されて難民該当性が疑問視される傾向にあるように見受けられます。しかし、今年5月、愛知県でネパール人夫婦が政治的迫害を理由に難民認定を受けています。このような事例をもとに、出身国や民族、迫害理由の内容等によって集団的に類型化をし、一律的に難民該当性を否定することが非常に危険であること、難民一人ひとりの難民該当性を個別に精査したうえで難民としての保護を決定することが重要であることを強調しておきます。
仮に難民の類型化を行う場合にあっては、むしろ諸外国の実践にある通り、ある集団は難民該当性が高いという方向の類推に用いるべきです。

性的マイノリティ(LGBT)、養育者から離れた未成年者、性的及びジェンダーに基づく暴力(SGBV)の被害者、高齢者、精神障がいを有する者等への特別の配慮

基本計画には明示されていませんが、性同一性障害等を含む性的マイノリティ(LGBT)、主たる保護者や養育者から分離された子ども(separated children)や保護者・養育者のいない子ども(unaccompanied minors)、性的及びジェンダーに基づく暴力(SGBV)の被害者、高齢者、精神障がいを有する人など、脆弱性の高い、あるいは特別な配慮を必要とするグル―プへの対応方法を整備する必要があります。特に、諸外国でみられるような、外部の専門家(UNHCR、NGO、子どもの福祉の専門家等)との協力体制を構築することを提案します。

⑦難民認定申請者の収容について

申請者の収容の原則禁止と仮滞在制度の適正運用

申請者の収容は依然深刻な課題となっています。
法務省入国管理局と特定非営利活動法人なんみんフォーラム(FRJ)、日本弁護士連合会(日弁連)は、2012年2月に難民行政等に関する三者間の協議・協力のための覚書を締結し、それにもとづいて「収容代替措置に関するパイロットプロジェクト」を開始しました。これにより、空港で難民認定申請をした者の一部が、収容される代わりに支援団体の提供する住居での保護が認められ、支援団体の支援を受けながら難民認定申請を行っていける枠組みが形成されました。収容代替措置と呼ばれる、このような三者協議・協力の枠組みは、今日に至るまで難民保護に有効に機能してきた一例です。とはいえ、現状では、空港で難民認定申請をしたケースのすべてに収容代替措置が適応されているわけではなく、実際にはそのうちの多くが「逃亡のおそれ」という理由で収容代替措置の適用外とされ、収容を余儀なくされています。
また、入国後に難民認定申請したケースにおいても、滞在資格がない申請者に関しては、収容されるケースも多くなっています。滞在資格がない申請者に対しては、入国管理局が仮滞在許可の判断を行うことが可能となっていますが、その仮滞在許可の判断に係る審査にも数か月要し、また申請の大部分が不許可とされている現状です。
申請者の収容は通常数か月におよび、数年といった長期にわたる収容も報告されています。長期にわたる収容は、申請者の心身に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
難民保護の観点から、申請者の収容の原則禁止という制度の確立と、収容代替措置や仮滞在制度のより適正な運用を図っていただきたいと考えます。

収容施設の改善

計画案には「被収容者の処遇に関しては、従来から人権を尊重し、環境の改善に努めてきた。・・・視察を行い、意見を述べるなどし、被収容者にとって適切な環境整備につなげている。」(24頁)とありますが、収容施設での被収容者の処遇は、改善されつつあるにせよ、諸外国と比べても決して十分な環境にはなっていません。特に、医師、看護師が常駐していないなど、被収容者の健康問題を適切に対応しているとはいえない現状があります。「被収容者の体調管理等長期収容にまつわる諸問題への適正な対応にも努めていかなければならない。」(21頁)という記載がすでに計画案に盛り込まれていますが、基本計画にはぜひとも、被収容者の処遇に関するより具体的な改善策を明示していただきたいと思います。

⑧政策決定プロセスの透明化と公正化

基本計画は、国会決議や専門部会の提言を参考にして策定されていると思われますが、専門部会の提言等が十分に反映された計画案になっていないと見受けられます。政策決定のプロセスに透明化、公正化が求められます。
難民保護に関係する諸団体や専門家、受け入れ地域の代表など、できるだけ多くの関連するステークホルダーが議論に参加し、政策決定していくことが、よりよい難民保護の質的充実につながり、基本計画の基本方針である受け入れた外国人との共生社会の実現に貢献すると考えられます。また、専門部会をはじめとする議論は、第6次出入国管理政策懇談会と同様に発言者も含めて詳細が適時公開され、透明性を高める努力がなされるべきであったと考えます。

以上