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活動レポート : 講演・イベント

イベント報告: JAR15周年記念ダイアログ「For Refugees, With Refugees -難民のために、難民と共に-」

*イベントの概要はこちら

支援活動はどうあるべきか、社会課題の解決に向け市民社会がどのような役割を果たせるのか― 15周年記念ダイアログ「For Refugees, With Refugees -難民のために、難民と共に-」では、難民支援協会(JAR)がこれまでの難民支援の中で向き合ってきた問いを様々な分野で活動するスピーカーを交え、117人の参加者とともに、考える機会となりました。

はじめに:難民のために、難民と共に歩んだ15年を振り返る

会の最初には、UNHCR駐日事務所副代表・小尾尚子さんにご挨拶いただきました。小尾さんはこれまでのUNHCRとJARとの多岐に亘る連携を紹介すると共に、支援の在り方を考えるに当たり難民の視線に立った「with refugees」の重要性を強調しました。開会の挨拶として、事務局長・石川えりからは、JARの設立からこれまでの活動の展開、活動にかける思いをお話ししました。

第一部:「支援」活動とはどうあるべきか

第一部では、国内の貧困者支援に長く従事され、最近は岩手を拠点にみちのくふる里ネットワーク 代表理事・大船渡市市民活動支援センター 代表として復興支援に取り組んでいる大関輝一さん、海外での緊急支援の現場での多く経験され、東日本大震災の支援でも活躍されたADRA Japan 事業部長の橋本笙子さん、JARの地元である新宿区で、芸術家を招き外国 にルーツを持つ子ども・若者・日本人の子ども・若者を対象にアートワークショップを行って来た「新宿アートプロジェクト」の代表海老原周子さんの3名が登壇し、支援活動の現場でみえてきた課題と今後の在り方を議論しました。

国内外、フィールドの異なる三者からは、「支援」の方向性について問題提起がされました。大関さんは、セーフティーネットから抜け落ちてしまう現状、貧困から生活再建がどのように進むか、階段の図を使い紹介。「公的支援につなげるとしても階段の途中までにとどまり、個々の状況に合わせた生活を目指すところが課題」と指摘しました。現在、大関さんは、新たな取り組みとして、大船渡市で行政、企業との連携をすすめています。このように他を巻き込むこと、そして、活動の土台をつくっていくことが重要であると訴えました。

一方で、海老原さんは、自身の活動をどう捉えるか、「アートワークショップは、そもそも『支援』をしたいと思って始めた活動ではなかったが、子ども達の現状に触れ、『支援』について意識するようになった。しかし、本当に子どものためになっているのか自問した」という経緯を話され、「アートで直接的な支援は難しいが、結果としてそれが間接的な支援につながったという状況はあった」と紹介。現在は、「アート」に重きを置くようになり、「多様な人が集まるようになった」と話します。加えて、知らない人に伝えていく重要性も提起しました。

さらに、支援する側、される側の関係性についても議論が展開されました。大関さんは東北での経験から「自分の物差しではなく相手に合わせることが重要」と述べ、橋本さんもご自身のこれまでの経験を振り返りながら、「自分たちがしたいことではなく、何が必要か、相手の身になって考えるべき。『支援』の世界に入り込むのではなく、生身の人間一人ひとりを思う想像力が必要」と話しました。

フロアからのコメントとして、JANICの渡辺さんは「支援は思いやりであること、支援は限りもあり、どうあるべきか答えは一つではないこと。人を支援に向かわせるのは人であり、そこには国籍や人種は関係ない、ということを感じた。そのような思いが社会をよくしていくのでは」とお話ししました。コメンテーターの石井からは、提起された支援者との関係性に関して、東日本大震災の経験から、「より一人ひとりに寄り添った支援であると共に、どう変えていくか、市民社会で考えていく必要がある」と述べ、第2部につなげました。

第二部:市民社会が果たす役割とは

第一部を受け、第二部では、市民社会が果たす役割について、長く花王株式会社の社会貢献の担当として勤務され、現在は公益財団法人 花王芸術・科学財団 常務理事をつとめる嶋田実名子さん、弁護士としてLGBTなど性的マイノリティの方への支援に取り組む永野靖さん、ミャンマー・ビルマでの民主化活動のために日本に逃れ、現在は、高田馬場でミャンマー・ビルマレストランを経営しながら、母国の政治活動を行うチョウチョウソーさん、筑波大学 准教授で長年、難民・移民について研究されている明石純一さんが登壇しました。

前半では、各スピーカーがどのように社会課題に取り組んでいるか紹介しました。企業からの視点として、嶋田さんは、JARとの連携を紹介し、公益的価値が経済的な価値を高めると考えられるようになってきたので、社会的課題を理解することはますます重要になるという考えから、「関心のスイッチをどう押すかが重要」とお話ししました。LGBTに取り組む永野さんは、社会の中での差別や偏見に加え、LGBTがいないことが前提となっている制度の問題点を指摘。弁護士として個別支援に携わるだけでなく、「LGBT支援法律家ネットワーク」を結成し取り組んでいることが紹介されました。

チョウチョウソーさんは、難民が支援をされる側だけではないことを象徴しています。東日本大震災を受けて被災地に炊き出しに行った体験を話し、「自分が何ができるかを考えてできることをやった。自分たちが住んでいる社会を考えながら生活していくべき」と訴えました。最近では、日本で生まれたミャンマー(ビルマ人)の子どもにビルマ語を教える取り組みを始めたことを紹介。教育が大事だと考え、自分ができることを実践しています。

明石さんは、難民・移民の統合や市民社会の動きを海外で研究した経験から、難民・移民が支援するだけではなく市民社会における支援の担い手となっていること、現在の日本では、制度や予算を含め、問題化されていないことが課題であるということを指摘されました。

後半では、社会課題の解決に向け、どのように取り組むべきか、NGOへの期待も合わせてお話しいただきました。明石さんからは、当事者性が重視されるようになった大学教育の現場や、NPOとの連携が進むカリキュラムなどが紹介されました。「むしろ市民社会から大学側に強くリクエストをしてほしい」というお話しもありました。永野さんは、大関さんの階段の図を例に、LGBTの背景には他の課題が関わっていること、解決のためには資源が流れるよう制度を変えていく必要があり、現場を知っている者が求めていく必要があると訴えました。最後に、嶋田さんは、橋本さんの指摘にリンクさせる形で、「企業は、現場で何が必要とされているのか、軸を持って活動すべき」と指摘すると共に、NGOに対しては、「関心がある人だけで取り組むだけでは解決できない。アクセスポイントを広げていってほしい」という期待が述べられました。

最後に

事務局次長・吉山昌より、これまでのダイアログを受け、JARの今後の展開についてお話ししました。JARでは、これまで、難民支援と権利の保護(プロテクション)が重なる分野で活動してきました。今後は、これまでの活動をさらに発展させ、難民の権利保護を柱としながらも、難民のより幅広いニーズに対して新たな「支援」のあり方を模索します。また例えば災害の現場などで、難民以外の人々に対しても、JARの蓄積してきた経験を活かした事業を展開していきます。

ダイアログで出てきた、支援する側・される側という関係性を超えて、一緒に市民社会のアクターとして課題に取り組んでいくこと、様々な問題がつながる中、多様性が日常にある社会を実現していくこと、社会課題を他人事としない、関心のスイッチを押していくこと―いずれも、JARが今後活動する中で大切にしていきたいことです。今後もJARでは、今回のダイアログの問いに向き合いながら活動を展開し、皆さまともダイアログを重ねていきたいと思います。今後のJARの活動にご期待ください。

また、イベントの開催に際し会員の皆様にご支援いただくと共に、イベント当日にも多くの方にご寄付をいただきました。ご支援いただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。ご寄付は今後の活動に大切に活用させていただきます。

来場者からの声

多様なスピーカーを交えたダイアログ。学生や社会人、シニアの方と幅広い方にお集まりいただきました。

  • 多彩な登壇者に接する貴重な機会だった。社会を構成する多様な関係者による連携や横断的な取り組みが必要な段階がきていることを実感したダイアログだった。

  • 私自身、ずっと考えてきたテーマを本当にたくさんの視点・経験から考えられる良い機会になった。

  • 様々な視点から「支援」について話を聞くことができてよかった。支援者の立場、難民の思い、震災との関係など、様々な価値観に触れられて勉強になった。


(2014年10月22日掲載)

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