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活動レポート : 声明

2010年10月29日-外国人の子どもに関する新宿区への要望書

2010年10月29日

新宿区区長様
新宿区立教育委員会様

新宿区ニュー・カマーズ チルドレンの日本語学級と
トータル・ケアーの確立を目指す会議
議長 内藤頼誼
認定NPO法人 難民支援協会
新宿オモニの会
日本語学級研究会
多文化学校



新宿区ニュー・カマーズ チルドレンの
日本語学級とトータル・ケアーの確立を求める要望書


 新宿区が国際化の時代を迎える中で、私達は子どもたちのよりよい教育の実現に大きな関心を持ってきました。今、新宿区には「日本語を母語としない児童・生徒」が急増しております。私たちはこの子どもたちが現在肉体的にも、精神的にも極めて危機的な状況に追い込まれているとの認識を持っています。子どもたちの置かれている深刻な事態は一刻の猶予も許しません。
 私たちは、本区での日本語を母語としない子どもたちの教育のよりよい充実化のために新宿区立中学校に「日本語学級」の来年度設置を強く要望すると共に、学校管理外の生活にも区の手厚い支援を受けられるようにご配慮をお願いします。
  
       
1 設置に向けた子どもたちの現状報告

 私たちは、近年新宿区に増加を続けている新しい外国人の子どもたちのために、彼らが通学する小学校、中学校に日本語学級を作ることと、彼らが学校外生活でも健全な社会教育、社会環境の中で成長できるためのトータル・ケアーの確立を目指しています。
 新宿区には、近年ミヤンマー、ネパール、ベトナム、タイ、カンボジア、韓国、中国など多くの国々から移住してきている人々がおり、その傾向は増加の一途をたどっています。その結果、新宿区で育っている子どもたちも多くなっています。その子どもたちは、本国で小・中学校に就学している途中で日本に来た子もあれば、日本語の良くわからない両親のもとに新宿に来てから生まれた子もいます。この子たちは、年齢や本国で受けた教育の段階に応じて新宿区の学校に通うことになります。
 ところが、その子どもたちの多くが、学校に通っても日本語がわからないから先生の授業が理解できずに勉強に参加できない状態になり、その子自身も辛く無意味な通学を続けなければならないことになるうえに、子ども達の中で「異質」と見られる子はしばしば「いじめ」の対象にされています。そのために、学校に通うことに耐えられなくなって、欠席を続け、公園で時間を費やしたり、そうした機会に誘われて飲酒、万引きなどの非行に陥る子どもたちも増えています。
 こうした現状のままでは外国から来た子どもたちの大切な命と人生を害うと共に、新宿区の将来にとっても極めて憂うべき事態を招くことは必定でしょう。


2 緊急の必要性―「日本語学級」設置

 私たちは、この問題に直面し、その対策として、まず子どもたちの生活の基盤として、日本語を教えることから始めてそれぞれの学科の勉強ができる教育を行い、子どもたちの心の拠りどころともなるように、彼らが通学する学校には等しく「日本語学級」を作ることと、学校外生活の健全な援助と指導ができるトータル・ケアーのシステムの緊急の必要性に迫られています。
 日本語のわからない児童・生徒が、それぞれの学年の日本の子と同じ授業を受けることは根本的に無理を強いていることで、教諭としてもこれらの子にも理解できる授業をすることは不可能です。その結果が、無意味な通学をさせるだけではなく、学校・クラスの中での孤立という苦痛を受けさせ、また意思の疎通ができないところから「いじめ」の対象になったり、不和とトラブルを生むことになっています。
 さらに、そうした無理な学校生活に耐えられない子どもたちが長期欠席状態になって、街の中を徘徊したり公園で時間を過ごし、非行に誘われることになっています。こうした状態は、新宿では誰でも繁華街や公園を歩いてみれば目にすることで、既に区民だけではなく新宿を訪れた人たちが見ていることです。
 新宿区民も新宿を訪れた人も、この状態を好ましく思うはずがありません。ところが、何の対策も採られない現状ではこうした子どもたちは増加の一途をたどっています。この子どもたちは、日本の子どもたちと同じように、尊く、純真な命を持っています。若しも祖国が平和で自由と平等が尊重されていたら、故郷の美しい山河に抱かれて育っているでしょう。みんな祖国や家庭の事情で日本に来て新宿で暮らしているのです。
 この子たちの生活に、流す涙を持たない人やひんしゅくの眼で見ている人も、自分が毎日わからない言葉の授業を聞くために学校に通い、おとなしく席に坐っていなければならない身に、また友達のいない学級で「いじめ」を受けても何一つ話せない身になってみれば、この子等がどんなに無理な生活をさせられているか少しはわかるでしょう。全ての原因の発端は、「日本語のわからない子に通常の授業を受けさせる」ことに始まっているといって過言ではありません。
 ところが、新宿区では、これらの子どもたちが増え続けているにもかかわらず、トータル・ケアーの発想のないことはもとより、小学校の日本語学級も大久保小学校にあるだけで、多くの子どもたちが日本語学級のない小学校に通学させられるのです。もっと大きな問題は、中学校に至っては区立の中学校に日本語学級が一箇所もないという実情です。中学生の年代は、将来の進路を見定める大切な時期であると共に、思春期に入って精神的な人格を形成する重要な岐路に立つときです。
 それはまた同時に非行の誘惑に陥りやすい最も危険な時期でもあります。小学校の高学年や中学校の年代で移住してきた子どもたちは、この大切な年代を「知的な空白時間」として暗中模索しなければならない状態になっているのです。この子どもたちも、それぞれかけがえのない尊い命を受け継いで、それぞれが才能を育てて生きていかなければならないのに、高校進学についても全く何の対策も採られていません。
 子どもが健全に育ち、人が希望を育てて困難を乗り越えて進むには、心の拠りどころとしての故郷が必要です。この子たちの母国は余りにも遠く、新宿が新しい故郷となるのです。この子等の心の故郷になれる学校が必要であり、日本語学級はその拠点としての役割りを果せるでしょう。


3 トータル・ケアー システムの必要性

 学校教育だけでは、彼らが日本の、新宿の社会で健全に育つには足りないものが多くあります。これまでにも、日本語学級を作ってその先生たちが彼らに日本の生活になじめるように努力を重ねても、放課後に一歩学校を出ると「見知らぬ世界」の中に迷い出て、非行の仲間に入れられたり、命を失った例もあります。この子等は、街の中でも、何処がどのような商業の地域なのかわからないし、子どもはどのような事や人に気をつけなければならないか、ということもわかりません。極端に言えば、危険がわからないし、危険を感じても「助け」を呼ぶこともわからないことさえあります。このために、せっかく日本語学級の先生が努力していても、放課後の時間に街に出て非行の付き合いに誘惑されることも珍しくないのです。日本の子にとっては、「常識」として知っていることや、家庭で教わっていることが全く「白紙」の状態だと考えなければならないのです。この子等の家庭では、親が日本のことを知らないのですから、日本の生活や新宿の街の生活の常識、近寄ってよい地域や付き合ってよい人かどうかも家庭で教えることはできません。
 そうした指導は、学校の中で抽象的に教えられることではなく「街の生活」の中で教えなければ子どもにはわかりません。さらに、文化的な楽しみと教養の問題があります。学校の教育では、日本語学級を作っても、学科の勉強を中心に進めなければならないことになります。
 日本の子どもたちは、現状として過大な学習に追われている嘆かわしい状態に置かれていますが、それでも育っているうちに知らず知らずに日本の文化の中で、その音楽、絵画などの芸術やいろいろのスポーツ知識を持ち、これらを楽しんで、そうしたことが常識と教養となって育っています。
 ところがこの子等は、自分の身のまわりにあるせっかくの日本が古来から受け継いできた文化、外来で日本に定着した文化知識がないのでこれらを楽しむこともできないのです。例えば、健全な趣味と教養の涵養のためには、彼らに日本文化に親しめるように、新宿の歴史遺産を参観する機会を作ったり、健康な子どもなら「相撲クラブ」や「剣道クラブ」「弓道クラブ」「柔道クラブ」も良いでしょうし、「書道クラブ」、「日本の昔話」などよいでしょう。国際的に共通するものとして「野球」「ソフトボール」「テニス」「サッカー」などのスポーツ、音楽や絵画などの芸術、また彼らが危険から身を守るために警察の少年・防犯関係部門との指導、連携、生活相談など有意義なことは枚挙に暇はありません。
 これらのことは、それぞれの文化・スポーツ活動を行っている団体と協力すれば決して困難なことではありません。この子等もそうした才能を伸ばす機会が得られるし、また優れた才能を発揮する人が生まれてくることもあります。さらに、彼らはいつ祖国に帰る日が来るかはわかりませんが、苦しい中でも親子の絆を強く保ち、親しい同胞を失わないことは、それぞれ人として自信と誇りを持って進むことに欠かすことのできない大切な必要条件です。そのために、母国と母国の文化、同胞との絆を育てる教育や機会が必要です。これまでの日本の外来者に対しての教育は、「無理やりに『日本人化する』という過ちを重ねてきましたが、これを繰り返しては進歩がありません。


4 要望内容
 
 日本も「国際化時代」といわれるようになって久しくなります。「国際化」を、商品の流通が国際的ならよいと思う人はもういないでしょう。国際的に人々が交流し、いろいろな国から来た人々が一緒に楽しみ、一緒に活動できる社会を作らなくてはならないのに、日本の首都の東京の中心になっている新宿区は、何処よりも国際的に子どもが健全に育って行ける環境でなければならないし、私たちはこの新宿区がそうした街でありたいと願っています。
 国連が作った「子どもの権利条約(政府訳―児童の権利に関する条約)は、「全ての子どもが、健全に育つことができる」ように保障することを、保護者だけではなく、この条約に参加したその子どもが育っている国とその自治体、地域のみんなに責任を持たせています。日本もこの条約に参加して、国会も批准しています。日本の首都は東京であり、東京の都心は都庁のある新宿です。その新宿区に、日本語学級のある中学校が一校もなく、この子たちの生活をケアーするシステムが全くありません。むしろ私たちの新宿区こそ、この子等の生活と勉学に名誉ある地位を築きたいものです。
 是非新しく新宿区に仲間入りした子どもたちの通う小中学校に、日本語学級を設置することと、学校教育だけでは彼らが健全に育つことに足りない対策を確立することを要望いたします。

(2010年11月9日掲載)

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