法務省入国管理局広報資料「難民認定制度の運用の更なる見直し後の状況について」 に関するコメント

認定NPO法人 難民支援協会は、法務省入国管理局から本日発表された「難民認定制度の運用の更なる見直し後の状況について」に関して、難民申請者を管理する視点に終始し、保護する視点が欠けていることを憂慮し、以下コメントします。

難民認定制度の運用の本質は、管理や誤用・濫用的対策ではなく、難民を適切に保護することにあります。当会では、その視点での施策が前進することを望み、難民認定の迅速化のみならず適正化、審査の質の向上に取り組むことを求めます。

この発表では、難民認定に関わる2018年上半期のデータを元に、今年1月より行われている「難民認定制度の運用の更なる見直し」の状況が公表されています。難民申請者の国籍や在留資格、申請案件の振り分けの内訳が明らかにされ、就労等を目的とする難民申請の対策において「一定程度の効果をあげていると考えられる」としています。

「濫用」「誤用」の抑制ではなく、難民を保護するという本質に焦点を当てるべき

そもそも、難民認定制度の本質は難民を保護することです。保護するために制度がどうあるべきかという観点から議論されるべきですが、今回の発表は、就労等を目的とする濫用・誤用的な難民申請の抑制に終始していることを残念に思います。

とりわけ、難民申請が多い特定の国を「大量の難民・避難民を生じさせる事情がない国」とし、難民となる事情が全くないかのような印象を与えています。しかし、シリアやエリトリアのように、大多数が難民として認められる国もあれば、特定の宗教や民族、政治的意見等を背景に少数者へ苛烈な人権侵害が秘密裏に行われる国もあります。難民はあくまでも一人ひとりの経験や帰国した際の「迫害のおそれ」に基づいて審査されるべきです。

難民認定数:数だけではなく認定実務の質的な評価が必要

難民認定数については上半期で22名と、これまでの水準より若干の増加が見られます。しかし、当会が支援を行うなかで保護されるべきと考える人は上記に留まりません。まだ保護されていない人がいると考えます。法務省入国管理局は「確実な庇護を推進するため」、2015年9月に「難民認定制度の運用の見直しの概要について」を発表しました。濫用・誤用的な難民申請の対策のみならず、そこに掲げられている「保護対象の明確化による的確な庇護」や「認定判断の明確化を通じた透明性の向上」、「出⾝国情報等の分析・共有及び難⺠認定制度に携わる⼈材の育成」に関してもより一層取り組み、適切に保護していくことを求めます。

審査の妥当性の向上が必要

法務省は2015年以降、増加する難民申請件数に対応し、迅速化するため、難民申請を短期間でA~Dへ振分け、それぞれの処遇も分けています。B案件は難民該当性がない、C案件は理由なく申請を繰り返していると判断され、いわゆる濫用と判断される案件です(※1)。この振り分けを行なっていくためには、難民申請にかかる事務処理の効率化を図るだけでなく、審査の適正・的確化も同時に行う必要があります。

法務省入国管理局は振り分けの適正性を外部の専門家が検証する機会を設け、昨年検証結果を公表していますが、以下のような課題が指摘されています(※2)。

など。信憑性の評価、審査記録の作成、出身国情報の充実、再申請者への配慮等難民審査の質を高めるための重要な指摘がなされています。運用の更なる見直しにより、難民申請の迅速化を図り、難民認定数が若干は増えたとしても、本質的な難民認定手続きの質の向上のために取り組むべきことは非常に多いと言えます。

大きく変わる外国人受け入れ政策の中で

外国人をめぐる政策は大きく動こうとしています。今年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~(骨太の方針)」に基づき、外国人労働者受け入れ拡大のために新しい在留資格を創設すること、入国在留管理庁(仮称)の設立が予定されています。しかし、この基本方針において難民に関する言及は「難民認定制度の濫用・誤用者対策等を推進する」に留まり、管理のみが強調されている点において懸念があります。
難民を保護するという根本の原則が管理の視点に埋没することがないよう、引き続き、難民のための支援・政策の立案を、関係者の協力のもと求めてまいります。

※1 第196回国会・答弁書第140号 参議院議員石橋通宏議員「参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書」(2018年6月26日)において、濫用についてB案件とC案件である旨が回答されています。

※2 法務省入国管理局「難民認定制度運用の見直し状況に関する検証結果について」(2017年7月28日)