年末に寄せて:ポールさん「覚悟を決めて向き合うしかない」

難民支援協会 代表理事の石川えりです。
早いもので歳末のご挨拶をさせていただく時期となりました。
今年も皆さまに支えられ、活動を続けられたことに心より感謝申し上げます。

「難民という言葉がなくなることを願っています。 継続は力なり。これからも頑張ってください」
「あなたがたが頼りです。託すことしかできませんが、応援しています」

山積する課題を前に、途方にくれそうになることもありますが、
皆さまから日々いただくあたたかい応援に後押しされて、
今年も支援に邁進することができました。

日本に逃れてきた難民を取り巻く環境は、より一層厳しくなっています。
今年の難民申請者数は、すでに4,500人を突破していますが、
私たちが支援している方のなかで、認定を得られたのはわずか3人です。
多くの方が、認定への希望を持てないなか、先の見えない生活を余儀なくされています。
初めて事務所にくる方の多くは、「これでようやく何とかなる」そんな期待をもってきます。
残念ながら、最初のカウンセリングでは、日本で難民認定を得ることの厳しさを
お伝えするところから始めなければなりません。
JARはできる限りの支援をするけれど、あなた自身も頑張らなければ、
日本では生きていけないこと。そして、どれだけ頑張っても、
99%以上の人は認定を得られないということ。
まずは、この現実を受け入れていただき、それを見据えた上で、
この局面をどう生き抜いていくか、ともに考えています。
お金や物を与えるだけでなく、現実と向き合って前に進めるように促す支援も大切にしています。

アフリカのある国出身のポールさん(仮名)は先月初めてJARを訪れました。
母国での政治活動により命を狙われ、逃れてきた方です。
母国の公用語はフランス語で英語が分からないため、
日本にきてからもなかなか情報を得られず、JARを知るまでの数週間、
公園を転々として過ごしていました。
気温が急に下がり、不安と慣れない寒さに襲われていたとき、
助けを求めようと声をかけたアフリカ出身の人からJARについて聞いたそうです。
「救われた...」

その足で事務所にいらしたポールさんに伝えなければならなかったことは 日本の難民認定の道のりはとても厳しく、JARのシェルターは 同じような状況の人で満室であること、順番がくるまで、 もう少し路上で頑張っていただくしかないということでした。 期待を打ち砕かれたショックで、ポールさんはがっくり肩を落としてしばらく泣いていました。声もかけられないほど落ち込んだ様子のポールさんが、できるだけスムーズに現実と向き合えるよう、数時間かけて寄り添い、勇気づけました。あまりのショックに、その日は寝袋や食糧も受け取らず、力なく事務所をあとにしました。

その様子から、ポールさんが前に進むには相当な時間がかかるかもしれない、
と心配していましたが、早くも次の日、前日とは打って変わり
覚悟を決めた顔つきで、再び事務所にみえました。
寝袋、緊急支援金、路上生活を生き抜くための情報を載せた
サバイバル・ハンドブックを受け取り、大きな荷物はJARに預けて、
再出発をきりました。それから3週間。日中、事務所で食事や暖をとりながら、
夜は寒空の下で気丈に耐え続けました。11月末にシェルターに入ることができ、
ひとまず、この年末年始は温かい場所で過ごすことができます。
しかし、闘いはこれからです。結果が出るまでの平均3年をどう生き抜くか。
そして、認定されなかったらどうするか。
「覚悟を決めて向き合うしかない」 ポールさんはそう話しています。

難民申請者に向けた公的な支援はありますが、
支給されるまでの待機期間が長く、必要な人がすぐに受けられないのが実態です。
ポールさんも申請から2ヶ月たちますが、まだ支給されていません。
同じように公的な支援につながるまで時間がかかっている多くの方が、
毎日、私たちの事務所にたどり着いています。
相談に訪れた方は、この冬だけでも103人。
セーフティネットの穴をなんとか埋めつつ、制度の改善を呼びかけていますが、
支援が追いついていない現状があります。

今年最後のお願いです。
少しでも支援を強化できるよう、ご協力をお願いします。

3,000円で1日分の宿と食費・交通費を提供できます。
10,000円で健康保険がない難民が 治療を1回受けられます。
30,000円でシェルターに住む難民の家族の1か月の生活費を支援できます。
そして、ご寄付によりこれからも難民に寄り添い、支え続けることができます。

皆さまのご寄付で救われる難民がいます。
こちらから

ご多忙な歳末に、長文をお読みいただき、ありがとうございます。
皆さまが穏やかな年末と新年をお迎えになられますことを願っております。

石川えり