クローズアップ現代+への抗議とその後の協議の結果について


当該番組の特集ダイジェスト NHK公式ホームページより

2018年6月6日のNHKクローズアップ現代+で、「自称"難民"が急増!?超人手不足でいま何が...?」というタイトルの特集が放送されました。日本の難民申請者について事実と異なる内容で報じられたため、難民支援協会は抗議文を送付し、その後、制作者との意見交換を経て、7月17日、番組ウェブサイトに訂正がなされました。しかし、「訂正した」という記載がなく、差し替えに過ぎない対応であったことを、大変残念に感じています。

以下、経緯をまとめます。
当該番組では、就労を目的に難民申請をする人たちのみが取り上げられ、日本に庇護を求めて逃れてきた難民の存在について触れられることはありませんでした。偏った報道により、日本の難民申請者はほとんど虚偽であるという、事実と異なった印象を視聴者に与えたと認識しています。
そのため、難民支援協会は、6月8日にNHKに対し抗議文を送付しました。内容は主に次の3点です。

1.報道の訂正(番組ウェブサイト上のダイジェストの訂正を含む)
2.日本の難民申請者に関する偏った報道への抗議
3.今後の番組制作に関するお願い

その後、番組の制作にあたったNHK名古屋放送局 報道部(報道番組)チーフ・プロデューサーとディレクターが7月3日に当会を訪れ、協議を行いました。弊会からは、訂正の要求、番組がどのように事実と異なる印象を与えるものであったか、現在の難民認定申請手続きや申請者を取り巻く状況の説明を、NHK側からは番組の制作や表現の意図についての説明がありました。また、「自称"難民"」という表現については、今後の番組制作では慎重に言葉を選んでいただけると一定の理解をいただけたものと認識しております。

当初の番組では、仮に難民不認定となっても再申請すれば働けるという説明がイラスト付でされました。しかし、2015年9月以降、再申請者の就労は一部の例外を除き認められていません。

訂正されたウェブサイト上では該当するイラストが削除され、テキストが差し替えられました。しかし、放送した番組の内容に誤りがあり「訂正をした」、という文言は記載されませんでした。協議のなかでは、訂正したことを分かるように訂正することで合意していたため、記載を求めましたが、対応の予定はないという回答でした。このような形では、6月6日の番組をご覧になった方が、訂正されたことに気づくのは困難だと考えます。

日本の難民を取り巻く状況は厳しく、また迫害から逃れてきたという背景によって難民当事者が声をあげることも難しい場合がほとんどです。そのため、当会は難民の命や人生がかかっているという認識で、情報発信を慎重かつ丁寧に行ってきました。大きな影響力のあるマスメディアが、今回このような対応に終わったことは、大変残念でなりません。
今後、どのように難民を受け入れる制度や社会に影響を与え、当事者の声を代弁していくことができるか、これまで以上に真摯に考えてまいります。

<コラム> 難民支援協会の当該番組に対する見解

Q. なぜ、事実と異なる印象を与える偏った内容になったか?

番組では就労を目的に難民申請をする人たちを取り上げた上で、名古屋入国管理局・藤原浩昭局長による「本当に困って、あるいは政治的迫害を受けてというものは、ほとんどありません」という言葉を紹介。迫害から日本に逃れ、難民申請している人たちの存在には触れず、本来の目的と外れた難民申請の事例ばかりを取り上げることにより、日本の難民申請者はほとんど虚偽であるという、事実と異なった印象を与える報道になったと認識しています。

その原因の一つとして、地方入国管理局という一方の当事者にのみ取材を行い、他に難民申請者の状況を把握している主体への取材を行っていない、もしくは最終的に映像に取り上げていないことがあると考えています。難民申請者の実態として報じるには根拠が断片的すぎる上、番組内容と相容れない事実は入国管理局が公表している難民申請者全体に関する資料のなかでさえも確認できます。クローズアップ現代+という番組の影響力を鑑み、多面的な取材を心掛けていただきたい旨をお伝えしましたが、「雇用」の観点から制作した本番組において取材姿勢に問題はなかったという認識が変わることはありませんでした。極めて遺憾です。

Q. 難民申請者が再申請すれば働けることは問題なのか?

運用の見直しがなされる2015年9月までは、放送されたように再申請者でも働くことは禁止されていませんでした。今回の放送内容では、何度でも働けることが問題であるかのように取り上げていますが、当会は再申請者が働けることを問題と考えません。

なぜなら、再申請の結果、ようやく難民として認められる人がいるからです。例えば、2016年に難民認定および人道配慮による在留特別許可を受けた125人のうち、2割は再申請者です。
一度目の難民申請で難民認定を得られなかった人は、再申請の結果が出るまで平均3年あるなか、生き延びていかなくてはなりません。再申請者は、政府が困窮していると認めた難民申請者に向けて提供している保護費も対象外であり、働かなければ生き延びることが困難な状況に陥ってしまいます。しかし、どんなに日本での生活が厳しかろうが、本当に庇護を求めて逃れてきた難民にとって、母国に帰れない状況は変わらないのです。日本で耐えるしかありません。
再申請者のなかに保護されるべき人がいる以上、日本で生き延びる手段を何らか認めることが必要だと考えています。
番組では、再申請者が働けることを問題視するような内容で放送されましたが、この就労許可が、庇護されるべき難民を保護するという本来の目的においては必要であるという説明があったとはいえず、特定の意見を助長する内容だったと危惧しています。