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注目の難民ニュース

日本で初めての「第三国定住による難民受け入れ」が始まります

アジアで初めての試みである第三国定住によって受け入れられる難民が、2010年9月28日に来日します。現在、多くの外国籍の人たちが暮らす日本社会において、多様な背景を持つ人びとと共に生きるという視点は、ますます重要になってきます。今回の第三国定住を切り口に、日本における難民受け入れの課題はなにか、従来の難民受け入れとの違いはなにかなど、難民支援協会(JAR)の取り組みを紹介しながら、まとめてみました。

「第三国定住」とは?

図:第三国定住とは第三国定住とは、すでに母国を逃れて難民となっているが、避難先の国では保護を受けられない人を他国(第三国)が受け入れる制度です。難民は、難民条約に加盟している第三国に移動することにより、保護を受けることができ、長期的に定住することが可能になります。

従来の難民受け入れ

従来日本が受け入れてきた難民は、大きく二つのグループがあります。1981年に加入した難民条約に基づく難民(条約難民)と、政治的措置により受け入れたインドシナ難民です。

【条約難民】 
難民条約により定義された難民。難民条約では、「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという、十分に理由のある恐怖があるために国籍国の外にいる人で、国籍国の保護を受けられない人、または保護を望まない人」と定義。

【インドシナ難民】 
ベトナム戦争により母国を脱出し難民となった人々。加えて、ラオス・カンボジアからの難民も含む。1975年に初めてボートピープルが日本上陸。当時、難民条約未加入であった日本は、政治的措置としてインドシナ難民の一時滞在を認め、その後閣議了解により受け入れを決めた。

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新たな展開

今回の第三国定住は、上記とは異なる新しい「第三国定住制度」での受け入れです。日本が受け入れるミャンマー(ビルマ)出身である少数民族カレン民族は、すでに母国ミャンマーを脱出し、タイの難民キャンプ(メラ難民キャンプ)に避難しています。難民キャンプにて日本語などの出国前研修を受けた上で、今月28日に約30名が来日します。難民認定の受け入れ数が少なく、国際的に批判されてきた日本社会にとっても、また、今回来日する難民にとっても、新しい取り組みへの一歩を踏み出すことになります。

今回のパイロットケースについて

日本での第三国定住による難民受け入れは、アジアで初の試みです。今回は、3年間で約90人の難民を受け入れるパイロットケース(試行)となっています。

第三国定住に関する政府の発表はこちら
外務省:副大臣会見記録
内閣官房:第三国定住による難民の受入れに関するパイロットケースの実施について
内閣官房:第三国定住による難民の受入れに関するパイロットケース実施の具体的措置について

定住までのプロセス

図:定住までのプロセス第三国定住による難民が日本に定住するまでには、さまざまなプロセスがあります。まずは、避難先であるタイの難民キャンプにて来日希望者をつのり、選考をします。来日が決まった人たちは、簡単な日本語や日本での生活について、出国前の約1ヶ月間、研修を受けます。今回の研修は、日本政府から委託されたIOM(国際移住機関)が実施しています。来日後は、首都圏にある施設で約半年間、さらなる日本語教育、生活に関する研修、職業紹介に関する支援を受け、定住への準備を進めます。そして、施設を出て、地域社会への定住という流れになります。

しかし、半年の研修だけでは、十分ではありません。難民の定住においては、地域の人たちが、学校や、職場など、それぞれの生活の場で、難民の生活を支え、また、彼らと交流をし、ともに新たな地域社会を築き上げていく姿勢が大切です。

課題と意義

第三国定住は、保護を必要としている難民への解決策として有効であるという視点から、JARは、今回の受入を歓迎します。(2008年12月2010年9月の声明)
しかし、日本社会で難民が自立して暮らしていくためには、多くの課題があります。JARとしては、日本の難民保護全体に関して、以下3つを取り組むべき重要な課題と考えています。

  1. 第三国定住をめぐる議論をオープンにしてほしい。今回の受け入れは、その決定過程が、すべて政府内の議論に終始している。当事者である難民や支援団体など関係者の声を反映してほしい。
  2. 第三国定住が「試行」であるならば、その「成功」の指標を明らかにするべきである。最終的に何を目指し、どのような状態になることが、やってくる難民と日本社会の双方にとって成功と言えるのか、明確にし、今後の難民受け入れの改善につなげたい。
  3. 自力で日本にたどり着いて申請をした難民と、第三国定住難民との公的支援の格差をなくすべきである。第三国定住難民は、日本政府が選抜をした人たちで、来日後半年にわたり、医療、就労、住居、語学支援などの公的な支援が用意されている。現状では、自力で来た難民への支援は認められるまではほとんどなく、平均2年以上にわたる難民申請中は生活保護が準用されず、多くが就労を認められない。このような現状にきちんと対応していくことは、日本の難民保護全体の改善にとって重要である。また、難民ではないが人道配慮による在留許可を得た人が定住支援を受けられるようにすべきである。

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難民申請中への支援3点目の課題に関連して、難民申請中の支援体制をまとめたのが左の表です。問題点は、

・審査期間が長いこと(平均して2年間)
・その期間の公的支援が非常に少ないこと
・にもかかわらず、多くの場合、就労が認められないこと

です。必要な公的支援を充実させることと同時に、就労の機会を提供するなど、難民受け入れ体制の抜本的な見直しが必要だと言えるでしょう。

JARの取り組み

第三国定住受け入れを背景に、日本の難民受け入れの現状や課題について理解し、議論する場を作ってきました。日ごろからJARが取り組んできた活動も合わせて紹介します。


■オープンな議論/市民への情報発信
国際シンポジウム 「変わる日本の難民受け入れと地域社会 〜米国における自治体とNPOの協働に学ぶ〜」

国際シンポジウム「新時代の難民保護と市民社会」〜アジア太平洋7カ国・地域のNGOの視点から〜

※今後予定しているイベント(2010年10月1日現在)はこちら

■就労支援
定住化におけるもうひとつの課題は、仕事探しです。難民申請に長い時間と労力がかかる上、公的な生活支援や日本語教育の機会は限られていることから、いざ在留資格を得ても、難民が就職先を見つけることは非常に困難です。一方で、母国から逃れざるを得なかった状況や、身よりもいない日本での大変な生活を乗り越え、自ら道を切り開いてきた難民の中には、あきらめず困難を何とか打開しようとするアイデアと意欲を持つ人もいます。

JARでは、就労ワークショップなどを開催するほか、難民のためのマイクロファイナンス・起業サポート事業を立ち上げました。

難民のためのマイクロファイナンス・起業サポート事業を立ち上げ

(事例紹介)ネイルを通じた難民への自立支援

■海外の実践を学ぶ
JARでは、海外の成功事例を参考に、難民保護がより前進するよう情報発信や政策提言に努めてきました。

ジュネーブ:Annual Tripartite Consultations on Resettlement (ATCR) 参加報告

イギリス:第三国定住視察報告(PDF)

オーストラリア:難民支援団体視察報告(PDF)

ニュージーランド:第三国定住難民への支援調査報告(PDF)
※(財)アジア福祉教育財団 難民事業本部実施調査に同行

(2010年9月21日掲載)

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