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難民が日本で働くための「就労マニュアル」が完成

今村 梨沙
難民支援協会(JAR)就労支援担当インターン

母国での迫害を逃れ、日本で生きるために仕事をする。

これはつまり母語の通じない、母国と全く違う環境で仕事をするということです。言葉の壁に加えて、5分前行動など、日本の企業では当たり前の労働文化も、難民にとっては、なぜしなくてはいけないのか、多くが驚きと困惑の連続です。日本で働くとはどういうことかを知る場や機会を持たない難民は多く、なんとか就職できても、思い描いていた仕事と実際に期待される仕事のギャップに悩みます。
そのギャップは社内でのコミュニケ-ション、昇給のスピード、正社員への可能性など様々です。難民側も企業側も手探りでなんとかそのギャップを埋めようとしますが、言葉の問題、これまでの働き方への双方の理解不足、事前の準備不足などがあり、なかなか解決には至りません。お互いに歩み寄る方法を見出せず、多くの場合難民が退職していまい、彼らは再び困窮した経済状況に陥ります。難民自身が自立した生活を送るためには、最終的にこのような課題を乗り越えて、日本で安定した職に就く必要があります。そのためには、難民と雇用主の擦れ違いや不安をできる限り事前に解消し、双方にとって働きやすい環境を作ることがいま求められています。

就労マニュアルで「日本で働く」を具体的にイメージ

それでは、どうすれば難民と雇用主・日本の職員、双方にとって安心、安全な就労・雇用環境を作ることができるのか。この問いに対する一つの取り組みとして、難民支援協会(JAR)の就労支援チームは、難民が日本の職場文化や実際の仕事内容を事前に理解して、備えることが必要だと考えました。その際にキーアイテムとなるのが就労マニュアルです。就労マニュアルを事前に読むことで、難民側は、抱いている理想と現実とのギャップを知り、それを解消することができます。雇用主側には、就労マニュアル作成の過程に関わっていただき、難民の置かれた状況を知ることで、雇用に向けたの準備ができるようになります。

本マニュアルは、ホテルのハウスキーピング、惣菜工場、クリーニング工場における就労をテーマとし、難民女性の就労を促進することを意識しています。ライン工や土木業など、主に男性が従事する職業には難民に対して少しずつ門戸が開かれてきていますが、女性の就職率は男性よりも低い水準にとどまっています。今回選んだ職種は、比較的、体力を必要としない、女性が働きやすい職場です。マニュアル作成においては、各職種の企業の方々にご協力いただき、プロの指導のもと、現場見学・就労体験を通じて、マニュアルを執筆しました。

なぜ、そのルールがあるのかを理解し、納得する

就労マニュアルの主な内容は、日本の各職場で「どのような流れで、どのようなことに気をつけて働けばいいのか」です。例えば、全体に共通して説明していることは、タイムカードの打刻や職場での挨拶などです。個々の現場においては、それぞれの仕事の流れに加えて、例えばホテルのハウスキーピングにおけるシーツの敷き方や、惣菜工場での手洗い方法、クリーニング工場の機械の使い方など、詳しい説明もしています。

説明の際、力点を置いたのは「なぜ」の部分です。なぜシーツにシワを寄せてはいけないのか、なぜ惣菜工場で作業前に入念に手を洗わなくてはいけないのか。新しいことを学ぶ際、理由を知り、納得すると記憶に残しやすいからです。
難民にとって、安定的に働き続けるためには、日本で当たり前になっているルールや常識の理由を知り、納得してもらうことは重要であると私たちは考えます。

難民が就労前にマニュアルを読むことで、事前に日本の職場の状況を理解し、働き方を現実的にイメージできることができます。また就労後も、たとえ上司や同僚とコミュニケーションがうまく取れなくてもマニュアルから得た知識で問題を解決し、働き続けることができるでしょう。このように就労マニュアルは難民が雇用主や他の職員と良い関係を築き、自立した生活を送るための一助になるはずです。

劇場で公開中!おすすめ映画『グッドライ~いちばん優しい嘘~』

最後に、難民の就労に関心を持ってくださった皆さまにぜひ、ご覧いただきたい映画があります。スーダンからアメリカへの移住がかなった難民たちが、アメリカで就職すべく奮闘するハリウッド映画『グッドライ~いちばん優しい嘘~』です。4月17日に全国各地で公開。就活を担当するアメリカ人のキャリーは、電話もマクドナルドも知らない彼らに苛立ちながらも、徐々に友情が芽生え、生き方さえも変わっていくというもの。難民への関心を問わず、「優しい嘘」に心動かされることと思います。ぜひ、ご友人を誘って観に行ってみてください!

※本事業は、国際ロータリー第2780地区(神奈川県) 2014-15地区補助金事業です。
かながわ湘南ロータリークラブの方々にご協力いただき、実施いたしました。

執筆者

※ 記事掲載時のプロフィールです

(2015年4月21日掲載)

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