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[報告]世界難民の日シンポジウム 難民の子どもたちと考える 国籍とアイデンティティ 

*当日のプログラムはこちら

wrd_2012_discussion.jpg今回のシンポジウムは6月20日の世界難民の日を記念して、「難民の日シンポジウム 難民の子どもたちと考える 国籍とアイデンティティ」を開催し、160名以上の方が来場しました。今回は、日本で生まれ育った者、幼少のころ来日した者など、難民の子どもたちをパネリストにむかえ、日本社会で生きていくことについて、自身の経験を語りました。
開会挨拶では、UNHCR駐日代表 ヨハン・セルス氏が、2世の教育の課題について言及し、在留資格を保持し、教育を受ける権利を得ていたとしても、高等教育を受けることは難しいと指摘しました。また、将来の無国籍を減らすために、出生登録可能にすること、未成年の収監をなくすなど、近い将来に向けて解決しなければならない課題について話しました。


第一部では、難民の子どもで現在大学生のテュアン氏、ティンウィン氏をパネリストにむかえ、難民の二世であるがゆえの課題や今後について望むことなどを、当事者の視点から発言しました。

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「小学校の時に外国人という理由で、いじめられた」「旅行や留学したいと思っても、パスポートがないので手続きが難しい」など、当事者の経験からしか見えない現実を語りました。そんな二人が望むことは、「日本人と同等の権利が欲しい」「『難民』と、難しくとらえるのではなく、気軽に難民に興味を持ってほしい」ということ。

テュアン氏は、難民二世の年長者として次の代へのメッセージも残しました。
「葛藤はあるが、元気に明るく生きていけばきっといいようになる。くじけずに自分に誇りを持ってほしい」

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第二部は、難民支援協会のインターン学生と、上智大学ソフィアなんみんサービスの学生メンバーによるインタビュー映像企画でした。学生が実際に難民宅を訪問し、二世の子どもたちから話を聞き、映像にまとめました。

ある家庭では、親がとても教育熱心で、日本語、英語、に加えて、母語も子どもに学ばせていました。その背景には、日本の学校で勉強していても、母語を忘れないでほしいという親の想いがありました。

インタビューを通して、学生は「難民の子どもは、たしかに日本の子どもたちと変わらない部分もある。しかし、他方で難民の子どもだからこそ直面している課題もあり、難民の子どもの多様な側面というものが見えてきた」と、感想を述べました。

第三部では、現在、無国籍の問題に取り組む、無国籍セットワークの陳氏、在日ビルマ市民労働組合のマ デンデンウー氏、弁護士の小豆澤氏、難民支援協会(JAR)常任理事の石井が登壇しました。モデレーターは、第1部に登壇した難民二世のテュアン氏が務めました。

各パネリストがそれぞれの立場から、現在の日本社会で無国籍の人びとが直面している問題の提議に加え、これからの日本社会が取り組むべき課題について、述べました。

マデンデンウー氏は「様々な可能性を秘め、生まれながら国際感覚を身に着けているような子どもたちの将来を、国籍や身分証明書の問題だけでつぶすのではなく、理解を深めてほしい。自分たちが日本社会へ向けて何ができるのかを考え、子どもが夢を叶えるための素晴らしい未来作りにむけて力を発揮すべき時であると思う」と述べ、私たち大人が課題と向き合い、社会へ働きかけることが重要であると訴えました。

陳氏は「他人事としてではなく身近な問題として関わってほしい。制度をすぐに変えるのは難しいかもしれないが、意識を変えていくことは今日からでもできるのではないか。実態を理解したうえで、国がどんなに混乱していても個人を見てほしい。"私には私のアイデンティティがある"のだと心から訴える人たちを活かせるような社会や意識を作り上げていきたい」と今後の活動について語ると同時に、自身も無国籍であった経験を踏まえ、一人ひとりが意識を変えていくことの大切さについて話してくださいました。

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小豆澤氏は「子どもたちは自分の意志でなく日本に来ることが多い中、そのような運命を受け入れ頑張っている。それを日本社会が認めないことで一生を棒に振るかもしれない。そのため、制度や法律の上ではもちろん、社会でも受け入れられるようになれば良いと思う」と、日本における制度の課題を指摘した上で、社会全体で受け入れを考えていかなくてはならないと意見を述べました。

親子の日本語教育という問題について、JAR石井は「子どもは日本で生まれ育ち、親子の断絶も起こり得る中で、親の言葉や文化を子世代へ継続的に教えていくことは重要だ。」とコメントしました。同時に、「現在の制度では、時には、難民2世の子どもたちが、適当な教育を受けられない場合がある。それは、子どもに責任は全くない。このような日本社会における課題をどう解決していったらよいのか。社会全体で考えなければならない」と、将来を担う子どもたちが、制度の壁に阻まれることなく活躍できる社会の実現について、指摘をしました。


テュアン氏は、「今回は、難民と無国籍の問題を共有することができ、とても意義があった。私たちは、今後も山積みとなっている課題に向き合い続けなければいけない。しかし、私たちだけでなく、今、この場にいらっしゃる皆さま、またマスメディアを通して、よりたくさんの人々に問題を知っていただくことが、今後より大切になっていくのでは」というメッセージとともに、シンポジウムを締めくくりました。

(2012年6月25日掲載)

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