活動レポート

国連マンデート難民:クルド難民(トルコ出身)の本国への強制送還に対する難民支援協会声明

(Updated: 2022.5.24)

2005年1月18日

本日1月18日、法務省入国管理局が、日本に保護を求めており、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から難民であると認められていたトルコ国籍のクルド難民の親子2名を本国に強制的に送還した件に関し、特定非営利活動法人難民支援協会は強い懸念を有しており、以下の声明を発表します。

関連:UNHCR「UNHCR、前例のない難民の強制送還に懸念」原文
関連:アムネスティ日本「クルド人父子の送還に抗議する」

国連難民高等弁務官(UNHCR)が難民と認めたケースの本国送還への遺憾

保護を求めて日本へ来日、国連が難民性の高いと認めたトルコ出身のクルド難民親子2名を、法務省入国管理局は本日(1月18日)、本国のトルコに強制的に送還した。このクルド難民家族の内、父親と長男の2名は昨日、仮放免の更新で入国管理局に出頭したところ身柄を拘束されており、異例のスピードで本日送還されたものである。他の家族(母親、3人の娘、次男)5名は日本に残された状態となっている。
法務省入国管理局警備課は、国連難民高等弁務官(UNHCR)が難民であると認めたマンデイト難民であっても日本での難民認定手続き、また司法手続きで難民と認められなかったので執行はありうると主張した。しかし、退去強制令書発付処分取消訴訟は上告中であり、未だ判断が確定していない状態であった。そして、これまでマンデイト難民を本人が帰国拒否をする中で、本国までの送還を執行した例はほぼ皆無であり、難民保護の観点から決してなされるべき行為ではない。

日本政府の難民条約違反の可能性

国連(UNHCR)がマンデイト難民と認定している難民を強制的に送還したということは、国際慣習法であるノン・ルフールマン原則に違反する可能性がある。日本が加入している難民の地位に関する条約(以下、難民条約)の精神に反する行為であり、同条約第33条ではいかなる方法によっても迫害の危険のある地域への追放及び送還を禁止している。また法務省は今回のマンデイト難民親子の件に関して、UNHCRへ送還日時について伝えていないとも主張した。これは難民条約第35条、締約国(日本)の機関と国連との協力義務に違反する行為でもある。

今回の強制送還による難民申請者への深刻な動揺

国連(UNHCR)がマンデイト難民と認定している難民を本人の意思に反して強制的に本国に送還した行為は、日本にいるその他の多くのマンデイト難民および難民申請者に、次は自分かもしれないという恐怖を拡げ、トルコ出身の申請者だけでなく日本に保護を求めてきた他国の申請者に対しても、入国管理局への不信や不安を拡げている。
よって、難民支援協会は日本政府に対し以下の事項を求めます。

  • 送還されたクルド難民親子の安全の確保と残された家族の強制送還を停止し、保護を与えること。
  • マンデイト難民の本国への強制送還は二度と繰り返されるべきではなく、適切な保護措置を確保すること。

※ リンク切れにより、UNHCR文書の原文へのリンクを追加(2022年5月)