解説記事・声明等

2012年3月5日-衆議院予算委員会にて第三国定住と難民認定手続きに関する質問および答弁

    3月5日の衆議院予算委員会にて、公明党の遠山清彦議員が難民の第三国定住受け入れ、みんなの党山内康一議員が難民認定手続きに関する質問を行いました。
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    第三国定住関連(10時28分〜)
    Q.遠山議員
    公明党としても、自分は難民政策プロジェクトチームの座長をしており、第三国定住パイロット事業の開始自体を高く評価している。2月23日には、第二陣の支援センターを視察や、家族との意見交換をしてきた。
    2011年9月、第一陣5家族のうち1家族が残念な内容の記者会見を行った。その後、夫婦の弁護団が外務大臣宛に出した申入書を読んで、問題があると思っている。外務省としてどのような改善対応をしているのか?
    A.大臣官房 
    ご指摘のご家族は、RHQの定住支援プログラムを受け、千葉の八街で農業法人で職業適応訓練をした。9月以降、民間団体の支援を受けて転居して、今職を得ている。弁護士を通じ、今後も政府の支援の用意があると伝えた。今後の支援の在り方を検討している。
    第一陣の経験や弁護士等からの指摘を踏まえ、大臣の指示もあり、NGOとの意見交換会を実施したり、関係省庁との連携で、日本語カリキュラム、職業支援の充実を図ってきている。
    Q.遠山議員
    最大の問題は日本語のコミュニケーション能力の問題ではないかと思う。半年間だけの語学研修で社会の職場で働くのは難しい。半年の定住支援終了後も公的な形での日本語教育の支援が必要。子どもは大丈夫であろうが親が問題。親が仕事をしないと家族を支えられない。
    A.文化庁部長
    定住支援後の必要性も認識。2012年1月から地域の日本語教室と連携して日本語教育を実施し、指導者の研修を開始した。半年のプログラム終了後に、難民からの日本語学習に関する相談に乗れる体制を作った。成果を検証しながら、取組みの充実を図りたい。
    Q.遠山議員
    改善の努力が今年1月からではちょっと遅いのでは。事業開始時に民間団体からの指摘があった。
    この事業はRHQが外務省から委託を受けているが、良く言えば「責任感が強い」が悪く言うと「頑迷」で、他の人に関わらせない、囲い込みをしている。ここが問題の背景の一つなのでは。外務省はもっと柔軟にやってほしい。
    ニュージーランドのRMS(Refugee and Migrant Service)というボランティア団体は、政府と連携して、研修を受け、一度社会に出た難民を、半年間、毎週家庭訪問を行い、地域で定住するための多様なサポートを行っている。ボランティアは通信大学の単位を受けられる。社会の中で、難民への広範な支援がある。RHQが抱え込むのではなく、できる団体に関わらせていくことが大事。
    政府とNGOの意見交換会における「なんみんフォーラム(FRJ)」からの提案の中で「これからの体制は官民連携での政策立案」というのは重要。大切だと思うので、検討してほしい。
    A.玄場外務大臣
    現状はよろしいものではないと思うので、改善していかなくてはならない。今の指摘を踏まえて、よく検討していきたい。
    Q.遠山議員
    UNHCR法務官と意見交換をしてみたところ、メーラキャンプだけで募集を行うから人が集まらないのではという話。さらに継続してやっていくためには、募集の対象キャンプを広げてみては?3年で終わらせるのではなく継続をしてほしい。
    難民認定手続き関連(15時57分〜)
    Q.山内議員
    2011年の難民動向によれば、難民申請者数が史上最高を更新し、一方で難民の認定者数は21名、人道的配慮による滞在許可も300人以下とここ数年では数字が下がっている。二重基準ともいえるミャンマー出身者への偏りが存在する。昨年11月の超党派による国会決議で難民保護を充実させるとしたにもかかわらず難民認定数は増えていない。この現状についてどのように理解しているか?
    A.小川法務大臣
    国際社会の一員として難民問題に取り組まなければならない。人道的な対応で難民を受け入れることは非常に重要。難民問題を人道的視点にたってしっかりと取り組んでいかなければならないという感覚でいる。
    Q.山内議員
    難民申請では一定数の濫用者は発生する。しかし、濫用者を防ぐ為に難民認定・人道配慮の基準を示すべき。濫用の基準を示せば濫用者の減少につながる。これまでに有識者やNGOからからも難民認定お基準をオープンにすべきと指摘されてきた。それに対する政府の見解は?
    A.高屋入国管理局長
    難民認定の基準は、難民条約で規定されている難民の定義に拠る。具体的にいうと、政治的意見などを理由に迫害をうける十分に理由のある恐怖が存在すること。この基準とは別に、実際に迫害の存在について判断する場合には、難民の出身国の事情、個別事案の正確な認定が必要となる。当局は、UNHCR等と連携し、出身国情報や国際情勢の資料収集、難民調査官の調査技術・専門知識の向上のための研修の充実をはかっている。
    Q.山内議員
    その基準は条約だけだとざっくり書いてある。国別の事情を含めて認定基準をより明確にしていくことが必要だと思う。
    民主党政権になってから難民問題いついては前に進んでいる部分が多い。特に千葉前大臣は理解を示していた。注目されていない分野であるが、さらに改善していって欲しい。
    難民申請者の就労許可について。難民申請者が難民保護費(*)を詐取しているとの事件が報道された。それ自体は問題であるが、その背景には、難民申請をしている間は就労が許可されていない。その間、外務省の保護費をもらえないこともある。あるいは保護費の水準があまりにも低いので働かないと食べていけないという事情もある。難民申請中の就労を許可すべきではないかとここ何年も言ってきているが、あらためて政府の見解を聞きたい。
    A.高屋入国管理局長
    難民認定申請中の者全てが働けないということはない。6割以上は、在留資格を有している間に難民申請をしており、それが短期滞在などの就労できない資格であっても、一定期間を経過すれば原則として就労できる。
    不法滞在者の申請の場合、その後就労を認めるということはしていない。不法就労目的による難民認定制度の悪用が発生するおそれが大きいため認めていない。
    対応としては、難民認定・人道配慮すべき者に、適切に庇護しかつ制度の悪用を防止するために、早期に結論を出すことが必要であると考えている。実際、平成22年7月に審査期間の目標を6ヶ月と設定し、目標を達成しており、最近では平均処理期間は6ヶ月未満を維持している。
    Q.山内議員
    実際に政治的迫害を受けてい者は正式な書類をそろえられないこともあるので、杓子定規に考えず、人道的な配慮を考えてほしい。
    難民審査期間が6ヶ月になったこは高く評価できる。かつては2年以上かかっていた。
    しかし、そのことにより、異議申立が増加し、異議申立の期間が長期化している。
    難民参与員制度が導入されているが、参与員の数、知識によって運用の滞りがある。参与員制度を今後はどのようにするのか。現状維持か変えていくのか?
    A.高屋入国管理局長
    難民申請数の増加、一次手続きの処理促進により異議申立件数が非常に増加し、処理に時間を要していることは認識している。
    難民審査参与員は、入管法で「人格が高潔で公正な判断能力がある、法律や国際情勢に関する学識経験を有する者」と定められている。実際、事実認定を正確におこなえるという意味で法曹実務家、地域情勢・国際情勢などにあかるい外交や国連経験者、国際法学者を任命している。難民調査員は、的確な判断をするための素養を備えている。
    審査の効率化・迅速化をはかるために、出身国情報の把握・収集に努め、難民参与員に提供している。くわえて、難民参与員は専門性を有しているので意見交換ができる場所を提供し、また、有識者に対する国際情勢などに関する講演等を実施している。
    Q.山内議員
    難民参与員はそれぞれが専門性を有しているであろうが、自分の専門外のことも身に着けないと適切な判断ができない。難民参与員への情報提供と研修は非常に重要である。それらについて具体的にどのようにしているのか?
    A.高屋入管局長
    定期的に参与員同士の意見交換、有識者による講演を実施している。また、国際情勢について適宜文書として提供している。
    Q.山内議員
    難民の問題、少しずつ前に進んでいると思う。さらに改善の努力を。